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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

スネークマン・ショー

2022-11-24 18:33:13 | CD・DVD・ビデオ

スネークマン・ショー 1981年 アルファミュージック
特になにがどうしたということもないが、CD入れてるボックスを整理しなきゃななんて思って見てたら、これが目についたので出してみた。
「スネークマン・ショー」と「死ぬのは嫌だ、恐い、戦争反対! NO MORE FIGHT」の二枚組。
いまさら説明は不要だと思いますが、音楽だけぢゃないです、コントみたいなネタのショーと音楽がかわるがわるという感じの構成。
私はあまりこれの音楽には興味ないほうです、やっぱ笑えるもののほうが聴きたくて買ったはず。
好きなのは、なんだろうな、「STOP THE NEW-WAVE」はいつ聴いてもいいなあ、これは音楽をからめたネタなんだけどね。
バンドのメンバー募集して集まったメンツでスタジオ練習始めようとするんだが、リーダーなはずのボーカルを無視してみんな勝手に演奏に走り出して止まらない、でもこの曲のベースとドラムが私は好きなんだなあ。
「正義と真実」もおもしろくていい、政治家の選挙カーがチリ紙交換車と出くわすんだが、チリ紙交換のほうが優勢になる、「そのとーりでございます」ってセリフがクセになるものある。
二枚目の「死ぬのは嫌だ、恐い、戦争反対!」のほうのネタは、あんまりこれといって好きなのはないなあ。
DISK-ONE スネークマン・ショー
1.盗聴エディ P-1
2.磁性紀―開け心―/Y.M.O.
3.盗聴エディ P-2
4.レモンティー/シーナ&ザ・ロケット
5.はい、菊地です(~7人の刑事)
6.盗聴エディ P-3
7.オール・スルー・ザ・ナイト/ザ・ロカッツ
8.STOP THE NEW-WAVE/伊武雅刀とTHE SPOILとお友だち
9.ジミー・マック/サンディー
10.急いで口で吸え
11.黄金のクラップヘッズ/THE CRAP HEADS
12.シンナーに気をつけろ
13.メケ・メケ/Dr.ケスラー
14.正義と真実
15.コールド・ソング/クラウス・ノミ
16.咲坂と桃内のごきげんいかが ワン・ツゥ・スリー
17.これなんですか
18.ごきげんいかが アゲイン
DISK-TWO 死ぬのは嫌だ、恐い、戦争反対! NO MORE FIGHT
1.愛の出発
2.愛のチャンピオン号
3.THE ULTIMATE IN FUN/RIP RIG & PANIC
4.愛の野球場
5.I WILL CALL YOU(AND ANOTHER FAMOUS LAST WORDS)/MELONE
6.愛のホテル(曲:エーゲ海の真珠)
7.BUNGA DAHLIA/SU'UDIAH
8.どんぐりころころ
9.ペルシアン・ラヴ/ホルガー・シューカイ
10.WISHING YOU'RE HERE/THE SPOIL
11.愛の嵐(バラ肉のタンゴ)
12.今日、恋が
13.愛の匂い(ジムノペティ)
14.HONEY DEW/MELONE
15.愛の戦場(ブダペストの心)
16.GAM BANG





