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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

侏儒の言葉・西方の人

2015-01-29 20:38:21 | 読んだ本
芥川龍之介 昭和43年 新潮文庫版
持ってるのは昭和60年の32刷。そのころ読んだんだろう。
芥川は好きでねえ、その多くは「日本の文学」って全集シリーズのなかの一冊で読んだと思うんだけど。
これはそのなかに入ってなかったんで文庫を買ったんではないかと。
「侏儒の言葉」は小説ではなくて、芥川得意のアフォリズム集。
あの有名な(と思ってるのは私だけかもしれないが?)「恋愛は唯性慾の詩的表現を受けたものである。」なんかも入っている。
解説によれば大正12年1月から毎月「文芸春秋」に連載されてたそうな。
ところどころ、ページの下隅が折ってあるのは、いつか読んだときに私が気に入った文句があった箇所と思われる。
(当時は付箋とか知らなかった。)
いま見ても、それほどピンとこないのは、当時の感性といまの自分が変わってるからだろう。
いくつか抜くと。
「武器」
>正義は武器に似たものである。武器は金を出しさえすれば、敵にも味方にも買われるであろう。正義も理窟をつけさえすれば、敵にも味方にも買われるものである。
「暴力」
>(略)権力も畢竟はパテントを得た暴力である。我我人間を支配する為にも、暴力は常に必要なのかも知れない。或は又必要ではないのかも知れない。
「政治的天才」
>古来政治的天才とは民衆の意志を彼自身の意志とするもののように思われていた。が、これは正反対であろう。寧ろ政治的天才とは彼自身の意志を民衆の意志とするものことを云うのである。
「輿論」
>輿論の存在に価する理由は唯輿論を蹂躙する興味を与えることばかりである。
などなどというところをマークしてあるのは、初めて読んだときぢゃなくて、おそらくは政治学科に学んでいるころぢゃなかろうかと、今見て思う。
(まったく記憶ないけどね。)
今回読んで気にいったところをいくつか。
「経験」
>経験ばかりにたよるのは消化力を考えずに食物ばかりにたよるものである。同時に又経験を徒らにしない能力ばかりにたよるのもやはり食物を考えずに消化力ばかりにたよるものである。
「企図」
>成すことは必ずしも困難ではない。が、欲することは常に困難である。少くとも成すに足ることを欲するのは。
「自由」
>自由は山巓の空気に似ている。どちらも弱い者には堪えることは出来ない。
「文章」
>文章の中にある言葉は辞書の中にある時よりも美しさを加えていなければならぬ。

「西方の人」と「続西方の人」は、芥川による“クリスト”観というか評だけど、これについては、特に何もないなあ。
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やさしさをまとった殲滅の時代

