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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

孔子暗黒伝

2010-03-26 18:13:48 | 諸星大二郎
諸星大二郎 1978年 創美社発行・集英社発売 ジャンプ・スーパー・コミックス「1赤気篇」「2東夷篇」全2巻
はい、好きなマンガです。「暗黒神話」に続いて出た、諸星大二郎の傑作。
2巻のカバーにて著者いわく
これは実は天動説の話なのです。宇宙における物質の運動は相対的なものであるから、中心はどこにあってもかまわないのであるし、また神話学的にも“宇宙の中心”はどこにでも存在しうるのです。聖体顕現(ヒエロファニー)としての主人公が移動するとともに中心も移動し、その意味でブラフマンはどこにでもいるのです。
というのが、このマンガの内容をよく説明していると思います。読んだことないひとには、わからないだろうけどね
私は小学生のときに、リアルタイムで「ジャンプ」での連載読んでて、ぶっとびましたけどね。「暗黒神話」で引きずり込まれた世界で、これでとどめさされました、以来、諸星大二郎ファンやってます。

話は、孔子の時代に生まれた、孔子にとっては理想の天子たる者が、その運命の必然ゆえに、中国を離れて数奇な旅をして、天に還るってものですが(←あいかわらず説明になってない)、そこへ例によって、神話やら伝説やら歴史やら民俗やら宗教やら現代物理やらを、テンコ盛りにぶち込んで、壮大なウソ物語(←誉め言葉)をつくりあげてます。
なかでも、今回とりあげたのは、きのうまでの宇宙とか真理つながりで、
現代の科学は宇宙の本質について 実はまだほとんど何もわかっちゃいない
それでもどこかに真実はあるはずだ
そしてその“真実”を各時代の最高の知識人たちが色いろな言葉で表現しようとする
古代中国人は「易」や「老子」で… インドのバラモンは「ヴェーダ」や「ウパニシャッド」で… そして現代の科学者たちは数学や物理学の言葉で…
群盲象をなでるというやつさ どれも真実の一部を不完全にしかいえないんだ
おれには科学の言葉が一番不完全に思えるがね…

って作中の一節が、当時からずっと私を支配してるからです。
宇宙が始まる前に何が存在したのか、どうやって宇宙が始まったのか、なぜ今のような宇宙の姿になったのか、宇宙は終わりに向かうのか、宇宙が終わるとき最後どうなるのか。そんなことを考え始めたのは、私にとっては、このマンガが契機でした。時間がなぜ過去から未来へしか流れないのか、なんて当たり前のことに疑問をもったのも、この作品を読んだときから。
ほかにも、陰と陽・天と地・男と女・光と影、世界は対立する二元でなりたっていて、陰と陽にわかれたものをまた二つに分けていくと無限に増えていき、二種の記号だけであらゆるものが表現できる、ってのが易であり、二進法をつかったコンピュータである、とか。木・火・土・金・水の五行と、その相生・相剋の法則とか。学ぶべきことっていうか真理探究のヒントになるっていうか、そういう刺激的なものいっぱい。
地球の歴史のなかで地磁気がときどき逆転して、そのとき生物に変化が起きる、なんていうのもあったな。あと、東=青龍(青)、西=白虎(白)、北=玄武(黒)、南=朱雀(赤)という四方を象徴する動物と色なんて、ガキのころマンガでおぼえた雑学的知識は、いつまでも忘れないなぁ。

ちなみに、マンガの画としては、「ハリ・ハラ」とか「開明獣」とか、傑作が出てきます

コミックス2巻には「失楽園」を収録。(「失楽園」のなかの“水トカゲ”とか“大グモ”の絵は、子どものころ読んだときは気持ち悪かったなぁ…)

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