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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

プラネタリウムのふたご

2024-07-12 18:46:05 | 読んだ本
いしいしんじ 2006年 講談社文庫版
これはことし5月の古本まつりでたまたま見つけて買ってみた文庫。
前に読んだ『ぶらんこ乗り』がなんつってもおもしろかったんで、どんな話なのか予備知識はなんもないが期待してもいいだろと思って、読んでみたくなったもんで。
物語はタイトルのとおり、ふたごについて、山間の村にあるプラネタリウムの客席で泣いてるとこを見つけられた、捨てられてた赤ん坊。
テンペルタットル彗星の解説中に拾われたんで、ひとりはテンペル、ひとりはタットルと呼ばれるようになった男の子のふたご、ふたりとも髪の毛が光の当たりかたによっては銀色に見える。
拾ったプラネタリウムの解説員は「泣き男」と呼ばれてる、村には赤ん坊を引き取ってくれる施設もないし、しかたなくふたごを育ててくことになる。
外国資本のおもに紙製品をつくる化学工場くらいしか産業がないその村に、なんでプラネタリウムがあるのかわかんないけど、人々にとっては定番の娯楽になってる場所らしい。
どうでもいいけど、私はプラネタリウムって行ったことないんだが、この物語の解説員みたいな話が聞けるんだったら、一度行ってみてもいいかなって気はする。
ふたごは成長してくとちょいと独特なキャラになってきて、べつにそんなワルではないんだけど、学校の先生なんかにはきらわれたりする存在になっちゃう。
そして、ふたりが14歳の夏に、村に魔術師テオ一座って手品ショーが興行にきたのをきっかけに、運命がころがり始めちゃう。
村の北側の山にはクマがいる、猟師は昔からのしきたりを守って山へ入ってくとかって話がからんできたりすんだけど、そういうのがなんか魅力ある。
>だまされることは、だいたいにおいて間抜けだ。ただしかし、だまされる才覚がひとにないと、この世はかっさかさの、笑いもなにもない、どんづまりの世界になってしまう。(略)
>「ひょっとしたら、より多くだまされるほど、ひとってしあわせなんじゃないんだろうか」
>とタットルはおもった。(p.367)
とか、
>「ほんものを見る、ってのもな、むろん大切なことだよ」
>泣き男はつづけた。
>「でも、それ以上に大切なのは、それがほんものの星かどうかより、たったいま誰かが自分のとなりにいて、自分とおなじものを見て喜んでいると、こころからしんじられることだ。そんな相手が、この世にいてくれるってことだよ」(p.420)
とかってフレーズが、印象に残ります。


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