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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

熊を夢見る

2018-03-17 18:51:56 | 中沢新一
中沢新一 2017年 角川書店
去年11月だったかな、買ったの、最近やっと読んだ。読んだらとてもおもしろかった、早く読めばよかった、って近ごろこのパターン多いな。
タイトルに熊がついてるけど、カイエ・ソバージュ読んだばかりの私としては、お、熊、「熊から王へ」、人に贈りものをもたらしてくれる熊、対称性人類学だなと、ピピっときたので、見てすぐ買った。
予想どおりである。いきなり序文で、
>したがって「熊を夢見る」とは、旧石器時代以来のとてつもなく古い人類の思想を表現した言葉である。(略)
>「熊を夢見る」ことができるうちは、人類の心はまだ健全さを保っていると思える。
と来たもんだ。
対称性ってのは、人間と動物とは違うものみたいに考えないことで、なにもかも共通の世界に存在してて互いに行ったり来たりできるような関係なんであるみたいな感じ。
>対称性の思考は、ものごとを分離するのではなく、つながりをつくりだし、全体のつながりの中にものごとを包みこみながら思考する。(略)
>「私」は「私」という個性であると同時に、ヤムイモであり、オポッサムであり、岩であり、宇宙をつくりあげている「すべてのもの」である、というオーストラリア先住民の考え方は、こうした心的構造から生まれてくる。(p.112-113「対称性の思考としてのアニミズム」)
だなんて、とても美しくて魅力的なものの考え方だと思う。
>これにたいして現代人に大きな影響をもっている科学的思考では、自然を人間から分離して、客観的な対象物としてとらえる「非対称性の思考」を発達させているので、地震のような自然の現象と人間的な世界の現象とを、別々に考える習慣がついてしまっている。そのために、自然に起こった出来事とそれがために人間に引き起こされた出来事を、一つの統一的な視点から思考するということができずに、自然のことは自然のこと、人間のことは人間の問題として、分離して処理される傾向が強い。(p.134-135「プレート上の神話的思考」)
って言ってるところでは、地震などの災害の後で、それまでに築いた富を失った人がいる一方で、復興がらみでにわか成金が出てくるように、社会に大規模な資本の流動化が発生するようなことを、人間の世界の経済も自然の一部として含まれているものだという統一的な視点で考えようという例が示されている。
いいなあ、対称性の思考、去年出会ったなかでいちばん刺激的なものの見方だ。
似たようなもので、アナロジーという方法も紹介されている。
>アナロジーは事物を分離する「別化性能」よりも、異なる事物に共通性を見出す「類化性能」によって、世界を分類する思考方法である。外見が異なってても、深層に似ているところがあれば、アナロジーはそこに「同じもの」がある、と認識するのである。(p.184-185)
ってことで、さらに、
>近代的な思考では、別化性能を用いて分離した物事の間に、論理的な「因果関係」を見出すことが、本質に迫る唯一の方法であると、たいした根拠もないのにそう思い込まれている。(略)現実の世界を生み出すおおもとの潜在空間において、力や事物がどのように結び合っているかを、近代が重視するこの方法では、あきらかにすることができない。(p.188「禅竹」)
と非対称性な、科学的な、近代的な思考をズタッとやっつけてるのが気持ちいい。
そこで大事なのは、直感だったりする、いいなあ、そういうの、私も長年の勉強やら宮仕えやらで失ってしまったと思えるそういうの、取り戻したい。
コンテンツは以下のとおり。
・序 熊を夢見る
・私の収穫
・空間のポエティクス
・サーカス/動物
 ・堂々たる「貧」―ジンガロ『バトゥータ』
 ・猿まわしの哲学のために
 ・人は熊を夢見る
 ・クマよりもたらされしもの―根源をたどる足跡をめぐって
・対称性の思考としてのアニミズム
・神話と構造
 ・「ふゆまつり」の神々
 ・プレート上の神話的思考―コルネリウス・アウエハント『鯰絵』
・東京どんぶらこ
 ・お金のかからない高級さ―世田谷区山下
 ・けなげな町―世田谷区代田橋
 ・異界との境界地帯―新宿区四谷三丁目
・日本の芸能
 ・菩薩としての遊女
 ・禅竹―中世的思考の花
 ・離脱の芸術
 ・吉本の考古学
・書物のオデッセイ
 ・原点の一冊―山中共古『甲斐の落葉』
 ・小さな、過激な本―柳田國男『遠野物語』
 ・網野さんがくれた本―石母田正・武者小路穣『物語による日本の歴史』
 ・寺山修司の詩的限界革命―『寺山修司著作集』
 ・山国の詩的人生
 ・ダンテのトポロジー

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