many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

江戸バレ句 戀の色直し

2022-06-04 18:31:55 | 読んだ本

渡辺信一郎 二〇〇〇年 集英社新書
ウチのかたすみに長くしまってあった新書をみつけたので、また読み返してみた。
私の持っているのは2004年の3刷だが、例によって当時の自分がなんの目的というか興味をもって、こういうのを読んでたのかはわからない。
バレ句ってのは、「破礼」って書くらしいが、もとは「恋句」といったようで、まあ、よーするに江戸時代の川柳のうちの艶笑句ってやつである。
「蛤は初手赤貝は夜中なり」なんてのは、立川談志家元の落語で聞いたような気もするが、なかなか教養のない現代人の私なんかにはパッと意味がわからないのが多い、そこがいいんだけどね。
本書は特にそういうのの意味を解説するとか、ましてや私のようなものの劣情を挑発しようとかってためのもんぢゃなくて、時代をおって(宝暦・明和・安永・天明とか)、どんな句があるか出典を明らかにしつつ変遷というか流れを調べあげたもの。
たとえば「総句数は5830、そのなかのバレ句数は198句、約3.4%」とかって具合で、私も数えて統計をとるのは嫌いぢゃないが、そこ数えるのかと驚くほどのまじめさである。
当時の川柳の句集ってのは、なにもバレ句だけを集めたもん作ろうとしてたわけぢゃないので、まあいろいろあるなかでのおまけのような位置にバレ句はあったのかもしれない。
句集っていっても大家の作者が詠んだ作品集ってんぢゃなくて、懸賞問題としてひろく募集して何人かの選者が選んだものだったという。
初代川柳というひとが始めたのが宝暦七(1757)年のことらしいが、毎月五日、十五日、二十五日の三回締め切り設定して募集したところ、一回あたりの10日間に二万句が集まったというから大人気イベントだ。
最初のころの募集では、前句という「七・七」の言葉がお題になって、それにくっつける「五・七・五」をつくって応募するんだが、私としてはこの前句のあるやつのほうがおもしろくて好きだ。
たとえば、「好きなことかな好きなことかな」とか、「にぎやかな事にぎやかな事」とかって出題に、まあ普通のおかしさのある川柳をつくればいいんだけど、どこにでもこういうときに色っぽい方向へ物事を考えちゃうやつがいるわけで、それでバレ句が集まっちゃう。
また、川柳というひとは、そこで格調高くないとダメよなんて言わず、「恋のおかしみ」のある作品には高得点を与えるって、イキなとこあったから、その後もそれが伝統になったんぢゃないかと。
コンテンツは以下のとおり。巻末に全句索引がついてるのがいいですね。
零壹 「バレ」の意味について
零貳 川柳作者たちにみる「バレ」の意識
零参 現代人は「バレ」句をどう楽しむか
零肆 川柳評万句合勝句刷の末番句について
零伍 川柳評万句合勝句刷の末番句鑑賞
零陸 五字付け『真似鉄砲』について
零漆 見利評万句合勝句刷の艶句について
零捌 『誹風末摘花』について
零玖 秘稿『最破礼』について
零拾 『誹風神の田艸昌湯樽』の「破礼句一題」について
拾壹 『滑稽発句類題集』の「恋部」の句について
拾貳 『柳の葉末』について
拾参 後期『誹風柳多留』の各篇について(1)
拾肆 後期『誹風柳多留』の各篇について(2)
拾伍 後期『誹風柳多留』の各篇について(3)
拾陸 後期『誹風柳多留』の各篇について(4)
拾漆 後期『誹風柳多留』の各篇について(5)
拾捌 『新編柳多留』の艶句について
拾玖 上方の柳書『狂句梅柳』について
貳拾 幕末の柳書『しげり柳』などについて
貳壹 『誹風可和家内喜』『紅の花』などの「バレ」句絵本について
貳貳 江戸末期の『雑俳吐溜抄』について
貳参 明治初期の『新選狂句川柳五百題』について
貳肆 明治二一年の『新風狂句柳彦生栄』について


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2022年 日本ダービー | トップ | 決断力 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

読んだ本」カテゴリの最新記事