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サム・ホーソーンの事件簿I

2022-11-17 20:23:24 | 読んだ本

エドワード・D・ホック/木村二郎訳 2000年 創元推理文庫
先々月ごろに買った古本の文庫、電車乗って古本まつりに出かけてったら、これ買ったとこに出店してたのはウチから徒歩圏内の地元の古本屋だったのに気づいて、笑ってしまった。
怪盗ニックものをいくつか読んで、おもしろいとは思ったがやや飽きてきた気もするので、同じ作者の別シリーズを読んでみることにしたわけで。
どうでもいいけど、「事件簿I」みたいなタイトルは、シロウトにはわかりやすくていいねえ、第一短篇集だろうと察しがつく、「童心」「知恵」「不信」とかだと順番が見た目ではわからないし。
原題「DIAGNOSIS: IMPOSSIBLE, The Problems of Dr. Sam Hawthorne」は1996年の刊行だが、収められてるのはシリーズ最初の12篇で、その初出は1974年から1978年だというから、けっこう古い。
なお、この文庫には、その12篇のほかに、シリーズに含まれない「長い墜落」ってボーナストラックも入ってる、いいねえ、そういうオマケは喜んで受け取りたい。
物語世界はもっと時代がさかのぼって、最初の事件は1922年のことだ、アメリカは禁酒法の時代だってことは作品のあちこちで出てくる。
主人公サム・ホーソーンは学校を出てから一年くらいの青年医師で、ニュー・イングランドの田舎のノースモントという小さな町で開業したところ。
サム先生は両親からもらった自動車に乗ってるけど、まわりのひとはけっこうまだ馬車を使ってる、そんな時代のそんな土地柄。
そこで不可能犯罪が起こるんだが、事件現場に立ち会うサム医師が観察と推理を鋭く解決していく。
そんな小さな町で怪奇事件が毎度毎度起こってはたまったもんぢゃないと思うんだが、まあ童話ってのはそういうもんです、ウルトラマンで毎回日本に怪獣が現れるのと一緒で。
短いお話のなかで、不思議な事件をあっという間に解決していく、読みなれてくると、ちょっとした小道具的なものの描写とか登場人物の言動とかに、あー、これって何かの伏線というか謎解きの鍵だなって、勘づくようにはなるんだが、そこで無理に自力で考えることはせずに、おー、そうきたかーって軽く驚かされながら読んでくのが楽しい。
有蓋橋の謎 The Problem of the Covered Bridge
水車小屋の謎 The Problem of the Old Gristmill
ロブスター小屋の謎 The Problem of the Lobster Shack
呪われた野外音楽堂の謎 The Problem of the Haunted Bandstand
乗務員車の謎 The Problem of the Locked Caboose
赤い校舎の謎 The Problem of the Little Red Schoolhouse
そびえ立つ尖塔の謎 The Problem of the Christmas Steeple
十六号独房の謎 The Problem of the Cell 16
古い田舎宿の謎 The Problem of the Country Inn
投票ブースの謎 The Problem of the Voting Booth
農産物祭りの謎 The Problem of the Country Fair
古い樫の木の謎 The Problem of the Old Oak Tree

