うたたね日記

アニヲタ管理人の日常を囁いております。

銀板の妖精・・・?

2015年12月15日 18時30分33秒 | ノベルズ
※アスカガSSです。設定は『H&B』の時と同じ高校生設定です。

<キーンコーンカーンコーン…>
朝の予鈴が鳴ると、昇降口の生徒たちの動きも忙しくなる。どんなに混雑していようと、その中でも絶対にその姿を見つけることができる、少女の影。
「カガリ、おはよう。」
「あ、アスラン。おはよう。…珍しいな、お前がこんなギリギリなんて」
驚いてその透き通った金眼を丸くする彼女と、少しでも同じ時間を共有するために、わざと遅れてきていることは、今はまだ彼女には内緒だ。
ふと覗けば、彼女がいつものカバン以外に、何やら肩にかけて背負っているものを発見する。
ブーツのような靴に、長いブレードが付いている―――明らかにスケートシューズだ。
「カガリ、君ってスケートやっていたっけ?」
一応ストーカー呼ばわりされない程度に彼女の行動はチェック済み(※前回、彼女を見逃してしまったことで、危険な目に合わせてしまったため、用心も兼ねて―――というのはアスランの弁)だが、まだ自分の知らない彼女が現れて、ちょっとドキドキする。
カガリは言いにくそうに答えた。
「うん・・・まぁ、また助っ人頼まれてな。」
このエターナル学園は良家の子女が通うことで有名だ。無論普通の高校らしく部活動も盛んだが、何せ「おっとり系のお嬢様」が多い女子の中にあって、カガリのずば抜けた運動能力は羨望の嵐だ。バスケにバレーといった球技全般はおろか、陸上競技でも女子の中では右に出る者はいない。
ついては、その運動能力を買われて各部活から、大会に合わせていつも助っ人を頼まれる。なので、カガリは部活に所属していないものの、常にどこかの運動部に参加している状態だ。
その為、付き合い始めて間もなく、一緒に下校するために、彼女の部活終了(あるいは彼女が図書委員の仕事終了時)まで図書室で待機しているアスランだが、問題は、彼女にあこがれる女子生徒、特に後輩が黄色い歓声ととともに取り巻いているため、なかなか二人きりになる時間が無く、アスランの悩みのタネにもなっている。
まぁ、彼女が輝いている姿を見るのは大好きだが・・・。
「一応冬場はスケート部が本格的に試合も始まるんで、参加をせがまれているんだよ。」
カガリの眉が下がり気味に苦笑する。
エターナル学園だけあって、普通の高校にはない『ポロ』や『スケート』等、特別の施設利用もかかる部活もある。
カガリがスケート部の助っ人とは、これは今まで入らなかった情報だった。
「カガリはスケートもできるんだ。凄いな。」
改めて感嘆を見せれば、彼女は「う~~ん・・・」と頭をかしげる。
「いや、な…まぁできないことはないんだが、その…あのユニフォームを着ると、体の線が見えるのは、どうにも…な…」
言葉を濁す彼女。
確かに、銀板で踊るフィギアスケートの衣装は、空気抵抗を減らすために、体にピチッとあった、衣装で滑走するが。

銀板に、金糸をなびかせ、華麗に演技する彼女―――

スタイルもいい彼女が滑れば、皆がその虜になることは想像に難くない。
それは彼氏としては、変な輩に注目されないよう、絶対に見守らなければならない。

「カガリ、試合っていつなんだ?」
「え!?お前、まさか見に来るつもりか!?絶対やめろよ!」
いきなり彼女の機嫌が悪天候に向かい始めた。
「いや、出来れば見ておきたいと思ったんだが…ダメか?」
「絶対に駄目だ!!」
鼻息荒く言われてしまっては、取り付く島もない。

まぁいいさ。情報はいくらでも手に入れられる。

***

スケート部の試合があるのは金曜日の放課後と聞いた。
会場は『アプリリウス競技場』―――フィギアスケートをはじめ、いくつ特設リンクを持つ、かなり規模の大きな競技場だ。
アスランはこっそりと会場に忍び込む。
既に試合は始まっており、銀板の上には、高校生スケーターが華麗な演技を見せていた。
カガリなら一体どんな演技を見せてくれるだろう・・・
カガリなら・・・

と、ふと気になった。
電光掲示板に、出場者の名前が表示されているのだが―――カガリの名前が「ない」
まさか、もう終わってしまった、とか?
それでもプログラムには、すべての出場者が名前を馳せているが、どこを見てもカガリの名前がない。
まさか、姿を見られたくなくって、わざと仮名で出場している・・・とか?
すると、遠くから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
よく見れば、エターナル学園の生徒だ。渡りに船、とばかりに焦って尋ねてみる。
「すまない、今日ここにカガリ・ユラ・アスハが出場していると、聴いたんだが・・・」
尋ねられた女生徒は、一瞬顔を赤くしつつも、あわてて返事をした。
「え、あ、アスハさん!?・・・うちは助っ人頼んでいないけど・・・」
どういうことだ?確かにカガリは助っ人をしているといった。彼女に限って、どんな隠し事であっても、嘘をつくことだけはない。
「それじゃぁ、一体どこへ・・・」
視線を落とし、考えるアスランに、別の女生徒が言った。
「あ!きっとあっちだと思いますよ。」
「『あっち』?」
「えぇ。第2リンクの方・・・」
「そうか、ありがとう!」
複数のリンクがあるということは、会場はひとつとは限らない。あわててアスランは第2会場に駆け込んだ、そこで見に飛び込んできたのは

「・・・『スピードスケート』・・・?」

出場選手はみな、黒の全身タイツのような競技用ウェアを着用し、冷たい風を切るように目の前を走り抜けていく。

そこに

「キャァ~~アスハ先輩かっこいい~~!!」
黄色い歓声の視線の先を見れば、ダントツ一位で走り込んでいく、見慣れた背格好の黒い弾丸。
(―――「あのユニフォームを着ると、体の線が見えるのは、どうにも…な…」)
そうか、確かに体の線はよく見える。
しかも、彼女の持っていたスケートシューズは、ブレードの先がギザギザになっておらず、異常に長く感じたのは、フィギア用のシューズではなく、スピード用のスケートシューズだったのだ。
「く…あはは」
俺としたことが、彼女へ向けられる視線を恐れるあまり、簡単なことに勘違いをしてしまったとは。

「おー!勝ったぞー!」
頭部のウェアを外せば、金髪を疾風に靡かせ、笑顔で部員の元に戻ってくるカガリ。
後輩女子の黄色い声に応える彼女は、とても輝いて見える。
それを見て、なんだかとっても安心する。
彼女は、どこにいても、どんな姿でも、やっぱり俺の妖精に変わりはないのだから。

・・・Fin.

***

すいません。・・・かもした家は冬になると、突発的にフィギアスケートを見る習慣があるのですが、かもした父がフィギアとスピード(&ホッケー)用のシューズの見分けがつかなくて、毎年何故か説明し直すということがあり、先日もGPファイナル見ながら説教した(苦笑)ため、なんだかその時、もわわんとストーリーが浮かんだため、簡単ですがSS書いてみましたv

またネタ下さい。父上<(_ _)>


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