いつもお邪魔しているお寺さんで時々オレンジカフェという行事をやっているので一度向学の為にお邪魔して見ようと行って来た。
法話会でないので広い御御堂でテーブルがいっぱい並んでいる。気の小さい私は一瞬迷った。
大丈夫なのだろうか、何か恐いことが起こるのでは?帰ろうか・・・。
中程の席で住職さんが手招きして「どうぞこちらの席へ・・・」。
帰る訳にはいかなくなった。
耳の悪い私は、こんな騒々しい場所は苦手だ。話し掛けられたらどうしよう。相手の方が何を言っているのかさっぱり分からない。
それでも分かったようなふりして、頷いている。〝わあ、これは偉い所に来てしまった。もしこのままの状態がつづいたらどうしよう。
やがて、先生なる人がマイクを手にして喋り出した。
「これから、皆さんに絵を描いてもらいます。」
エエッ。これは偉いことになったぞ、絵の苦手な私は、またも、背筋が凍る思いがした。
「絵といっても、猫や犬を書くのではありません。字を書くのでもありません。形のある物は書いてはダメです。」
一枚の紙とクレヨンが渡された。「みなさ~ん。これ何だかわかりますか。使ったことある人。」
「青いクレヨンを持ってください。はい、この紙の真ん中に、下から上に向かってスウーっとこんな調子で線を一本引いてください。」
「書けましたか。はいそしたら、次に自分の一番嫌いな色を手に取って見てください。同じように線を書いてください。何本でもよろしいですよ。」
何本でもいいと言うのは一番困るのだが。
周りの人に合わせて、スウーっ、スウーっと、話をするのではないから、苦にならないのだが。簡単なことなのだがこれがまた難しい。指定されないっというのがまた大変、どうやって描けばいいのかさっぱり分からない。とにかく周りの人がやっているようにするしかない。
私のすぐ隣で、住職さんが、「私は黒が嫌いだから。黒で行きます。黒はいろんな色が混じった色です。人間の心と同じですね。」なんて言って、バンバン引きまくっている。黒は嫌な色だと言うものの、引いていると、意外と美しい物です。
「今度は、好きな色を、ジグザグ、ジグザグと書いてください。ほか色の線と重なるように書いてください。」
そのジグザグ、ジグザグの意味がまたわからない。またも周りの人のを見て真似して書いて行く。
「皆さん描けましたか。そしたらね、今度は、指を使って、線が重なったところをこうやってこすってください。」
わけがわからぬままやって見る。今度は、ただこするだけだから簡単だ。のびるクレヨンだからどんだけでも広がって模様のようなものが出来る。
「ハイ、次は線で囲まれたところを好きな色で塗りつぶしてください。色はどんだけ重ねてもよろしいですよ。」
「そして最後は割り箸です。「これで、色をめくるようにこすってください。そしたら、下になっていた色が浮き出てきますよ。やって見てください。」
やってみたが、どうしても色がめくれない。皆さん、猫が引っ掻いたような線が上手く浮き出ている。
どうしたらこんなことが出来るのだろう。不思議で仕方ないかった。後になって分かったことだが。色の塗り重ねの量がたりなかったのだ。
貧乏性だから、おもいきったかとができないんだ。
「出来ましたが。出来た人の絵には、上から魔法の粉をかけます。」と言って白い粉の入った瓶が渡される。
「これ何の粉か分かりますか。臭いを嗅いでください。」 鼻の確かでない私は微かに匂うが何なのか分かりません。
「ハイ、これは皆さんお世話になった、テンカフです。これでこすると、つやが出ますよ。」
何だかよく分からないけど言われてみればそうかもしれない。
「ハイ、では皆さんの作品を一つ一つ見てまいります。」そーっと先生だけが見て評価するのかと思ったら。そうではなかった。参加者全員の作品を高々と持ち上げて、、、。
「ハイ、〇〇さんの作品です。どう思いますか。中々おもしろいいとは思いませんか。」と言って褒めまくります。
そこで私は、初めて知った。訳の分からない絵だが、一人一人の性格がよくでている。
私の作品は・・・
でした。
「大人しい作品ですね。」と言われた。そうよく当たっています。
自分の性格がそのまま絵になって現れます。
訳のわからない、授業だったけど、何か一つ貴重な体験をさせてもらったような気がします。
オレンジカフェとは、どうやら、認知症のことらしいとあとでわかかった。
道理で訳の分からないことをさせられるわけだ。
認知症の方が面白い絵を描けるのかもしれない。
「最後に、百円ショップで額縁を買ってきて中に入れて飾っておきましょう。」
額縁に入れた物を見せてくれた。中々様になって面白い。
コウちゃんの手記。
ふと足元を見たら犬が纏わりつくようにしていた。うっかり踏みつけようなら大変なことになるところだった。
さっきまで、ケージでキャンキャン吠えまくっていたのにいつの間に。
犬はまとわりつくようにしてくるのは人間と仲良くしたいためかと、思っていた。しかしそうではないことを犬の訓練士から教わった。
犬は私を自分の支配下にしたいだけ。「どうだ、俺様の言うことを聞くか。」なんてね。
下手に手を出したら大変なことになる。