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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

ホリイのずんずん調査 かつて誰も調べなかった100の謎

2013-10-24 21:51:41 | 好きな本
堀井憲一郎 2013年8月 文藝春秋
出た!
書店で見かけて、驚いた、まさかホリイの調査の新しい本が出るなんて!
なぜ今?なぜでもいいんだけど、出てくれれば。さらに続編とか出りゃあ、出ただけ買いますよ。
私の好きなライター・ホリイ氏の、その好きになった原点みたいなもんだ。
めちゃめちゃ面白い。もうページ開く前から、「好きな本」入り決定に決まってる。
もう読んでて、至福、至福、ことし指折りのハッピーなときを過ごせた、文芸春秋グッジョブ!
(コラム連載集めたものとかって、4コママンガ集みたいに、まとめて読むとつらいときあるんだけど、これは絶対そんなことない。この倍あってもいい。)
疑問に思ったことを何でも調べちゃったり数えちゃったりするシリーズ。
週刊文春での連載足かけ17年、今回はそのなかから選ばれた100本。
当時の記事を掲載して、そのあとに現在からみた解説(当時の時代背景とかも)を加えている。
代表的なのは、新宿の伊勢丹と高島屋で、1階から各階に上がってくのに、エスカレーターとエレベーターのどちらが早いかとかね。
(伊勢丹では6階まではエスカレーターのほうが早い。ただし5階は4基すべてが停まるからエレベーターのほうが早い。)
くだらないというか、どうでもいいことのようなこともあるけど、すごい労力をかけて調べてる。
東京駅で大阪行きの最終ののぞみ=シンデレラエクスプレスの発車間際のホームをスタッフ8人で調査して、47組のカップルが別れを惜しんでいて、そのうちキスしていたのは11組とか、よくカウントしたものだ。(1995年10月29日の日曜日だって。)
どうでもいいけど、今回いちばんトリビア的にヘーと思ったのは、講談社文庫の背表紙の色は作家本人が選ぶものだという話。
(で、調べのついた519人の作家のうちで、いちばん多いのは107人の山吹色だと。)
で、どうでもいいようなことだけぢゃなくて、なかにはとても鋭く時代を分析しているというか、歴史のターニングポイントを証明しているものがある。
有名な、1983年のアンアンの「クリスマス特集 今年こそ彼の心をつかまえる」が「クリスマス・ファシズム」の始まりだ、ってのもそう。
(こういうのが、雑誌連載だけだと、形として残らないで忘れられてくから、近年は新書を出すようになったんだそうだ。)
寿司を「1カン」と数えだしたのは平成になってからだ、そんな数え方は江戸時代にも昭和にもなかったのに、1991年5月のハナコから広まっていき、2003年には寿司に関するすべての雑誌記事が「カン」になってしまったとか。
ひとの記憶はあとから自分で改変・捏造されてしまうということを知ってるのが著者の強みだね、昔からそうだったんぢゃないの、みたいなものを許さずに、客観的に証明していく姿勢を、私は高く評価してます。
「子」のつく名前の女子が半数を切ったのは1979年生まれから(母校の名簿で各年代を数えたらしい)とかね、ほんと私が総理大臣だったら本書を歴史の教科書にします。
歴史だけぢゃなくて、人間や社会に対しても鋭い考察はいくつもあります。
「4つの血液型の特徴をひとことで言ってみろ」って取材調査をしたところ、返ってきた答えを集計してるうちに、「ひとは世界を自分・仲間・敵・傍観者に分類している」という発見をしてしまったとかね。
吉野家で近年の客がつゆだくつゆだくって言うもんだから、デフォルトで適正なつゆ量の牛丼を出す店が激減している(都内154店を食べまわって調査したそうな)って調査では、結論として「ムリを言って聞いてもらっている」ということの自覚がない人が増えているんで、ここは何とかだくとか何とかぬきは有料化すべきだ、なんて言ってます。
(その意見よりも、私は、「つゆだくが愚かしい食べ物に見えるのは“犬の食べ方”に見えるから」という指摘のほうが、よくぞ言ってくれたとスカッとさせられた。)
あと、まあ、そういう面白いとか鋭い指摘だとかいう調査の内容以外にも、今回あらためて感心させられたのは、調査のしかただ。
人はどういう数字を暗証番号に設定しているのか、という調査では194人もの回答を得ているんだけど、どうやって集めたかというと、教えてくれって聞いてまわったんだという。対面で、ほかの人のいないとこで、熱意をもって相手を安心させて、聞き出すんだそうです。
そこんとこで、時代が下がってメールで訊くって手法もとるようになったけど、一斉に同じ文面で質問はしない、一人一人に個別に話しかけて、回答もらったら礼をする、血が通ってないと相手にしてもらえないからと、秘訣(著者にとっては常識なんだろうけど)を語ってます。プロだなあ。

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