2015-01-27 18:50:12 | 堀井憲一郎
堀井憲一郎 2013年 講談社現代新書
私の好きなライター、ホリイ氏の新刊。
といっても出版されたのがおととし10月らしい。
おそまきながら私が気づいて買ったのが、去年の10月ころ。
読んだの年が明けてから。なにやってんだか。
それはともかく、帯に「『若者殺しの時代』の待望の続編!」って書いてあるから、たいそう期待してしまった。あれは名著だもん。
で、本書のあとがきを最後に読んだら、メールマガジンに連載してたときのタイトルは「失われたモノたちの00年代」だったそうで。
つまり、この本は、近い過去を振り返って、当時はどういうことか気づいてなかったけど、あれはそういう時代だったのだと整理するという意味で、たしかに『若者殺しの時代』の続編なんだろう。
ということで、ターゲットは00年代、西暦2000年から2009年ころにかけて、何が行なわれてたのかという話。
“殲滅”とか“失われた”という言葉にあらわれてるように、当然のことながら、あまりめでたいことはない。
どっちかっていうと否定的な感じ。失ったもののほうが大きくないか、ってニュアンスがいっぱい。
結論としては、ごく簡単に言っちゃうと、知る人ぞ知るみたいな世界がなくなって、なんか楽しくなくなった、っていうことになるんぢゃないかと。
で、それのなにが“やさしさをまとった”かというと、一見便利になったようにみえるし、個人個人は決して強制されて何かやらされてる感はなくて意見も尊重されてるようにみえる、ってわけだからである。
そのへん、気にかかったポイントをいくつか引くと。
たとえば、なんで情報誌が(なんとかウォーカーとかそういうのが)なくなっちゃったか。
>先端的な人たちが動く→雑誌で取り上げる→ふつうの人たちが追いかける→再び取り上げる→大きなムーブメントになる。(略)
>これがなくなってしまった。元編集長はそう言った。
>つまり街での目立った動きがなくなったのだ。特に男性がなくなったという。
ということらしい。
みんなネットで情報は前より簡単に手にしてるようにみえるけど、街の動きは無い、失われた。
特に男性社会がひどいらしく、そのあたりを指して、
>僕たちの社会は、効率と引き換えに「若い男性の世間」を破壊していったのである。
なんてうまいことを言う。
そういう社会では「母の持つ包容力」が中心に据えられるというんだけど、べつのところでは、ライトノベルの市場拡大現象を指して、
>「少年のころに好きだったものを、いつまでも抱えていても怒られない」という事情によるものである。具体的なイメージで言えば「父が怒らない」ということになる。
と分析してるんで、両者は同じことを言ってるんだろう。
情報誌と街の動きの関係と同じことは、アニメ好きな若者たちについてもいえるらしく、自分の好きなものがあるってことは各々認められるけど、社会全体での大きな動きにはならない。
>大ヒットのアニメが出てきても、多くの人が騒ぐようになっても、それだけでは動かない。自分が見てないものは、どんなに受けていようと、見ていないのだから、自分とは関係ない。美しく孤立しているとは、そういうことである。(略)
っていう状態らしい。まあ、そうなんだろうな、若い人はみんな。
(私なんかも、ネットの片隅を見てるだけだけど、たしかに、ネットを通じた意見のやりとりは、5年前にくらべて明らかに減少してると感じる。みんなただ自分の好きなものを好きだとつぶやいているだけだ。)
そういうひとばっかりになってくると、どうなるかっていうと、「私の視点」が最重要ポイントになる。
その「私の視点」の位置について、著者はすごく驚いている。
具体的な例をあげると、社会的な悪ぢゃなくても、声高に「ブラック」とか命名しちゃう価値観とか。
>「自分や自分が関知するかぎりのまわりの社員の待遇がひどいから」という理由で、企業や会社そのものを「ブラック」であると認定する、(略)むかしの世代には、そんな権限は与えられてなかった。(略)自分が見知できる範囲で酷いと判断したら、そこを含む全体を否定してもかまわないという権限は、むかしは想像の範囲外だったのである。
ということで、自分の立場でしか発言しないし、またそういう発言を周囲が認めちゃう(以前はそういう発言は相手にされない)、最近の若者社会の昔との変化を指摘してる。
ま、それはしかたないとして、終章で、個人個人が分断されて、欲望を管理・誘導されてく方向にすすむ社会からの脱出のヒントが掲げられてて、それは自分がまわりのいろんな人に迷惑をかける存在であるってことを認めようってこと。
簡単な話、迷ってる人がいたら、道くらいは教えてあげる、それで金銭的な御礼なんか要らない。逆に自分が困ったときには聞けばいい。
>自分で教えたことのない人は、人に聞けない。そういう訓練ができていないからだ。自分で解決しようとして、スマートフォンを振り回し、ずいぶんと消耗してしまう。道は聞いたほうが早い。
って一節、私はけっこう同意しちゃう。っていうか妙に突き刺さってきたな、この本読んで、この部分がいちばん。



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馬は正しいのに、人がジャマしてばっかり

2015-01-26 18:46:45 | 馬が好き
乗馬にいく。
きのう酒の席で、なんか乗馬の話になって、骨盤を立ててどうこうとか言ってたなーという記憶はあるが、いざ実際に乗ってみて、できないものはできないんだよなと思う。
さて、きょう私にあたった馬は、ゼダイ。

おー、なぜー? 私の乗る馬ぢゃないでしょー。まちがいぢゃないかと思って、ほかの人の馬のわりふり見る。なんか間違ってる気もするが、勝手に入れ替えるわけにもいかないので、おとなしく乗ることにする。
ほかのひとより早く着いちゃったからのんびりしてたら、しっぽについた敷料のくず取ったりしてるうちに、追いつかれる。

そしたら、やおら気づいた、アカンて、この馬乗るんだったら、ほかのひとより先にウォーミングアップしとかないと、って。
そういうわけで、急いで馬装仕上げて、さっさと馬場に入って、常歩する。
ほかの人馬がくる前に、動いてくれるか確かめないと。脚つかう、反応してくれる、ホメる、を繰り返す。
んぢゃ、部班しようかってことになるんだが、また先頭に立たされている。この馬ぢゃダメだって、誰かもうちょっと軽い馬が前行ってよー。
「拍車つけてないんですか? その馬重いですよ」と先生に言われる。「がんばりまーす」と答える。
ぢゃあ始めますかっていうんだけど、だったら隊列の後方に移らさせてくれてもいいのに。