長い墜落 The Long Way Down

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22世紀の民主主義

2022-11-10 18:13:48 | 読んだ本

成田悠輔 2022年7月 SB新書
しまってある古いものを引っ張り出して読み返してみたり、古本を探してみては買ってきたりしてるばかりで、最近出たものを読むことは少ないんだが、めずらしく新しいものを読んでみた。
著者がテレビ番組に出てるのを何度かみて、なんかおもしろそうだなっつーか、なに書いてんだろうと興味もったもんで。
副題は、「選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる」。
政治学は専門ぢゃないらしいけど、民主主義って、ほかの制度よりいいような感じでとらえられてるみたいでいて、うまくいってないよね、ってあたりが問題意識になっている。
特に、
>では、なぜ選挙という雑なデータ処理装置がこれほど偉そうに民主主義の中核に鎮座しているのだろうか?(p.166)
ってとこを疑うのはおもしろい。
雑ってのは、限られた候補者のなかから誰かに一票を入れるだけの選択を突きつけられてるからで、たとえば、こいつの安全保障政策には賛成なんだけど経済政策にはまったく同意できないって候補者とか政党とかしかなかったら、自分の意思を反映することはできないよねえ、たしかに。
で、まあ、歴史的にいろいろあって成り立ってきて正当性がありそうだから続いてんだろうって見当はつけるんだが、ふつうはそこで、選挙制度をいじろうとか、政治家を監視して行動評価をしようとか、既存システムのなかで改善を考えるんだけど、そうぢゃない。
古代都市国家でもないし、王政を終わらせたばかりの時代でもないんだから、いま現在において、こっから民主主義をつくるとしたら、一人一票の代議制の選挙ぢゃないだろ、ってことになる。
そこで、でてくるのが「無意識データ民主主義」というもの。
政治的意思表示は選挙だけにしとくんぢゃなくて、実際にどうやるかは知らんけど、世の中にセンサーをはりめぐらして、人々が意識して発する意見にとどまらず、無意識のうちにのぞんでる意思や選好もデータとして集めちゃおうというもの。
(なんか想像力ない私からすると、防犯カメラ映像リレーしての犯罪捜査みたいに思えちゃう。)
で、集まったデータを利用して、とるべき政策を導き出すアルゴリズムをつくればいいでしょ、ということになる。
私が興味をもったのは、たとえばAIつかって問題解決のための政策を決定するってほうぢゃなくて、民意データを集めることによって目的を発見する、ってことのほう、なにが問題なのか、それを人々の無意識のなかから見つけ出すのは大事、現実世界では利益団体が自分たちだけの価値観のために議会に送り込む人物を担いでることが多いからね。
本書には、おもしろい表現の箇所はいっぱいあって、著者も、
>(略)この本の内容を再利用したい場合はジャンジャンやってしまってほしい。(略)切り抜くなりパクるなりリミックスするなり自由にしてほしい。(p.28)
とあるけど、新しく出たばかりのものについては、あんまり抜き書きたくさんしないようにしているので、目次だけ並べとく。
A.はじめに断言したいこと
B.要約
C.はじめに言い訳しておきたいこと
第1章 故障
  〇□主義と□〇主義
  もつれる二人三脚:民主主義というお荷物
  ギャツビーの困惑、またはもう一つの失われた20年
  感染したのは民主主義:人命も経済も
  衆愚論の誘惑を超えて
  21世紀の追憶
  「劣化」の解剖学:扇動・憎悪・分断・閉鎖
  失敗の本質
  速度と政治21:ソーシャル・メディアによる変奏
  「小選挙区は仕事すると票減りますよ」
  デマゴーゴス・ナチス・SNS
  偽善的リベラリズムと露悪的ポピュリズムのジェットコースター
  そして資本主義が独走する
第2章 闘争
  闘争・逃走・構想
  シルバー民主主義の絶望と妄想の間で
 政治家をいじる
  政治家への長期成果報酬年金
  ガバメント・ガバナンス(政府統治)
 メディアをいじる
  情報成分表示・コミュニケーション税
  量への規制
  質への規制
 選挙をいじる
  政治家への定年や年齢上限
  有権者への定年や年齢上限
  未来の声を聞く選挙
  「選挙で決めれば、多数派が勝つに決まってるじゃないか」
  「一括間接代議民主主義」の呪い
  政治家・政党から争点・イシューへ
 UI/UXをいじる
  電子投票が子どもの健康を救う?
  ネット投票の希望と絶望
  実現(不)可能性の壁、そして選挙の病を選挙で治そうとする矛盾
第3章 逃走
  隠喩としてのタックス・ヘイブン
  デモクラシー・ヘイブンに向けて?
  独立国家のレシピ1:ゼロから作る
  独立国家のレシピ2:すでにあるものを乗っ取る
  独立国家:多元性と競争性の極北としての
  すべてを資本主義にする、または〇□主義の規制緩和
  資本家専制主義?
  逃走としての闘争
第4章 構想
 選挙なしの民主主義に向けて
 民主主義とはデータの変換である
  入力側の解像度を上げる、入射角を変える
  データとしての民意1:選挙の声を聞く
  データとしての民意2:会議室の声を聞く
  データとしての民意3:街角の声を聞く
  万華鏡としての民意
  歪み、ハック、そして民意データ・アンサンブル
 アルゴリズムで民主主義を自動化する
  エビデンスに基づく価値判断、エビデンスに基づく政策立案
  データ・エビデンスの二つの顔
  出力側:一括代議民主主義を超えて、人間も超えて
  「しょせん選挙なんか、多数派のお祭りにすぎない」
  闘争する構想
  「一人一票」の新しい意味
  無謬主義への抵抗としての乱宅アルゴリズム
  アルゴリズムも差別するし偏見も持つ
  選挙vs.民意データにズームイン
  ウェブ直接民主主義から遠く離れて
 不完全な萌芽
  グローバル軍事意思決定OS
  金融政策機械
  マルサの女・税制アルゴリズム
  萌芽の限界:自動価値判断とアルゴリズム透明性
  無意識民主主義の来るべき開花
 政治家不要論
  政治家はネコとゴキブリになる
  「民度」の超克、あるいは政治家も有権者も動物になる
  政治家はコードになる
  夢みがちな無意識民主主義
おわりに:異常を普通に

