many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

階段のある空

2009-12-03 21:39:36 | 好きな本
日野啓三 1987年 文藝春秋
好きな本っていうより、好きな作家なんだが。
そうですか、1987年ですか。
小説を、いまよりずっと、マジメに読んでたころ、日野啓三は一時期フェイバリットでした。だいぶ前のことになりました。
ちょっと探したけど、この一冊しか、すぐには見当たらなかった。どこへやっちゃったんだろう、まさか売っちゃったとしたら、私もヤキがまわってる。
よくいわれる、「無機物的なもの・鉱物的なものへの親近感」の描写が好きです。
もっというと、なんだか「ふつうの人には見えないものを見ちゃう・聞いちゃう話」という気がしないでもないです。
それは、湖の底だったり、空にある階段だったり、ビルのなかに隙間なく詰まっている水や20階近くにある水面だったり、ビルのコンクリートが粉々に戻った砂だったり、風の音や動きとそれからわかる地球の自転だったり、生き物のようにふくれ揺れ動く都市の建物だったり、いろいろ。
そんなものを見たり感じたりしちゃう人たちが主人公です。
変化するものとしないものの境界なんてないんだ、って感覚がいいですねー。
それと、ほかの本にもよく出てきた表現だと思うんだけど、“花っていうのは生殖器官むき出しに逆立ちしてるようなもので、何てあられもなく、不気味だ”みたいなとらえ方があるんですが、初めて読んだときとかハッとさせられたもんです。
あと、著者は1929年生まれなんだけど、意外といろんな音楽を聴いていて、作中にも若い子に「U2はどんどんよくなっている」とか言わせたり、“砂粒がきらめきながらこぼれ落ちて、ハービー・ハンコックの魔法のピアノの音のように鳴りました”なんて比喩が出てくるのも、当時読んでて違和感なかった原因のひとつです。
収録作は、
「火口湖」
「階段のある空」
「消えてゆく風景」
「ふしぎな影」
「鏡面界」
「風を讃えよ」
「七千万年の夜警」
「腐食する街」
鏡面界はブライアン・イーノのアルバムタイトル「Plateau of Mirror」からだそうで。あとがきで、とても好きな妙な言葉だと評している。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 退屈が大好き | トップ | 現実入門 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

好きな本」カテゴリの最新記事