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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

宇宙をぼくの手の上に

2024-08-28 19:19:50 | 読んだ本
フレドリック・ブラウン/中村保男訳 1969年 創元推理文庫
短篇集を読んでおもしろかったフレドリック・ブラウン、SF作品で人気あるってんで、読んでみようと思って探してた。
そしたら、5月の古本まつりで見つけたんで買ってみた、1973年の10版だけどだいぶ煤けてるよ、まあ読めりゃいいんだけど。
原題「SPACE ON MY HANDS」は1951年のものだって、古いね、しかし私はいまさら19世紀末文学読んでたりするから、それに比べりゃなんでもないか。
しかし最近おもうにSFって、世間一般の評価が高くても、自分には合う合わないっつーか、この世界にはツイてけねーみたいに感じて、なにがおもしろいのかわからんということが、ときどきあるんで、読む前からあまり期待してはいけない気がする。
でも読んでみりゃあ、おもしろかったんでよかった、『まっ白な嘘』読んだときのように、急いで他のも読んでみなくては、までは感じなかったけどね。
奇抜な発想からできあがってるとこがいいんだろうな、結局私が好きなのは、科学的なフィクションぢゃなくて、童話的性格のつよいものなんでしょうな。
あと短篇集ってのがやっぱいい、意外な結末がズドンときたとき長いのより爽快感あるし、もしも好みぢゃないのにぶつかったとしても、飽きる前に終わっちゃうし。
収録作は以下のとおり。

「緑の地球 SOMETHING GREEN」
地球から遠く離れた星に、胴体着陸して宇宙船が壊れて、帰れなくなって5年になる男の話。
その惑星は赤い密林ばかり、緑色がどこにもない、地球に帰って緑の世界をもう一度見たいと男はサバイバルを続ける。

「一九九九年 CRISIS,1999」
1999年シカゴの探偵の話、道楽で犯罪摘発を行っているベラ・ジョウドは、市警本部長に会いに行った。
本部長のいうにはこの1年で犯罪の十分の七が未解決のままだ、それはこの二十年間で偉大な成果をあげてきたウソ発見器が、いまの暗黒街の連中には通用しないからだという。

「狂った星座 PI IN THE SKY」
1987年3月末の怪事件、天文台職員が星座をつくる恒星の配置がおかしい、星たちが光速の数倍の速さで動いてしまっていることを観測する。
その後、世界中でほとんどの星座が原形を失っているのが見られるが、恒星と地球との距離はまちまちなのに、ある夜に一斉に動きだしたことの説明は誰にもできない。

「ノック KNOCK」
タイトルのいわれは物語冒頭の「地球上にのこされた最後の人間が一人で部屋の中に坐っていた。と、ドアにノックがして……」という短い恐怖物語の例にある。
二日前に人類が滅んでしまい、一人残された大学助教授の話、彼は地球上の動植物を滅ぼして彼をサンプルとして捕らえた異星人と話をする。

「すべて善きベムたち ALL GOOD BEMS」
SF作家エルモ・スコットが新しい物語の書き出しを検討していると、突如飼い犬のドーベルマンが口をききはじめた。
宇宙船が不時着したアンドロメダ星人が、知能の劣った生物の肉体に一時のりうつっているのだという。

「白昼の悪夢 DAYMARE」
木星の衛星カリストの第三区警察署の警部、ロッド・キャクアが主人公、五年ものあいだ皆無だった殺人事件が発生したので現場に向かう。
キャクア警部が被害者を見ると頭を刀で大きく割られて死んでいる、しかし発見者の巡査は死体には心臓を旧式銃でうたれた穴があったと言うし、検死した医課主任は凶器は光線銃だと断言するし、死体を担架にのせた衛星課員に電話して確かめると、死体は首からちょん切られていたでしょうがと答える。
同じもの見ているはずのみんながみんな違うことをいう、この導入部が秀逸で、一読したなかでは私はこれが気にいった。

