many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

闇の王国

2023-11-30 19:06:41 | 読んだ本

リチャード・マシスン/尾之上浩司訳 二〇一一年 ハヤカワ文庫
これは先月に定期的にやってる古書フェアに出かけてったときに買った古本の文庫。
マシスンに関しては、ほんとは古いものを探してるんだけど、これは新しいものらしい、まあそれでもとりあえず読んでみる。
数冊しか読んだことはないんだが、短篇のほうがおもしろいとは思うんだけど、これは長篇。
1900年生まれの作家が1982年の現在から自分が18歳のときの1918年あたりを回想して書いてるって体裁。
アメリカ海軍大佐の息子としてニューヨークに生まれ育ったが、ムチャクチャ厳しい父に反発する意味もあって17歳で陸軍に志願入隊すると、ヨーロッパ戦線へと出征していく。
そこでイギリス兵のハロルドという男と仲良くなるんだが、ハロルドは自分の故郷のイングランドにあるガトフォードって町はすばらしいから行けとすすめる。
いろいろあって戦争から離れた主人公は、翌1918年にガトフォードの場所を探しあてて、田舎家を借りてそこに住みはじめる。
周囲の森林地帯に散歩に行き、小道からはずれてしまうと、木々ががさがさ揺れて来たはずの道が見つからなくなってしまうような不思議現象に出くわす。
家へもどって地元の屋根の修理工に聞くと、それは妖精のしわざだという、この森には妖精がいるんだと、もちろんにわかには信じない。
で、地元の伝統としては妖精とされてる何かをめぐる恐怖のはなしかと勝手に期待してたら、ほんとに妖精がちっちゃいサイズの人間型として出てきて、18歳の主人公はこともあろうにホレてしまう。
なんだ恋愛がらみのファンタジーぢゃないかと、不条理系というか悪夢的なのに興味あってマシスンを探してた私はややがっかりしてしまった。
しかも実際にあった経験だとかいう語り口で、妖精と出会ったとか言われてもなあって気もしたが、よく考えたら「アイ・アム・レジェンド」なんかぢゃ吸血鬼がぞろぞろいるとかシャアシャアと書いてるんで、まあおとぎばなしが作者の本質かって気がしてきた。
うーん、やっぱ古い短篇を探して読みたい。

