亀の川登

難聴に苦しむ男の日記帳。

古本屋さんで

2019-07-15 | 日記・エッセイ・コラム
ある謡本が欲しくて古書店を訪れた。
ずらりと謡本が並んでいた。
うず高く積まれた謡本を上から順にめくって探って見た。何十冊も積まれた謡本はどれも同じ物だった。沢山あってもその種類はそんなにない。
どれもすでに持っているものばかり。
あっちこっちのたなを探していると、突然、ドサッという大きな音がした。
もしかして、何処かの棚に手が当たって展示してあった本が落ちたのかと周りを見回したがそれらしきものはない。
 「奥からじいさんが出て来た。いやいや、奥でテレビを見ていて気が付かなんだ」。
 今の大きな音はじいさんがあわてて出て来たときに何かに当たった音だったらしい。
「いや~ね。最近はさっぱり売れんようになってね、来年辺り店を閉めようかと思っていたんや。謡本は売れんがやけど、時々お経の本がでているんがや」。
見ると、謡本に負けない程確り並んでいるのはお経の本だった。お経の本なんてそんなに種類がある訳ではないのに、時々買いに来る人がいるという。
仏教が廃れて、年々お寺を訪れる人が少なくなっていると言うのに経本を買いに来る人がいるんだ。「どうや、これいらんかね。」と薦められたものは、見台だった。欲しいと思っていたが今にも壊れそうな見台だった。「1万円でつくらせたが、誰も買って行ってくれんのや。5千円にしとくから買わんかね。」とてもそれだけの値打ちがあると思えん。しぶっていると、4千円でいい。昔は買ってくれた人がいたけど、今は全然売れんがんや。」とぼやいていた。この本屋さんは、昔はちゃんとした本屋で本を買いに来たこともある。
今は謡本の他に、仏教関係の本が並んで、その外に子供向けの本が少しばかり並んでいた。「何て本が欲しいんや。」「采女。」ああ、それなら一冊だけあったわ。」とだして来た。どれもこれも汚い本ばかり。だがこの本だけは新品みたいに綺麗だった。「いくらですか?」「7百円でどうや。」値段も適当に決めているらしい。高いと思うが、新品だと一冊2千円から3千円するらしい。書き込みもないようだし、本も殆ど新品のようなのでマーいいか。
「買って行きます。というと、緑色の無地の袋に入れてくれた。店の名もどこにも入っていない。どこかからもらってきたような粗末な紙袋だった。
謡のレコードがうず高く積まれていた。「さっぱり売れんがやけど、買ってくれんかね。」買ってやりたいが、それを再生するプレーヤーがない。店にいる間誰も入ってこない。おいぼれ爺さん1人だけの店だ。
 
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