フレドリック・ブラウン/中村保男訳 1969年 創元推理文庫
短篇集を読んでおもしろかったフレドリック・ブラウン、SF作品で人気あるってんで、読んでみようと思って探してた。
そしたら、5月の古本まつりで見つけたんで買ってみた、1973年の10版だけどだいぶ煤けてるよ、まあ読めりゃいいんだけど。
原題「SPACE ON MY HANDS」は1951年のものだって、古いね、しかし私はいまさら19世紀末文学読んでたりするから、それに比べりゃなんでもないか。
しかし最近おもうにSFって、世間一般の評価が高くても、自分には合う合わないっつーか、この世界にはツイてけねーみたいに感じて、なにがおもしろいのかわからんということが、ときどきあるんで、読む前からあまり期待してはいけない気がする。
でも読んでみりゃあ、おもしろかったんでよかった、『まっ白な嘘』読んだときのように、急いで他のも読んでみなくては、までは感じなかったけどね。
奇抜な発想からできあがってるとこがいいんだろうな、結局私が好きなのは、科学的なフィクションぢゃなくて、童話的性格のつよいものなんでしょうな。
あと短篇集ってのがやっぱいい、意外な結末がズドンときたとき長いのより爽快感あるし、もしも好みぢゃないのにぶつかったとしても、飽きる前に終わっちゃうし。
収録作は以下のとおり。
「緑の地球 SOMETHING GREEN」
地球から遠く離れた星に、胴体着陸して宇宙船が壊れて、帰れなくなって5年になる男の話。
その惑星は赤い密林ばかり、緑色がどこにもない、地球に帰って緑の世界をもう一度見たいと男はサバイバルを続ける。
「一九九九年 CRISIS,1999」
1999年シカゴの探偵の話、道楽で犯罪摘発を行っているベラ・ジョウドは、市警本部長に会いに行った。
本部長のいうにはこの1年で犯罪の十分の七が未解決のままだ、それはこの二十年間で偉大な成果をあげてきたウソ発見器が、いまの暗黒街の連中には通用しないからだという。
「狂った星座 PI IN THE SKY」
1987年3月末の怪事件、天文台職員が星座をつくる恒星の配置がおかしい、星たちが光速の数倍の速さで動いてしまっていることを観測する。
その後、世界中でほとんどの星座が原形を失っているのが見られるが、恒星と地球との距離はまちまちなのに、ある夜に一斉に動きだしたことの説明は誰にもできない。
「ノック KNOCK」
タイトルのいわれは物語冒頭の「地球上にのこされた最後の人間が一人で部屋の中に坐っていた。と、ドアにノックがして……」という短い恐怖物語の例にある。
二日前に人類が滅んでしまい、一人残された大学助教授の話、彼は地球上の動植物を滅ぼして彼をサンプルとして捕らえた異星人と話をする。
「すべて善きベムたち ALL GOOD BEMS」
SF作家エルモ・スコットが新しい物語の書き出しを検討していると、突如飼い犬のドーベルマンが口をききはじめた。
宇宙船が不時着したアンドロメダ星人が、知能の劣った生物の肉体に一時のりうつっているのだという。
「白昼の悪夢 DAYMARE」
木星の衛星カリストの第三区警察署の警部、ロッド・キャクアが主人公、五年ものあいだ皆無だった殺人事件が発生したので現場に向かう。
キャクア警部が被害者を見ると頭を刀で大きく割られて死んでいる、しかし発見者の巡査は死体には心臓を旧式銃でうたれた穴があったと言うし、検死した医課主任は凶器は光線銃だと断言するし、死体を担架にのせた衛星課員に電話して確かめると、死体は首からちょん切られていたでしょうがと答える。
同じもの見ているはずのみんながみんな違うことをいう、この導入部が秀逸で、一読したなかでは私はこれが気にいった。
「シリウス・ゼロは真面目にあらず NOTHING SIRIUS」
個人用宇宙船でシリウスの二つの惑星を訪れていた「わたし」と妻と娘とパイロットは、内側の軌道に知られていない新しい惑星を発見する。
着陸してみると、見たことのない生物もいるが、舗装された街路があり、建物もあって、既に誰かが到達しているものと思われた。
「星ねずみ STAR MOUSE」
もとウィーンの大学にいたオーベルブルガー教授は亡命してコネティカット州の自宅でロケット燃料の研究をつづけていた。
家にいる小さなネズミをミッキー・マウスと呼んで、ネズミ捕りで捕らえた教授は、月へ向かって飛ばすロケットの実験にそのネズミを乗せて打ち上げることとした。
「さあ、気ちがいに COME AND GO MAD」
新聞記者のヴァインは三年前に事故で記憶を失い、それより前のことは何もおぼえていない人物だが、ある日編集長に呼び出される。
編集長は精神病院の院長の依頼で、患者に扮してその病院に潜入取材に行ってくれという、渋ったヴァインだが偏執狂で自分がナポレオンだと思いこんでいるという設定で病院行きを引き受ける。
