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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

世界短編傑作集2

2024-07-05 18:14:01 | 読んだ本
江戸川乱歩編 1961年 創元推理文庫
前に読んだこのシリーズの第1集といっしょに買っといた古本の文庫、読んだのは最近。
時代の順に作品選んでって編まれてるシリーズの第2集は、1907年から1923年の作品が収録されている。
かの有名なアルセーヌ・リュパンもいる、子どもんとき児童版でけっこう読んだんだけど、ここに入っている「赤い絹の肩かけ」ってのは初めて読んだ。
あと「ギルバート・マレル卿の絵」って、走ってる列車のなかから貨車一両だけを抜き取るって話なんだけど、子どもんときそのアイデアだけを図説紹介されてるのを何かの本で見たことあったんで、おお、これがその元の小説なのかーって、読んでちょっと感慨あった。
そんで、その話もそうなんだけど、なぜか本書の後半はややこしい仕掛けに重きをおいてるような話が多くて、巻末解説によると「機械的トリックはこの時代に盛んであった」とあるんで、そういう時代だったんかと思った。
だけど、私としては、あんまりおもしろいと思わないんだよね、物語っていうよりも、どうだー、こーんな奇想天外なトリック考えたぞー、おまえらには想像できまいー、みたいなこと言いたいのかって感じがしちゃってね。
登場人物のキャラクターがおもしろいかとか、その言動にユーモアがあるかとか、そのへんが感じられないと、読んでくうえでの楽しさというか、先を読みたくなるリズムがでてこないんで。
収録作は以下のとおり。へたにスジを書こうとするとネタバレしそうなので、物語の序盤のうちから引用して何の話だったかのメモとしとく。

「赤い絹の肩かけ」 L'Echarpe De Soie Rouge(1907) モーリス・ルブラン
>「そこで、ぼくは、これらの証拠品が物語っている事件を要約して、こう断言する。ゆうべ、九時から真夜中のあいだに、はでな身なりをした女が、短刀で刺されて、それからあと、首を絞められて死んだ。犯人はりっぱな服装をし、片眼鏡をかけた、競馬場に出入りをする男で、その直前、いまいった女とメラング菓子を三つとエクレア菓子をひとつ食べ、コーヒーをのんだ。まずはこういったところさ」(p.18)
アルセーヌ・リュパンがガニマール警部を前に、橋から川に投げ込まれた新聞紙に包まれた、長い糸切れが結んであるインキつぼとか、ガラスの小さな破片とか、ボール紙の箱のようなものとか、緋色の絹の小切れと同じ材料のふさ、といった品物から、自分の推理を滔々と述べるところ。
これって、シャーロック・ホームズが「これは他殺事件で、加害者は男です。身長六フィート以上の壮年、身長に似あわず足が小さくて、先の角ばった靴をはき、インド産のトリチノポリ葉巻をすう男です。ここへは被害者といっしょに、四輪の辻馬車できたが、その馬は三個はふるいけれど、右の前脚だけは新しい蹄鉄をつけている」(『緋色の研究』新潮文庫p.48)ってやったりするのを、おちょくってんぢゃないかなって気がする、リュパンのほうがすごいぞって。

「奇妙な跡」 Die Seltsame Fährte(1908) バルドゥイン・グロルラー
>九月の土曜日、気持ちのいい朝のことだった。午前六時というのに、ダゴベルトは召使に呼び起こされた。友人である工業クラブ会長アンドレアス・グルムバッハが、大至急に来てくれという緊急の伝言をダゴベルトによこしたのである。殺人があったのだ。(p.49)

「ズームドルフ事件」 The Doomdorf Mystery(1911) M・D・ポースト
>ランドルフとアブナー伯父は、そこで馬を降りた。鞍をはずして草を食わせに馬を話してやった。ズームドルフとの会談は、おそらく一時間ぐらいはかかるだろう――、ふたりは、けわしい小道を断崖の上へとよじのぼっていった。(p.68)
これ、「アブナー伯父」って18編からなる短編集で主人公をつとめてる有名なキャラクターなんだそうである、私は全然知らんかった、友人のランドルフは治安判事。

「オスカー・ブロズキー事件」 The Case of Oscar Brodski(1912) R・オースチン・フリーマン
>「でも、なぜまた、あの魔法の箱などご持参なんで?」ボスコヴィッチは帽子棚をちらと見あげながらきいた。
>「どこかへ行くときは、いつだって、あれを持って出かけるんだよ」ソーンダイクは答えた。「どんなことにでくわすかわからんものね。緊急なばあい、道具が手もとにある安心にくらべると、持ち運びのめんどうなんか、なんでもない」(p.116)
これは倒叙形式の推理小説、はじめの「I 犯罪の過程」で犯罪がいかに行われたか事細かく語っちゃっておいて、「II 推理の過程(医師クリストファー・ジャーヴィスの談話)」で緻密な観察分析を通して真相に迫っていくさまを描く、ソーンダイク博士は箱の中に試験管、薬剤、小型顕微鏡などを入れて持ち歩く、科学者探偵。

