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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

幸福の無数の断片

2018-01-06 17:29:33 | 中沢新一
中沢新一 1992年 河出文庫・文藝コレクション
去年秋に古本屋で手に入れた文庫。
わりと短い評論のようなのの集まり。
初出媒体は、雑誌、新聞とかに加えて、パンフレットとかもあったようで。
最後まで読んでったら、あとがきで、
>こんな原稿を引き受けてしまうなんて、と原稿の書けない夜、自分の人の良さ、断り切れなかった意志の弱さを後悔しながら、ぼくはしばしばこのように考えて、自分をなぐさめることにしてきた。
なんて書いてあって、自らの意思ぢゃなくて、頼まれて書かざるをえなかった文章が含まれていることを打ち明けてはいるんだけど。
ちなみに、「このように考えて」というのは、ロラン・バルトが人の良さからか種々雑多なジャンルのエッセイを書いているんだけど彼はそこに新たな興味の対象を発見していた、ってことで、やってみれば良いことにも出会えるというポジティヴな面の感想。
本書の構成全体は大きく三つの章、「眼のオペラ」「物質の抵抗」「文字の炎上」にわかれてて、だいたい、映画のこと、アートのこと、書評とか文庫の解説みたいなもの。
タイトルの幸福の無数の断片というのは、ジョナス・メカスさんという映画監督?私は無知なんで知らないんだが、との対話のなかで出てくる言葉に由来すると思われる。
「私はほんのわずかなあいだしか持続しないものにだけ、興味があって、それを撮影したいと思うのです」というメカス氏が幸福とは何かについて、
>幸福とは、私の考えでは、生きているあいだに一瞬だけかいま見ることのできる、人生の可能態のことをさしています。じっさいには、持続したものとしては実現されなかったが、そうもありえたという理想的な人生の状態が、かいま見える瞬間、それが幸せなのだと思います。あるいは、話をもっと拡大すると、文明の発達によって失われてしまった、純粋無垢な状態が、破片のようにして出現する時、そういうものをかいま見る瞬間、私の心は幸福感にみたされるのです。(p.66「幸福の無数の断片」)
うーむ、最近そういうの、まったくといっていいほど、見えないなあ。

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