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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

決断力

2022-06-07 18:42:21 | 読んだ本

羽生善治 二〇〇五年 角川oneテーマ21新書
あー、やっと見つけた、これ、やっぱ売ったりせずに仕舞ってあったか、って感じが私としてはする新書。
谷川十七世名人の『構想力』なんかよりは先に読んだはずなんだけど、ウチのなかで行方不明になってた。
今みたら初版だった、二〇〇〇年代の私って意外と新書を読んでたりしたんだなと最近思う。
(それで、いろいろ読んではみたが、あまりたいしたことは書いてないなと思って、その後あまり手を出さなくなった可能性はある。)
当時は忙しかったはずだから、移動の合間に軽いものをと読んでたのかな、これなんてブックカバーが「KIOSK」のだし。
長年放っておいたのは、最初に読んだときの印象があまりなくて、読み返そうという気にはならなかったからだろう。
なんか刺さるものがないんだよね、専門誌のインタビューとかのほうがよっぽどおもしろい気がする。
そうなんだよな、羽生さんのそれまでの発言とか何も知らないひとが読んだら興味もつのかもしれないけど、将棋の世界に親しんできた身だと、あらためて本にしたと言われても、いまさらですか感のようなもの感じてしまう。
もちろん、将棋の話、経験とか勝負にのぞむ考え方とか、升田、大山、米長、谷川といった棋士の話とか、そういうのが主成分なんだけど。
ところどころでねえ、
>将棋だけに限らない。ビジネスや、広く人間関係においても、気持ちの差は大きいのではないだろうか。(略)日頃から実力を磨き、周りからの信用を勝ち取ることは、物事を推し進めるために大切なことだと考えている。(p.48)
とか、
>もちろん、人間は将棋の駒とは違う。しかし、戦略がなければ、企業も将棋も時代の進歩に取り残される点では同じであろう。(p.86)
とか、
>(略)そういう研究や勉強をしない棋士はいない。毎日毎日、情報を集め、研究し、分析して最新の形に精通することに努力するようになった。
>経営者が、毎日「日本経済新聞」を読んで、紙面から「何か役立つことはないだろうか」「新しいヒントになる記事はないだろうか」と隈なく調べるのと非常に似ている。(p.132)
とかって調子で、「はい、サラリーマンのみなさん、将棋の第一人者が、ビジネスにも通ずることを書いてくれたので読みなさーい」みたいな編集・販売側の意図が透けて見えちゃうとこが、気になってしかたない、羽生さん、そんなこじつけはしなくていいから、将棋に特化したこと語ってくださいって、こっちは言いたくなっちゃう。
ちなみに、将棋に勝つためには情報も集中力もといろいろあるんだけど、本書のタイトルは、
>「将棋を指すうえで、一番の決め手になるのは何か?」
>と問われれば、私は、「決断力」と答えるであろう。
>私は、いつも、決断することは本当に難しいと思っている。直感によって指し手を思い浮かべることや、検証のための読みの力も大切であるが、対局中は決断の連続である。その決断力の一つ一つが勝負を決するのである。(p.56)
って一節があるんで、そこらへんからとられたんぢゃないかと思う。
でもねえ、実際の対局で羽生さんが選ぶ指し手って、難しい場面をさらに複雑化させるようなのが目立つんだよねえ、なんか年々その傾向がつよくなってる気さえする。
なんか、こうやるのが最善で俺の勝ち、みたいな決断くだすんぢゃなくて、相手に手を渡す、あんたなんか指してよ、みたいな手を忙しそうな重大な局面で出してくるのが印象的。
それで、局後に、控室の検討ではこうやれば優勢って意見でしたよ、みたいな取材受けると、「そんな簡単なものではないと思うんですよね」みたいな感想をもらす、たぶん本当にそういう考え方でのぞんでるとしか思えない。
そういやあ、いい勝負が続いていたのに、相手がまちがえて、自分が優勢になると羽生さんがため息をつく、って逸話もあったな。
勝敗わからないギリギリのところで、ずっと最善を尽くすべく考えていたいのに、あんたが間違ったから終わっちゃうぢゃないかよ、みたいに聞こえるため息、羽生さんは無意識だけど、ぢゃあ聞こえるようにやろうかなって冗談でインタビューに答えてたような記憶がある。
第一章 勝機は誰にもある
第二章 直感の七割は正しい
第三章 勝負に生かす「集中力」
第四章 「選ぶ」情報、「捨てる」情報
第五章 才能とは、継続できる情熱である


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