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サム・ホーソーンの事件簿IV

2023-11-23 18:38:28 | 読んだ本

エドワード・D・ホック/木村二郎訳 2006年 創元推理文庫
これは先月末くらいに買い求めた古本の文庫で、わりとすぐ読むことになった、一篇あたりが適度に短いし、さくさくっと読めるんで。
日本で独自に編纂してる短篇集の第4弾、シリーズの発表順の第37作から第48作を順に収録したもの、初出は1988年から1993年らしい。
物語は、1935年春から1937年夏といったところ、最後のほうになるとムソリーニがベルリンを訪問したなんてニュースに触れたりしてる。
語り手・主人公サム・ホーソーン医師はシリーズ始まったときは二十代半ばだったんだけど、本書では四十歳になろうとしている、読んでる感じでは若々しいけどね。
長年つとめてくれた看護婦が前巻のとある事件がきっかけで結婚して退職しちゃったんだけど、本巻ではまたある事件に巻き込まれたのがきっかけで新しい看護婦を雇い入れることができるようになったりします。
あいかわらずサム先生のまわりは、行けども行けども不可能殺人の山が待ち受けていて、使ってない施錠されてる手術室のなかで首絞められた死体がみつかったり、通電フェンスと番犬と施錠で要塞のようになってる農家のなかで男が頭を殴打されて死んでたり、二十人の前でプールに入っていった男が出てこないので見てみたら毒で死んでたり、よりによってサム先生が強心剤を処方してあげた患者がその後すぐに死んでしまったり、もう大変。
おや、と思ったのは、若いころからサム先生は鋭い観察力と直感で数々の謎を解決してきたんだけど、ここにきて何故かときどき間違った推論を立ててしまう、「きみはあの車をどこに隠したんだい」とか「きみならこの殺人をできただろうよ」とか「きみにあることを訊く必要がある、ひどい質問だが」とかって調子で、間違った相手に疑いを向けて関係者を怒らせてしまったりすることが多い、なんでだろう、トシとってカンが当たらなくなったとしたいのかな。
それでもなんでも短い話のなかで、鮮やかに誰が何故どうやってってタネあかしがされるのは毎度読んでて楽しい。
ときどき、それは偶然が味方しすぎるだろ、ご都合よすぎないかいって言いたくなるようなこともないわけぢゃないけど、
>レンズ保安官は鼻を鳴らした。「(略)誰もやつが死体を非常出口から運び出すところを見なかったし、手術室の錠前があいていることにたまたまやつが気づいたと、あんたは言ってるわけだ。運がよすぎるぞ!」
>「殺人犯はみんな運任せのところがあるんだよ、保安官。(略)(p.72)
なんてサム先生が堂々と言ってるところがあったりするんで、これは確信もってやってるにちがいなく、まあそういうのを愉しむのも童話的性格をもつものだってことぢゃないかと思う。
一読したなかで面白かったのは「革服の男の謎」かな、革製の服を着て歩いて旅をしている男に興味をもったサム先生はいっしょに一日同行するんだけど、次の日になって宿泊場所となった家の夫婦、途中で渡った列車踏切番の男、それより前に道ですれちがったとき手を振ってくれた車を運転してた知り合いの女性、そのひとたちすべてが「革服の男なんて見ていない、サム先生は一人だったよ」と証言する、困惑するサム先生だったが、そこには三者三様の理由があった、っつーのがなんともよかった。
収録作は以下のとおり。なお、最後の「フロンティア・ストリート」はこのシリーズには含まれない西部の町の話。
黒いロードスターの謎 The Problem of the Black Roadster
二つの母斑の謎 The Problem of theTwo Birthmarks
重体患者の謎 The Problem of the Dying Patient
要塞と化した農家の謎 The Problem of the Protected Farmhouse
呪われたティピーの謎 The Problem of the Haunted Tepee
青い自転車の謎 The Problem of the Blue Bicycle
田舎教会の謎 The Problem of the Country Church
グレンジ・ホールの謎 The Problem of the Grange Hall
消えたセールスマンの謎 The Problem of the Vanishing Salesman
革服の男の謎 The Problem of the Leather Man
幻の談話室の謎 The Problem of the Phantom Parlor
毒入りプールの謎 The Problem of the Poisoned Pool