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日本語で一番大事なもの

2022-11-03 20:29:54 | 丸谷才一

大野晋・丸谷才一 1990年 中公文庫版
いま振り返ってみたら、この文庫を中古で手に入れたのは、一昨年の秋だった、読んだのは最近、なにやってんだか。
日本語論ってことでむずかしそうな気がして読むの後回しにしてたんだが、対談形式なんで読んでもそんなに疲れない。
ただし文法の話なんで、なかみはちょいとむずかしい、どうむずかしいかってえと、万葉・古今・新古今の歌を読んでなんとなくでも意味わかるんぢゃないと、なにが問題なのかわからなくなっちゃうくらい。
そんで、タイトルになってる「日本語で一番大事なもの」は何かっていうと、それは助詞とか助動詞だって話がいろんな例を引き合いにだして延々と繰り広げられる。
万葉集で多く使われてたこの言葉は、古今時代には使われなくなって、代わりにこういう言葉になった、みたいな話、学校の国語の授業で聞いたら、それがどーしたと思わざるをえないんだけど、この一文字とか二文字でこんな思いを表現できるんだ日本語は、とかこの二人に言われちゃうと蒙を啓かさせるものある。
質問・疑問に「や」とか「か」とか使うとしても、その違いについて、
>大野 (略)「や」は自分の判断を相手にもちかけるという役目をおびているという見方が私にある。それは「か」が自分で自問自答するのに対して、「や」は多く相手にもちかけて相手に聞いている。(略)だからもし「か」と「や」を分けるなら、疑問と質問とに分けたいですね。問いとはいっても疑(うたがい)と質(ただす)なんで、自分で疑うのと、相手に質す、相手に問いかけるというのとは違う。(p.76)
なんて説明して、「野守は見ずや」って歌の文句は「野守は見ないんですね」と相手に問いただしていることになる、それって反語的な表現で「野守は見るではありませんか」って意味になる、というふうに解説してくれる、うーむ、深いね。
だいたいにおいて、
>大野 歌を作った人がその言葉に何を託したか、ことに助詞や助動詞で何を言おうとしてそれを使ったのかを正確に受けとりたいですね。(p.151)
って問題意識がすごくて、「だに」って言葉の解説のとこでは、
>大野 (略)「だに」という言葉については、「せめて……だけでも」とか、あるいは「譲りに譲ってこれだけどもと思うのに」とかいう意味を覚えておいて、それをあてはめると綺麗に解けるものが少なくありません。(p.253)
と言って、「だに」ってのは単に「さえも」のような訳をあてるだけぢゃなく、いろんな心をこめるには大事な言葉だとして、
>大野 日本語というのは、こんなに短い形式で、こんなに複雑なことが言えるんですね。(p.252)
と、ある歌のことをほめているんだが、そのくらい丁寧に教えてくれたら学校の古文の時間ももうちょっと興味もてたんぢゃないかという気もする。
古文っていえばねえ、係結びってあったけど、「ぞ」とか「こそ」とかきたら、そのあと連体形って、教わったから、はい、そうですかと習ってはみるんだけど、
>大野 どうして係結びでは連体形で終るのかについて、事の本質を見抜こうという立場から考えれば、これが強調のための倒置表現からはじまったんだととらえることができるでしょう、もともと日本語にはちゃんと終止形という形があるのですから、なぜ連体形で終るのかということを説明しなくてはいけないんです。(p.102)
ってことは教えてもらわなかったと思う、そうかあ倒置なんだ、順番ひっくりかえって、体言にかかるものが下に来ちゃってるから、それ連体形なんだ、と初めて納得した。
ちなみに、「ぞ」については、
>大野 いったい「ぞ」という言葉は、奈良時代、あるいはそれ以前には、「……である」ということを表わすための、たった一つの言葉だったんですね。(略)ところが、これを否定形にしようとしても、できないんです。(略)推量形にしようとしても、できません。(略)つまり、(略)「AはBではない」とか、「AはBであろう」とか、そういう言語形式はなかったんです。(p.106-107)
として、奈良時代に漢文の翻訳するには否定や推量表現が必要になり、「ぞ」だけではうまくいかなくて、存在するって言い方の「あり」をつかって、「あらず」とかいうことができるようになった、って話もあるんだけど、深い歴史だ。
そこで「にあり」という言葉ができて、それが「なり」って変化すると、便利なもんだから「……である」というときには、みんな「なり」って言葉を使うようになって、「ぞ」は使われなくなっていったと。
ちなみに、「にあり」が「なり」になるのは、
>大野 古代の日本語では、母音が二つ続くのは大変嫌いました。それを避けるために、母音が二つ続くときには、どちらかを落すとか、二つの母音の間に何かを挟むとかいたします。(略)
>それからもう一つは、融合して別の母音をつくることがあります。(p.156-157)
ってことの作用と思われる、こういうの大前提として説明しといてくんないと、ときどきなんで言葉の形がそうなってんのかわかんないで困る。
漢文の翻訳との関係では、「こそ」の解説で、