「シリウス・ゼロは真面目にあらず NOTHING SIRIUS」
個人用宇宙船でシリウスの二つの惑星を訪れていた「わたし」と妻と娘とパイロットは、内側の軌道に知られていない新しい惑星を発見する。
着陸してみると、見たことのない生物もいるが、舗装された街路があり、建物もあって、既に誰かが到達しているものと思われた。

「星ねずみ STAR MOUSE」
もとウィーンの大学にいたオーベルブルガー教授は亡命してコネティカット州の自宅でロケット燃料の研究をつづけていた。
家にいる小さなネズミをミッキー・マウスと呼んで、ネズミ捕りで捕らえた教授は、月へ向かって飛ばすロケットの実験にそのネズミを乗せて打ち上げることとした。

「さあ、気ちがいに COME AND GO MAD」
新聞記者のヴァインは三年前に事故で記憶を失い、それより前のことは何もおぼえていない人物だが、ある日編集長に呼び出される。
編集長は精神病院の院長の依頼で、患者に扮してその病院に潜入取材に行ってくれという、渋ったヴァインだが偏執狂で自分がナポレオンだと思いこんでいるという設定で病院行きを引き受ける。
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イチレツランパン破裂して

2024-08-22 20:11:41 | 読んだ本
高島俊男 2005年 文春文庫版
「お言葉ですが…(6)」なんで、前に読んだ『キライなことば勢揃い』につづくもの、ことし6月ころに古本買い求めた。
初出は「週刊文春」の2000年から2001年ころだという、べつに読んでて古い感じはしないけどねえ、最後のほうに小泉総理大臣が靖国神社へ行くとか行かないとかって話題があって、そんな時代のことかあとか思ったが。
しかし、シリーズも6作目ということになると、やっぱちっと飽きてくるな私は、たぶん週刊誌で週にいちど数ページだけって形で読むなら毎回おもしろく読んで楽しみにするとは思うが。
タイトルの「イチレツランパン破裂して」っていうのは、数え歌だという、著者の幼少期に、近所の年上の女の子がお手玉とかまりつきするとき歌ってたんで、おぼえたという。
>イチレツランパン破裂して
>日露戦争はじまった
>さっさと逃げるはロシヤの兵
>死んでもつくすは日本の兵
>五万の兵をひきつれて
>六人のこしてみなごろし
>七月十日の戦いに
>ハルピンまでも攻めよせて
>クロバタキンの首をとり
>東郷元帥万々歳(略)(p.101)
って調子で1から10まで数えてくっていうんだけど、私は知らない、まあ昭和12年生まれのひとの子どものときの話ですからねえ、それにしても歌詞に時代を感じるなあ。
その歌詞の、ランパンは談判だろうが、イチレツってなんだろねって話なんだけど。
本シリーズには、各章のうしろに「あとからひとこと」ってのがつくことあって、雑誌で掲載されたあとに寄せられた意見なんかを単行本にするときに補足として載せたり、さらには単行本出たあとわかったことなんかを文庫化するときに注釈として載せたりするのがお決まりになってんだけど、この章については本文よりも「あとから~」のほうが分量が多い、っつーのが、なんかおもしろい。
歌に関するはなしでおもしろいのは、「背くらべ」の歌をどう歌うかって話題があって、「小生の大好きな、楽しい問題である」としている。
「はかってくれた背のたけ」のとこを、「せえのたけ」と歌うのはいかがなものか、歌詞集をみたら「せいのたけ」と書いてあったから、正しい発音で歌ってほしい、という新聞読者の投書について、
>(略)歌詞集に「せい」とあるから「せい」が正しい、と言うのは基本的まちがいである。この誤解は、表記は発音をあらわす、と思いこんでいることによる。(p.115)
と断ずる。「ぞうさん」だって発音するときゃ「ゾオサン」でしょうがとか。
これ、表記と発音とは別、っていう国語にとっての基本的ではあるが大問題を論じてんだけど、わかってないひとが多いって嘆くことになる。
>かな表記を発音表記と思うのは基本的まちがい、と上に言ったが、実際にはそう思っている人が多い。特に戦後、発音にちかづけた新かなづかいがおこなわれて以来、多くなったようだ。そうすると、口頭語が文字表記にひっぱられる、という現象がおこるのである。(略)毎度申すとおり、赤信号みんなでわたれば青になる、ことばの世界ではたいがい無知なほうが勝つ。(p.117-118)
ということになる、「計」とか「藝」とか「税」とか「礼」とか、「イ」ってカナ書いても、通常の発音はケエ、ゲエ、ゼエ、レエなんだけどねと。
ちなみに、べつのとこでも
>ことばは算数とちがって、みんながまちがえるとそれが正しくなる、という困った性格がある。(p.270)
って言ってたりする。
旧かなではハ行で活用してたり「ゑ」をつかうワ行で活用してたりしてわかりやすかったのが、みんなア行のウとかエとかで書いちゃうからかえってわかんなくなっちゃってるけど、もともとを知らないひとが多いからどーしよーもない、ということのようです。
井上ひさしさんなら、ことばのゆれってのは認めるしかないでしょと言うのかもしれないけど。
コンテンツは以下のとおり。和製英語として名高い「ナイター」をつくったのは誰だったのかなんて話もおもしろい。
数学のできない大学生
 昔大学怠慢教授
 数学のできない大学生
 野口英世
 この魚変だ
 杏仁豆腐
 踊り字の話
 「ナイター」誕生
 オリンピックの思い出
イチレツランパン破裂して
 柿山伏
 おーい、ねえちゃん
 わが祖父
 ゆーたやんけ
 駆逐水雷
 イチレツランパン破裂して
 はかってくれた背のたけ
木くずと木屑
 平手造酒の墓
 木くずと木屑
 白髪三千丈
 船坂山や杉坂と
 桜の幹の十字の詩
 女はあおむけ男はうつぶせ?
 勉強べやの名前
 「全集」は全集か
天が落ちて来やしないか
 お送りいただきますよう
 奇怪な朝日文字
 表外字の字体
 手書き字と印刷字
 李陵搏戦
 「××一揆」
 「あがり」と「くずれ」
 「べきどめ」再説
 天が落ちて来やしないか
赤鷲の謎
 赤鷲の謎
 「赤鷲」判明
 ヨクにかがやく
 ロード・オブ・ブレナム
 ブレナム後話
 植うる剣
 「植うる剣」再論
ぼろぼろ
 むめの大罪
 ぼろぼろ
 任侠ものがたり
 不戦と恒久平和を誓った
 ケッタクソの問題
 正しい歴史認識
 鳶魚の『夜明け前』批判
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短歌ください 海の家でオセロ篇