フロンティア・ストリート Frontier Street

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ミステリーゾーン

2023-11-16 19:51:32 | 読んだ本

ロッド・サーリング/矢野浩三郎他訳 1983年 文春文庫
これは先月下旬に買い求めた古本、めずらしくわりとすぐに読んだ。
この文庫のシリーズは「3」だけ前に読んだことあって、ほかのも読んでみたかったが、なかなか見つからなかったんで、今回手に入れられたのはラッキー。
ミステリーゾーンってのはテレビドラマシリーズのタイトルで、原題はトワイライトゾーンなんだが、そのドラマは150話余りかな、全部みた。
第1回放映が1959年らしいけど、おもしろいと思うよ、今見てもべつに古いとは思わない、基本SFってことになるんだろうが、当時は2020年ころには異星人と交流してるとかタイムマシン完成してるとか考えたかもしれないけど、まあ人間社会はそれほど大きく変わってないんぢゃないかと。
収録作は以下のとおり。(後ろにつけたカギカッコは参考までにテレビドラマ版タイトル)
だれもいなくなった町 Where Is Everybody? 「そこには誰もいなかった」
二十代アメリカ人の男が自分が誰だかもわからなくて、知らない町にひとりでいる。営業中の食堂もあるんだが誰もいない、町のどこに行っても人は誰もいない。
歩いて行ける距離 Walking Distance 「過去を求めて」
36歳のマーティン・スローンは新進気鋭の実業家ではあったがビジネスの日々に嫌気がさしていた。ニューヨークを離れ車で故郷の町へ向かうと、そこには二十年くらい前の自分が子どもだったときの世界があった。
怪力ディングル Mr. Dingle, the Strong 「強いぞディングル君」
ディングル君は何をやらせてもだめな電気掃除機のセールスマンなんだが、地球を観察に来ていた火星人が彼を実験材料に選び、平均人の三百倍の筋力を与えたことから、大騒動になる。
時のかなたに Back There 「過ぎし日」 
コリガンは有望な若い宇宙物理学者として、あるクラブの会員資格を与えられたが、その初参加の日にひょんなことからタイムスリップしてしまう。彼が行った先は1865年4月14日のワシントン、リンカーン大統領が暗殺される金曜日の夜だったので、彼は暗殺を阻止しようとするのだが。
熱狂 The Fever 「熱病」
フランクリン・ギブスは地方銀行の出納係で日常生活のパターンが乱れるのをものすごく嫌う人物だった。夫人が応募した懸賞の賞品である三泊四日のラスヴェガス旅行に渋々出かけてったが、ギャンブルなどとんでもないと思っていた彼が一度スロットマシーンを回してみたら妙な昂揚感に包まれてしまった。
メープル通りの怪 The Monsters Are Due on Maple Street 「疑惑」
メープル通りの土曜日の午後四時四十分、はるか上空で閃光がひらめくのを住人たちは目撃する、その直後から電気が切れ電話もつながらず自動車のエンジンもかからなくなる。12歳の少年が「この上空にやってきた人たちが誰も町から出さないようにしてる、あらかじめ何人かが住人にまぎれて送り込まれてる」とかSFの見過ぎのようなことを言うと、最初は子どもの言うことと思ってた住人たちも互いに誰が敵なのか疑い始める。
大いなる願い The Big, Tall Wish 「奇蹟」
ボリー・ジャクスンは黒人プロボクサー、33歳で返り咲きのための最後のチャンスの試合に臨もうとしている。彼を応援する9歳の少年ヘンリー・テンプルは、今夜ボリーがやられませんようにと願い事をすると言ってボリーを励ますが、幼い子どもの必死の祈りがある奇蹟を起こす。
機械に脅迫された男 A Thing about Machines 「機械嫌い」
フィンチリー氏は42歳で食通雑誌などに気どった文章を書いたりする仕事をしていたが、家の中のテレビや時計をぶっ壊すことが多い。家のなかのテレビやラジオや時計が陰謀をはたらき勝手に動き出すのだと彼が言うと、秘書は相手にせず出て行ってしまうが、そのあと電動タイプライターがひとりで動き出し「ここから出ていけ、フィンチリー」という文句を打ち出す。
ウィラビーに停車 A Stop at Willoughby 「敗北者」
広告代理店の仕事にくたびれきっていたガート・ウィリアムズはある冬の日にいつもどおり家に帰る鉄道に乗った、しばらく眠ったあと目が覚めると「ウィラビー」という知らない駅だったが、そこは1880年の夏で小さな平和で落ち着いた村のようだった。夢から覚めたと思ったウィリアムズが車掌にきいてみるとウィラビーなんて名前の町はないという。

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くじ

2023-11-09 18:31:42 | 読んだ本

シャーリイ・ジャクスン/深町眞理子訳 二〇一六年 ハヤカワ・ミステリ文庫版
これは今年9月ころに買い求めた古本、『厭な物語』を読もうとしてたころかな、『厭な小説』の巻末解説にもリストアップされてたんで、厭なもの見たさに読んでみようと思った。
原題「The Lottery or, The Adventures of James Harris」は1949年の刊行らしい、日本で初めて出版されたのは1964年に「異色作家短篇集」シリーズとしてだそうで。
短篇集です、表題作「くじ」は『厭な物語』にも収録されてたんで、被ってしまったが、それはまあいいや。
「くじ」ってのは、毎年六月に村人たち全員三百人くらいが集まって、年に一度の恒例のくじ引きをする話だ。
最初に一族の代表が引いて、当たり引いちゃった一族に家族がいくつかあればそれぞれの家族の代表がまた引いて、最後は家族ひとりひとりがくじ引いてく仕組らしい、最終的な当たりは個人になる、それは大人も子どももハンデなし。
集まったひとのなかでは、よその村ぢゃもうこんなくじ引きはやめようって話になってるらしい、なんてウワサ話もあがるんだけど、年寄りが否定する、くじ引きやらないなんてありえない、代々やってきたんだ、とか強く主張する。
で、最後に当たるとどうなるのかは説明なしに進むんだけど、物語のはじめに子どもたちが石を拾ってはポケットに集めてたりして、だいたい予想はついて厭な予感どおりになる。
ほかの短編も、必ずしも厭だ厭だとまではいわなくても、まあ後味がよくないというか、おちつかない気分にさせられる類のものが多い。
他人の家んなかでここが自分ちのように振舞っちゃう「おふくろの味」とか、階下の住人が自分の部屋に留守中に勝手に入って小物を盗っていってしまうことに気づいてやりかえそうとする「決闘裁判」とか、気持ちいい話ではない、おもしろいけど。
田舎暮らしで犬を飼っている夫人のとこに、おたくの犬がウチの鶏を殺すんですよと苦情電話がかかってくる、近所の誰もがその話を耳にしてるらしく、鶏を殺すことおぼえた犬は処分しなきゃダメだとか追い詰めるようにしてくる「背教者」も、後味よくないなあ、おもしろいけど。
一読したなかでいちばん気に入ったというか、この場合イヤだイヤだとおもしろがったというかなのは、「チャールズ」かな。
息子のローリーが幼稚園に通うようになったんだけど、彼は帰ってくると母親にその日の様子をおもしろそうに報告する。
チャールズって子がいて、先生のいうことをきかないとか、他の子に乱暴をはたらいたとか、大声で騒いだとかで、毎日のように、先生にお尻を叩かれたり、教室の隅に立たされたり、居残りを命じられたり罰をくらってるんだという。
自分の息子のローリーは幼稚園を気に入ってるようだが、チャールズの素行による悪影響が及ばないか両親は心配になり、PTAの会合に出かける母親は一度チャールズの親と会って話をしてみたいと思うんだが。
収録作は以下のとおり。

