「ここに来るのはじいちゃんばあちゃんばかりやね」
「若いもんは百万ボルトやヤマダ電気に行くんや」
町の電気屋さんからもらったダイレクトメールのプレゼント券を持ってトイレットペーパーのはいった大きな袋と毎度おなじみのビンゴ券をもらって、まずはビンゴ、壁に張り出された表で数字合わせ。
いつも当たったことないビンゴがあたってテッシュ1箱。
会場の隅っこに並べられているだけの電化製品。
昔は会場一杯に電化製品が並んでいたが随分淋しくなった。
今や町の電気屋さんに行っても殆ど電化製品を置いてない。
おいてあるのは机とイス。
それに今は何々電気とは書いてなく、ハイカラなカタカナ文字ばかり。
面から見ていると何屋さんかわからない。
店内に電化製品を並べていてはとても量販店に太刀打ちできない。
お店の名前も何とか電気ではイメージが悪くてお客様を呼べないのだろう。
客が「ヤマダ電気でこれだけで売ってたよ」いうとそれに合わせなければ買ってくれないという。かといってサービスを悪くするわけにもいかない。量販店と町の電気屋さんの違いは、量販店さんはクーラーが故障だというと主張料を取られる。町の電気屋さんは何度呼んでもタダ。
だから物覚えの悪いじいちゃんばあちゃんには重宝がられる。
何かナガーイ マットを敷いて何かやっている。
何だろうと近くに寄って見ると、「おじさんちょっとやってみるかね」と誘われて、椅子に座らせて、「片足で立てれるかね」
なんとか立てた。「こんどはこちら」
座るとかくんとくる。さっきのは40㎝、今度は30㎝だそう。一生懸命頑張ったけど立てなかった。
「おじさん40代や。今度はこのマットの上を2歩歩いてください。先ず私が見本を見せますからこの通りやってください」
「70代だったらこの線まで」
そうとう距離がある。歩けるかな。
思い切って短い足を伸ばして歩いた。一寸距離があり過ぎてひっくり返った。
「もう一度やって見てください」
今度は何とか成功。
「230ですね。70代はこんなもんですよ」
どうやら年相応らしい。
ご苦労様ですと小さなコップに牛乳が出された。
森永乳業の宣伝だった。
単独では金がかかり過ぎるのでいくつかの業者さんと共催でやっているらしい。
50型テレビが15万円ちょっとだった。
今ある50型テレビは75万円だした。随分安くなったものだ。
「今あるテレビもう寿命だから新しいのを買おう。私がお金出すから」
「いいじゃないか、まだ写っているのだから、勿体ない」
今買うと消費税がかからないし、それに電気を喰わないし」
何も買わないつもりだったがとんだ出費だった。