2024-08-15 19:28:24 | 穂村弘
穂村弘 2023年 KADOKAWA
これは今年5月の古本まつりで見つけて買った、読んだのは最近だけど。
新刊出てたの知らなくて、いきなり古本見つけてややおどろいたんだが、第4弾の「双子でも片方は泣く夜もある篇」までは読んでたんで、せっかくだから読むかあって。
ってのは、最初の2冊くらいはたしかにおもしろいおもしろいって読んだ記憶があるんだけど、第3弾、4弾くらいになると、もういっか感もちょっと感じてたんで、まあ、それだけ私には短歌愛みたいなものがないってことなんだけどね。
「ダ・ヴィンチ」の連載の第121回から166回までをまとめたものだということで、2018年から2022年くらいの時期なんでしょう、毎回のテーマに沿ったお題投稿と、常に募集している自由題作品があります。
タイトルの「海の家でオセロ」ってのは、なんのことかっていうと、「アルバイト」ってテーマで募集された回の一首が、
「海の家でオセロを売っていましたと夏の終わりにあなたは笑う」(p.82)
っていうところからきている。よくわからんなあ私には、なんのアルバイトなのか。
同じアルバイト題のなかでは、私は、「そんなこともできないのかとあきれられどんなことかもわからずにいる」(p.80)ってほうが好みだな、これは全部ひらがなで書きたくなる気持ちもうすうすわかるような気がする。
うーん、今回一読してみたところ、あんまり、これ、いい、って直感的におもうものが多くなかったなって気がする。
それは上に書いたように、私の歌に対する関心がうすれてるというか、感度のようなものが落ちちゃってるせいぢゃないかとおもう。
それでも、こういうのおもしろいかもって思ったのをいくつか引用しておきますか。
「大丈夫あなたの見つめるくちびるであなたの天敵やっつけてあげる」(p.153)
これはテーマ「苦手な食べ物」ですね、すてきな宣言です。
「乱気流に突入します、すみません機長は乱気流が好きなので」(p.185)
これはテーマ「飛行機」、妙におかしい。
「平安にウインクとかはあったのかなあ自由研究はそれがいいのに」(p.232)
これはテーマ「宿題」、宿題をヤダとか大変とかでとらえない発想がいいと思います。
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電動バナナ倶楽部

