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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

ブライトン・ロック

2024-05-23 18:47:37 | 読んだ本
グレアム・グリーン/丸谷才一訳 昭和四十二年 早川書房 グレアム・グリーン選集6
「ブライトン・ロック」は、丸谷才一さんの『双六で東海道』のなかで「すごいぞ」なんて言ってたんで、読んでみようと思ってたんだが。
たぶん文庫本で新しいのはすぐ買えるはずだったんだけど、なんとなく古本を探してたら、見つけたのがこれ、箱に入った単行本とか置くとこなくて困るから文庫にすりゃいいのにと思いつつ、なんか古さが妙に魅力で買ってしまった、たしか去年の8月ころだ。
ずっと放っておいて(だから、箱入りは出して広げるのも億劫なんだからよしなさいと思った)、読んだの最近。
原題「BRIGHTON ROCK」は1938年の作品、丸谷さんが最初に訳したときは「不良少年」って邦題で刊行したってあとがきに書いてある。
ブライトン・ロックってのは何のことかというと、ブライトンってのはイギリスの地名、サセックスの海岸町で英仏海峡にのぞむ行楽地。
ロックは「糖菓」って漢字あてられてて、「ブライトン糖菓は、棒状のキャンディーで、(略)棒をどこで折っても、端にはかならず『ブライトン』という字が現われる」って註がある。
だからって、なにもお菓子の製法のお話ぢゃなくて、〈少年〉と記述されるピンキーって名前の不良少年が中心の犯罪がらみの話である。
ピンキーは17歳くらいなんだけど、なんか悪党のボス的存在になりたいらしい、17歳ぢゃねえ、仲間うちぢゃちょっとは怖がられたりするかもしれないけど、暗黒街を牛耳ろうなんてのは高望みすぎると思うんだけどねえ。
で、凶悪犯罪を実行するんだけど、自分たちが犯人だって気づいたレストランの同い年くらいのウェートレスに対しては、接近して懐柔しようとする。
一方で、被害者とたまたま事件の直前に知り合いになった女性がいて、検死では自然死ってなったのに疑問をもって、真相を明らかにすべく〈少年〉の周辺を独自に調べてきたりする。
日和りそうな仲間を殺そうとするくらいなら、邪魔者の女性も片づけちゃえばいいのにと思わんこともないが、まあいろいろと苦悩しながら話はややこしいほうへ進んでく。
探偵小説のようなカッコをしながら、正しいとはとか悪とはとかってことを考えさせるのは、たぶんグリーンの探偵小説批判なんぢゃないかってのは、丸谷さんの『梨のつぶて』で読んだ、
>(略)人間悪という重要な事実を、ストーリーのための単なる道具立てとしてしか利用せず、そこから出発してその巨大な課題を究明しようとする文学的努力を、いささかも試みなかったこと(略)(『梨のつぶて』p.249)
ってのが伝統の探偵小説はよくないよ、犯人みつけました、逮捕しました、めでたし、で終わっちゃいけないということかな。
ま、いずれにせよ、私はそんなにおもしろいとまでは思わなかったってのが正直なところです。
なんかねえ、信仰上のパラダイムのようなものにおける罪、みたいなものの感覚がまるでわからないですし。

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