 酔い痴れて
 魔性の恋人
 おふくろの味
 決闘裁判
 ヴィレッジの住人
II
 魔女
 背教者
 どうぞお先に、アルフォンズ殿
 チャールズ
 麻服の午後
 ドロシーと祖母と水兵たち
III
 対話
 伝統あるりっぱな事務所
 人形と腹話術師
 曖昧の七つの型
 アイルランドにきて踊れ
IV
 もちろん
 塩の柱
 大きな靴の男たち
 歯
 ジミーからの手紙
 くじ
V
 エピローグ

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恋はいつもアマンドピンク

2023-11-03 18:07:33 | マンガ

赤星たみこ 1987年 双葉社アクションコミックス
これは今年5月ころだったかワゴン販売的フェアで見つけた古本。
赤星たみこは私が「アクション」読み始めたころは、『恋の街東京』を連載してて、これはタイトルは知ってたんだけど、読んだことなかったんで、ついつい買ってみた。
まあタイトルから想像されるとおり、女性の恋愛事情マンガです、初出はジャストコミック(光文社)1985年2月~12月号だって、「アクション」ぢゃないんだ。
読んでみれば、やっぱ80年代ぽいなぁって感じはするんだけど、ぢゃあどういうのなら2020年代ぽいんだとかいわれても私には答えられないが。
本書に収録されてるのは3つのストーリー。
「PART 1 恋の街TOKYO」では、都内ホテルのパーティ会場でコンパニオンのバイトしてる女子大生が、男友だち二人を天秤にかけるというか手玉にとって、それでいて実は妻子ある中年とつきあってたりする。
>既婚中年(おじさん)とつきあう メリットつったら ハイテクと 経済力だけでしょ
とか、
>あたしたちって 若さと“女子大生”ってゆー 肩書が“売り”じゃない?
>商品価値の あるうちに 楽しんで おかなくちゃ
>ね?(p.67)
とかってセリフが彼女からは出てきます、いーですねえ、この割り切り方というか潔さというか。
「PART 2 をとめの祈り」では、古いタイプのハンサムのカタイ男子学生が、ややコンプレックスの強いマジメな女子大生に紹介される、お互いに紹介の縁とりもってくれた友人のほうに最初はひかれるんだが、なんだかんだで結ばれる。
「PART 3 哀愁のページ」は、25歳独身の高校教師やってる女性が主人公、彼氏はいるんだけどいまいち自分に本気なのかわからない、かつての教え子の予備校生を浮気相手にしちゃおうかと考えてると、現役女子高生がその男子にちょっかい出してくるんでイラっとしたりする。
>女の シアワセ願望が どれほど強いか 男なんてだれも わかってないのよ!
>わたしは わたしを愛して くれてる人と 愛し合いたいのよっ(p.215)
って独白するような恋愛観の持ち主なんだが、最初のストーリーに出てきた女子大生が実はかつての教え子で、その教え子からは
>性欲を認めるのが ハズカシイから それに 愛とゆーコロモをつけてみたり するのよねー 女って
>わたし そんなニセモノの愛を信じるくらいなら 純粋性欲を 信じちゃうわ(p.230)
なんて教えられちゃう、おもしろいっすね、こういうの。
「あたし 目に見えるものしか 信用しないの」って女子と、「どーして愛は目に見えないのかしら」って女子の考え方がぶつかってるさま描かれてるのがいいっす。

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