2024-08-08 19:41:58 | マンガ
原律子 1988年 スコラ・バーガーSC
これは、ことし3月の古本まつりで見つけたもの、なんかめずらしい気がして買ってしまった。
原律子って、『フロムK』の「風雲原律子」が私にとってはいちばん情報量多いくらいで、ちゃんと読んだことないなー、とか思ったもんで。
なんか「スピリッツ」で連載してなかったっけ、詳しいこと細かいことおぼえてないが、それくらいの記憶しかない。
本書は、巻末初出一覧によると「スコラ」で1984年から1985年に連載していたという、「電動バナナ倶楽部」が中心で、全部で160ページくらいの単行本だけど90ページくらいを占めてます。
連載の一回あたりは3ページで、全30回つづいたようですが、ほかには「月曜漫画」という作品が「サンデーまんが」で4回連載されたものだけど、あとの収録作は1985年ころの時期に、あちこちで単発で掲載された2ページとか4ページの作品を集めたってところ。
そのへんの仕事量が、『フロムK』で言われてた、締め切りを守らないとか、編集からの電話に出ないとかってあたりと、関係あるのかどうかはわからないけどね。
初めて読むものばかりだったんだけど、それにしてもなー、内容は、予想してたよりすごいなって感じ、感想を言えといわれても困ってしまう。
『フロムK』のなかでは初期の作品について、「スケベネタは充分にやらしく かつ可愛らしさがあった」と評されてて、そういうの期待してたんだけど、このころにはもう独自路線を突き進んでんのか、あんまりカワイイって感じはしない。
よく言われることだと思うけど、下品なネタのオンパレードである、おもしろいかって言われても、答えようがない。
(うん、いつもだと、収録作のタイトルをずらっと書き並べるんだけど、ちょっと本書の場合は、ブログの品性疑われちゃったらヤだなというワードがあるので、やめておく。)

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パリ2024オリンピック 総合馬術で日本チームが団体銅メダル

2024-08-02 18:34:05 | Weblog
すっかりニュースとしては出遅れてしまって面目ないんだけど。
日本時間29日の夜は所用で決勝が観られなかったもんで、昨日今日で録画しといた(グリーンチャンネル、グッジョブ)のをようやく観たわけだ。
おめでとう、日本代表チーム。
いやー、いいですね、凄すぎてどこがどう難しいのかすらわかってないんだけど、ひさしぶりに馬術の試合見て、やっぱいいなあと思った。
特に総合って、馬場と障害はまだ理解可能な範囲内にありそうな気もするけど、私が馬だったら、クロスカントリーは絶対やだ、拒否する自信しかない。
だって人はコース下見してんのかもしれないけど、馬はこの向こうになにがあるのかどうなってんのかわかんないようなもの飛ぶんでしょ、無理だよ。
ほんと馬はえらい。
これで2024年夏のオリンピックは、日本が馬術競技でメダル獲得したって形で私んなかでは記憶に残るんぢゃないかと。
(なんかオリンピックに対する関心が年々薄ぅくなってくんだよね、オリンピックでやんなくてもいいだろがって競技が増えてく気がするのと関係あるのかも。)
それにしても、たまには、馬乗りたいもんだねえ。(障害は遠慮しとく。)
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