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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

愛と幻想のファシズム

2009-09-08 14:45:55 | 好きな本
村上龍 1987年 講談社 上下巻
きのうのつづき。
「EV.Cafe」は、私にとっては、ニューアカデミズムとかへの道案内ですが、村上龍にとってはこの小説のためのノートです。執筆時期に鼎談は行われてました。
世界恐慌が起きた近未来において、ハンターがカリスマとして登場します。
にっちもさっちもいかなくなっちゃった世の中で、解決策をもっているのは、フツーの人間ぢゃなく、狩猟の視点からの情報をもち、野生の目で物事を見る男。
人口問題、食糧問題みたいなことに対して、「昔だったら死んでるような、未熟児を医学で助けたりするから、人口が増える、そのぶんエネルギーが必要になる」とか「飢餓難民の五人家族が歩いているうちに、四歳の弟、八歳の妹、父、母の順に死んでいき、十五歳の少年だけが生き残る、それは最もコストのかからない方法を生態系が選び取るからだ」みたいな論理がバシバシでてくる。すごい。生物界の真実には、誰もかなわない。
根本に、人類がうまれて100万年のあいだ、狩猟生活をしていたのに、この最近1万年にできた農耕社会のなかでの意識変革が人類を堕落させた、っていう出発点があって、適者生存にそぐわない弱者が生き残るような、変な状態はよくないって言い切る。
それに賛同するブレーンが集まり、いつしか、日本を経済的に占領しちゃおうとする国際的な企業集団と戦うことになる。読み始めると、なんかいつも止まんなくなっちゃう、すごい小説。

私は、この適者生存の論理を信仰(?)してて、実生活でもつい口走っちゃって、いろんな人に嫌われてきましたけど。

村上龍は、斎藤令介っていうハンターと出会って、彼をモデルにして小説を書こうと思い立ったらしい。『EV.cafe』の註には、小説の登場人物の相田剣介の着想を得たとあるが、小説でカリスマになるハンターは、鈴原冬二のほうである。ちなみに、スズハラトウジとアイダケンスケっていうのは、エヴァンゲリオンに出てくる登場人物であるが、二人セットってことは偶然ぢゃなく、この小説に由来することは明らかだろうから、私は初めてエヴァンゲリオンを(例によって放送からだいぶ後、かなり遅れて)見たときビックリした。


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