短篇集を読んでおもしろかったフレドリック・ブラウン、SF作品で人気あるってんで、読んでみようと思って探してた。
そしたら、5月の古本まつりで見つけたんで買ってみた、1973年の10版だけどだいぶ煤けてるよ、まあ読めりゃいいんだけど。
原題「SPACE ON MY HANDS」は1951年のものだって、古いね、しかし私はいまさら19世紀末文学読んでたりするから、それに比べりゃなんでもないか。
しかし最近おもうにSFって、世間一般の評価が高くても、自分には合う合わないっつーか、この世界にはツイてけねーみたいに感じて、なにがおもしろいのかわからんということが、ときどきあるんで、読む前からあまり期待してはいけない気がする。
でも読んでみりゃあ、おもしろかったんでよかった、『まっ白な嘘』読んだときのように、急いで他のも読んでみなくては、までは感じなかったけどね。
奇抜な発想からできあがってるとこがいいんだろうな、結局私が好きなのは、科学的なフィクションぢゃなくて、童話的性格のつよいものなんでしょうな。
あと短篇集ってのがやっぱいい、意外な結末がズドンときたとき長いのより爽快感あるし、もしも好みぢゃないのにぶつかったとしても、飽きる前に終わっちゃうし。
収録作は以下のとおり。
「緑の地球 SOMETHING GREEN」
地球から遠く離れた星に、胴体着陸して宇宙船が壊れて、帰れなくなって5年になる男の話。
その惑星は赤い密林ばかり、緑色がどこにもない、地球に帰って緑の世界をもう一度見たいと男はサバイバルを続ける。
「一九九九年 CRISIS,1999」
1999年シカゴの探偵の話、道楽で犯罪摘発を行っているベラ・ジョウドは、市警本部長に会いに行った。
本部長のいうにはこの1年で犯罪の十分の七が未解決のままだ、それはこの二十年間で偉大な成果をあげてきたウソ発見器が、いまの暗黒街の連中には通用しないからだという。
「狂った星座 PI IN THE SKY」
1987年3月末の怪事件、天文台職員が星座をつくる恒星の配置がおかしい、星たちが光速の数倍の速さで動いてしまっていることを観測する。
その後、世界中でほとんどの星座が原形を失っているのが見られるが、恒星と地球との距離はまちまちなのに、ある夜に一斉に動きだしたことの説明は誰にもできない。
「ノック KNOCK」
タイトルのいわれは物語冒頭の「地球上にのこされた最後の人間が一人で部屋の中に坐っていた。と、ドアにノックがして……」という短い恐怖物語の例にある。
二日前に人類が滅んでしまい、一人残された大学助教授の話、彼は地球上の動植物を滅ぼして彼をサンプルとして捕らえた異星人と話をする。
「すべて善きベムたち ALL GOOD BEMS」
SF作家エルモ・スコットが新しい物語の書き出しを検討していると、突如飼い犬のドーベルマンが口をききはじめた。
宇宙船が不時着したアンドロメダ星人が、知能の劣った生物の肉体に一時のりうつっているのだという。
「白昼の悪夢 DAYMARE」
木星の衛星カリストの第三区警察署の警部、ロッド・キャクアが主人公、五年ものあいだ皆無だった殺人事件が発生したので現場に向かう。
キャクア警部が被害者を見ると頭を刀で大きく割られて死んでいる、しかし発見者の巡査は死体には心臓を旧式銃でうたれた穴があったと言うし、検死した医課主任は凶器は光線銃だと断言するし、死体を担架にのせた衛星課員に電話して確かめると、死体は首からちょん切られていたでしょうがと答える。
同じもの見ているはずのみんながみんな違うことをいう、この導入部が秀逸で、一読したなかでは私はこれが気にいった。
「シリウス・ゼロは真面目にあらず NOTHING SIRIUS」
個人用宇宙船でシリウスの二つの惑星を訪れていた「わたし」と妻と娘とパイロットは、内側の軌道に知られていない新しい惑星を発見する。
着陸してみると、見たことのない生物もいるが、舗装された街路があり、建物もあって、既に誰かが到達しているものと思われた。
「星ねずみ STAR MOUSE」
もとウィーンの大学にいたオーベルブルガー教授は亡命してコネティカット州の自宅でロケット燃料の研究をつづけていた。
家にいる小さなネズミをミッキー・マウスと呼んで、ネズミ捕りで捕らえた教授は、月へ向かって飛ばすロケットの実験にそのネズミを乗せて打ち上げることとした。
「さあ、気ちがいに COME AND GO MAD」
新聞記者のヴァインは三年前に事故で記憶を失い、それより前のことは何もおぼえていない人物だが、ある日編集長に呼び出される。
編集長は精神病院の院長の依頼で、患者に扮してその病院に潜入取材に行ってくれという、渋ったヴァインだが偏執狂で自分がナポレオンだと思いこんでいるという設定で病院行きを引き受ける。