「ギルバート・マレル卿の絵」 Sir Gilbert Murell's Picture(1912) V・L・ホワイトチャーチ
>「そいつがさ、昨夜、ディドコットを発車したウィンチェスタ行きの貨物列車があるんだが、そのうちの貨車が一両、このニューベリーに着いていないらしいのだよ」
>「それだけじゃたいしたこともないね」とヘイズルは、あいかわらず『体操』をやりながら答えた。(略)
>「たぶん、なにかのまちがいで、側線にでも残されたんだろう」とヘイズルは答えた。
>「だが、駅長の話では、沿線の各駅にはみんな電話をかけたが、どこにもそんな貨車はないということだよ」(p.164)
行方不明になった貨車に積まれていたのはギルバート・マレル卿の所蔵品で高価な大きな三枚の絵。

「好打」 The Sweet Shot(1913) E・C・ベントリー
>「いいや、わたしは、当時たまたま海外にいましてね」とフィリップ・トレントは言った。「英国の新聞を見る機会がなかったので、今週、こちらへ来るまで、あなたの怪事件については、なにも聞いていませんでした」
>ロイデン大尉は小柄で、やせぎすで、褐色の顔をした男だったが、自動電話機を分解するというデリケートな――禁じられた――仕事にとりかかっていた。そして、いま、仕事の手を休めて、たばこつぼに手をのばした。ケンプスヒル・クラブハウスにある、大尉の事務室の大きな窓からは、その楽しいゴルフ・コースの第十八グリーンが見わたされた、大尉の目は、思い出をたぐりながら、向こうの、はりえにしだの茂ったスロープをさまよっていた。(p.187)
これ、主人公の探偵は「トレント最後の事件」って長篇で名高いんだって、私は読んだことないし知らなかった。

「ブルックベンド荘の悲劇」 The Tragedy at Brookbend Cottage(1914) アーネスト・ブラマー
>「マックス」パーキンスがうしろでドアをしめると、カーライル氏が言った。「きみが会うことを承知したホリヤー大尉がおいでになったよ」
>「お話をきこうといったのだよ」カラドスは、前にいる、健康そうな、どこか戸惑いしたような、未知の男の顔のほうへ、まっすぐに向きなおって微笑しながら、カーライルの言葉を訂正した。「ホリヤーさんは、わたしが目の見えないことをごぞんじでしょうね」(略)
>ホリヤー大尉の話の大要は、次のようなものだった。
>「わたしには、ミリセントという姉があって、クリークという男と結婚しています。姉は現在二十八歳で、クリークは少なくとも十五は年上です。(略)(p.213-214)
マックス・カラドスは盲人のいわゆる安楽椅子探偵、すごい有名で短篇は人気あるらしいんだけど、またまた私は読んだことないし知らんかった。

「急行列車内の謎」 Mystery of the Sleeping Car Express(1920) F・W・クロフツ
>一九〇九年の秋に英国にいた人なら、北西急行列車がプレストンとカーライルの中間にさしかかったさいに車内で起きた恐ろしい惨劇のことを、記憶にとどめておられることと思う。当時あの事件は大きな注目を浴びたものだったが、それは、事件そのものが関心をひく性質のものだったせいだけでなく、あの事件が絶対的な不可解性に包まれていた点が、なおそれ以上に大きな原因になっていたのである。(p.255)
寝台列車の個室という密室での殺人事件が起きる、乗客乗員を事情聴取したなかには容疑者らしいのはいないし、彼らの証言から犯人が誰にも見られず車室から逃げ出せたわけはないし、で迷宮入りになる。最後、犯人の供述って形で真相語られるんだけど、それって種明かしの説明をしたいだけで書いてんぢゃないのって気がして、なんかおもしろくない。

「窓のふくろう」 The Owl at the Window(1923) G・D・H&M・I・コール
>ダウンシャー・ヒル殺人事件は(新聞はあの事件をそう命名した)は、一九二〇年五月のある日曜日の朝、わたしたちの国の風土が、夏はどのように作るべきものかを、しんじつ知っていることを示そうと試みたかとも思われるような、さわやかなある朝、九時半すぎに発見された。ニュー・スコットランド・ヤードのヘンリ・ウィルスン警視は、友人のマイクル・プレンダガスト医師と連れだって、ハンプスティッドのダウンシャーヒルのあたりを散歩していた。(p.297)

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