速歩スタート、おお、いい動きだ。動き自体が、とても躍動感ある感じ。
動いてるだろ、これ、今日、って思いながら進む。
なんか飛びが大きい感じがするんで、速くなってないかと思ってると、「もっと元気よく」と言われる。
よし、後ろのことは知ーらない、どんどん行けるときには行っちゃお、っと思ってバンバン脚つかって、前へ前へ。反応してくれたらホメる。
あんまりハミうけとか考えない、手を前にしてラクにして、前進を妨げないようにしようって意識でいく。
なんども「もっと元気よく」と言われて、休みなくどんどん動かす。
斜めに手前を替えたり、輪乗りをしたり、三湾曲の蛇乗りしたり。
なにかをする前に、脚つかって勢いよく動かしてから、次の図形に移る。斜めにいく前の隅角で、輪乗りに入る前に、正反撞に移る前に。
そうしないと、ペースが落ちてしまう。「輪乗りに入っても、さっきのペースのままで、元気よく」と何度も言われる。
正反撞になったからってスピードが落ちちゃいけない。意識して前に出すようにしての正反撞、動いていく馬についていく、人も動け、止まってはいけない、動け。

そしたら、輪乗りで駈歩。
わりと軽く発進するんだけど、そのあとがもたもたした感じ、なんちゃって駈歩?
もうちょっと勢いよく何歩かはとにかく前に出そうとするんだけど、かえってバラバラとして、速歩に落ちちゃうことも。
邪魔しないようにと思うあまり、手綱が長くなっちゃってるし、ちゃんと持ち直して、詰めてから、また発進。
繰り返すうちに、脚使おうとかしたときに、上体が前に倒れたりとか、とにかく馬の上で人間がバランスを崩すと、馬の動きが止まっちゃう。
前に出ろってやっといて、でもギュンと前に出たときに人が遅れたりすると、とたんにバタバタとか。
まったくもって、馬のジャマしてるだけ。ジーッと、ジーッとするんだ、馬を動かしたけりゃ。
ライアン・ムーアみたいに乗りたいなーと、昨年末くらいに観てた競馬のことを珍しく思い起こしたりして。
駈歩で蹄跡にでて、そのまま元気よく進ませる。あまりハミうけのこと考えない、とにかく前へ。後ろの列のことは気にしない、悪いけど。
歩度伸ばそうとすると、上にあがってくる感じが楽しい。ここんとこ、前に倒れてくようなサラブレッドの感じしか体験できてなかったので、ポーンポーンと弾んでくような駈歩は、とても楽しい。
それでも、やっぱり上でちょっとでもジタバタすると、リズムが狂うのか馬がハネるような動きするし、うかつに騎座や脚が動くと、勝手に手前替えられちゃったりする。スンマセン、いまの私が座りなおそうとしただけです、手前はそのままでお願いします。
(あとで、後ろのひとから、「なんか飛んでませんでしたか?後肢ハネたとき滞空時間長く浮いてましたよ」と言われた。)
そんなこんなで、一応、部班終了。いやー、勝手にペースをあげてワガママな先頭ぶりだったな、きっと。
やっぱ私のゼダイが先頭だから、きょうは意識して「もっと元気よく、もっと前に出して」って号令だったそうな。

上で人が動くと、馬が止まっちゃう(ホントに止まるわけではない、動いてるのがリズム狂うことを言ってる)ことについては、「敏感ですからね、その馬。敏感すぎるくらいです」と先生。
鋭い刃物をうまく扱えないやつに持たすとケガするだけだよ、やっぱ私には難しい、ゼダイ。馬にもよくないでしょと思う。
少し休憩のあと、速歩で輪乗りして、少し詰めたり伸ばしたりする。ハミうけもちょっといろいろやってみるが、これまた敏感な感じ、ちょっとでも力入れ過ぎたらおはなしにならないという印象。
なんか駈歩する気がなくなっちゃったので、そこで練習おしまいにする。
帰り道の途中で、チェーンソーで木の枝を切ってる場面に出くわしたんだけど、しばらく立ち止まって見つめて耳をすましてから、気にもせずにスタスタ歩いてった、ゼダイ。さすがだ、こういうとき心強い。

手入れ終わったら、リンゴやる。馬着きせたり、蹄油ぬったりって段階にくると、「もう終わりでしょ、なんか出しなさいよ、持ってるんでしょ」とばかりにマエガキする。
ご期待に沿わざるをえない。どーでもいーけど、ゼダイのおねだりっぷり食べっぷりはスゴイので、リンゴ片手に写真撮ってるヒマは与えてくれない。
コメント (7)
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夜と霧の隅で