>大野 漢文の訓読では、主として事柄を論理的に運ぶように読むわけだから、そういうところへは「こそ」は入りようがないんですね。「こそ」は選抜した対象を感情的に強調して、下が逆説になるときに使います。(p.176)
として、漢文の訓読に「こそ」は使わないっていうんだけど、だから「こそ」がついてると物事がきわめて感情的になるんだってことが逆にはっきりしてくる。
でも、なんで現代では係結びを使わないんだろうねってことについては、
>丸谷 (略)係結びは詩的技法で、いわば実体のない虚辞としての語法ですが、この虚辞というのは現代短歌には向かないということがあります。いったい現代短歌は、三十一音という少ない字数のなかに、あらゆることを入れなければならなくなった。そうしなければ現代詩やさらには小説に張り合えないと痛切に感じたのが、明治以後の歌人なわけで、ですから三十一音をむだに使いたくなかった。つまり実体としての言葉を求めたわけですが、そのせいで虚辞のいのちを忘れたんですね。(p.114-115)
ということらしい、もうちょっと誰か多く使うひとがいてくれてれば、古文で係結びでてきてもすんなり理解できるようになったのかもしれないが。
助詞の話もおもしろいものばかり。
まず、「は」について、
>「は」はどんな操り方をする言葉かといえば、「は」とくれば、「は」の上にきた言葉は、話し手も相手ももう知っている題目として話し手が扱うんです。ここに「は」の役目がある。「春はあけぼの」といった場合に、「は」がついた以上は、「春」については、我も汝も話題として知っているという扱い方、操り方をする。相手が実際に知っていようが知っていまいが、それはかまわない。そして、「は」の下に、それについての答、説明を要求する。(略)
>(略)だから「は」は、動作の主をいう主格だとか、処分の対象をいう目的格だとか、あるいは場所格だとかいった、格には特別の限定はないんです。(略)だから、「は」は「は」の上の言葉(「は」の指す実体)を問題として提出し、下に答を求める形式なんです。(p.194-195)
として、「提題の助詞」という説明をしてくれる、これは以前に丸谷さんの『新々百人一首』にも出てきたけど、そういうことを小学校のうちに教えといてほしかった。
それから、存在の場所を表わす「に」は、
>大野 (略)もう一つ大事なことは、この「に」も「の」も省略されないということです。『万葉集』などを見ますと、「を」とか「は」とかいう助詞は、しばしば書くのを省略されていることがあるんですが、「に」はほとんど省略されていないんです。(略)
>大野 まめに書いてあるということは、「に」について強い意識をもっていたということでしょう、日本人は、どこにあるか、それが「身内」にあるか、「そと」にあるかということについては、非常に意識が強かったということです。(略)
>大野 目的格をあらわす「を」なんていう助詞は、あったってなくたっていいんです。(略)それから、「花咲く」「月出づ」でよかった。前に言いましたように、日本語ではもともと動作の主体を明確にあらわす助詞はなかったのです。ところが、「に」だけは非常にはっきりしていますし、「の」という助詞も使われることが多かったんですね。「の」と「に」が圧倒的に使用度数が多い助詞です。たとえば『源氏物語』のなかで使われている助詞の中で、いちばん多いのは「の」です。多い順に言いますと、「の」「に」「も」「て」「を」「と」「は」「ば」「や」の順です。(p.280-281)
と日本人の意識と関わる重要性を説明してくれてるが、しかし、源氏物語の助詞の数とか誰が数えるのかね、でも、古文の授業でもそういうこと教えてくれたら、現代語訳する作業とはべつに、源氏物語の字面にもちょっと興味持てたかもしれないね。
さてさて、そういう調子で大野さんはすごい博識なんだが、その大野さんについては、丸谷さんの随筆集『低空飛行』のなかに「大野さんのこと」って一篇があって、学生んときから有名で、
>ところで、当時の文学部で、みんなが異口同音、「あいつはできるんだつて」と噂してゐた男がゐる。国文の特研、つまり特別研究生の大野といふ人です。誰も彼もが、「何しろ国語学の大野つてのはできるらしいや」と言ってゐた。さう言つては畏怖してゐた。研究室の仄暗い階段で、
>「ほら、あれがその大野だよ」
>なんて教へてもらつたことがあります。(『低空飛行』p.126)
なんて逸話が明かされているんだけど、
>単にすぐれた国語学者であるだけではなく、さらに文学がよく判るといふ点で、この人ほどわたしが日本語について相談するのに向いてゐる先生はゐないのです。(同)
という存在なんだそうだから、日本語をめぐるこの対談が充実するのはあたりまえなんだろう。
本書の単行本は昭和六十二年刊行。
コンテンツは以下のとおり。
鴨子と鳧子のことから話ははじまる
感動詞アイウエオ
蚊帳を調べてみよう
「ぞける」の底にあるもの
「か」と「や」と「なむ」
已然形とは何か
「こそ」の移り変り
主格の動詞はなかった
鱧の味を分析する
岸に寄る波よるさへや
場所感覚の強い日本人
現象の中に通則を見る
古代の助詞と接頭語の「い」
愛着と執着の「を」
「ず」の活用はzとn
『万葉集』の「らむ」から俳諧の「らん」まで
「ぞ」が「が」になるまで

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