2015-01-22 21:00:52 | 読んだ本
北杜夫 昭和38年 新潮文庫版
こないだ読んだ「秘密と友情」のなかで、穂村弘が北杜夫に影響をうけたみたいなこと言ってたんで、さっそく読み返してみることにした。
私の持ってるのは昭和56年の33刷。
ふーむ、そのころ読んだんだな、なんでそのころ、こういう小説に興味あったのか忘れちゃったけど。
この短編集には、芥川賞受賞作の「夜と霧の隅で」が入ってる。そのあたりを読んでみたかったのかもしれない。当時はいまより短編小説が好きだったような気もするし。
「岩尾根にて」
山登りをしていると、とても信じられないようなロッククライミングをする男を、離れたところから目撃する。
しばらくすると、その岩を登っていた男と出会い、言葉を交わすが、男は病気で朦朧とした状態が自分にそういう行動をとらせるのだという。
二人の会話はどっちがどっちでしゃべったかわからないという態で書かれてて、なんかドッペルゲンガー的なものを想像させられる。
「羽蟻のいる丘」
三歳の女の子と母親が、芝と土のあって蟻のいる丘にいる。
母親と一緒に座って話している男は、女の子の父親ではない。
とりとめのないような話を男と女はするんだけど、どうしたって幸せにはなれそうにない雰囲気が満ち満ちてる。
「霊媒のいる町」
友人といっしょに、見知らぬ町にやってきたのは、霊媒による心霊実験をみるのが目的だった。
といっても、熱心なのは友人のほうだけなので、「私」は何故かイライラするような機嫌が悪くなるような思いに終始襲われる。
どうでもいいけど途中で立ち止まって「歩き方を忘れてしまったよ。足をうごかすやり方をね」っていう科白があるんだけど、なんか妙。
「谿間にて」
終戦の翌年、信州松本の島々谷の渓流沿いの道を歩いていると、蟻の巣を探しているという男に会う。
男はかつて蝶の採集人だったといい、台湾で珍しい蝶を追ったときの話を始める。
熱病のおそれと戦いながら、憑かれたように山奥へ入っていき蝶をとらえようとする執念が、けっこう最初読んだときから印象に残ってた短編。
「夜と霧の隅で」
第二次世界大戦も終盤の南ドイツの州立精神病院が舞台、ナチスによる精神病患者の安死術がテーマ。
「長期療養または不治と見なされる患者たちが、隠密のうちに何処かへ連れ去られてゆくようになった」んだが、医師たちのなかには、絶望的な状況でも新たな治療の試みをする者もいた。
死んだ患者の脳細胞の標本にしか主たる興味がなかった医師が、生きた患者に過激な療法を始めるんだけど、そのへん途中から急におもしろくなって、ズンズン読んでしまった。
むかしむかし初めて読んだときより、いまのほうがおもしろく感じたかも、めずらしいことに。
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WOMACK WINNERS

2015-01-20 18:12:40 | CD・DVD・ビデオ
ボビー・ウーマック 1992年 ジムコジャパン
前回の『ラッフルズホテル』を読んでたら、登場人物の耳に「FLY ME TO THE MOON」が聞こえてくる場面があり、おー、たまにはボビー・ウーマックでも聴くかあと、このCDを出してきてみた。
私にとっては「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」ったら、ボビー・ウーマックのイメージだからね。(あとはエヴァンゲリオンか?)
ところが、このCDには「FLY ME TO THE MOON」は入ってないんだ、ま、いいけど。
これのサブタイトルは、「THE BEST OF BOBBY WOMACK」で、1968年から75年までのなかからのベストアルバムということみたい。
あるアーティストを、さかのぼって聴くのに、まずベスト盤に手をつけちゃうというのは、手抜きだよね、聴く者の態度としては。(たくさん入って安くて、お買い得なんだけどね。)
このなかでのお気に入りは、「Across 110th street」と「Check it out」かな。
1.What is this?
2.How I miss you baby
3.More than I can stand
4.Communication
5.That's the way I feel about cha
6.If you don't want my love,give it back
7.I can understand it
8.Woman's gotta have it
9.Harry hippie
10.Across 110th street
11.Nobody wants you when you're down and out
12.I'm through trying to prove my love to you
13.Lookin' for a love
14.I don't wanna be hurt by ya love again
15.You're welcome,stop on by
16.I don't know(what the world is coming to)
17.If you want my love,put something down on it
18.Check it out
19.It's all over now
20.Where's there's a will,there's a way
21.Daylight

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