あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖ふる 額田王
紫草の にほへる妹を 難くあらば 人妻ゆゑに 我恋ひめやも 大海人皇子(天武天皇)
万葉集にある額田王と大海人皇子の相聞歌、近江の大津に都が遷された翌年(天智7年)、宮廷行事として蒲生野で行なわれた遊猟を舞台にして詠まれた歌とされている。
紫草(むらさき)の花が、わが家の庭に今年も咲いた。絶滅危惧品種にランクされている純正種か、それとも近縁種か、おそらく後者と思われる苗を、一昨年に愛好家から貰った。苗は二鉢に分け場所を変えて置いた。二鉢とも数日前から咲き始めた。
可憐な白い花が好きだ。絶滅と戦っているようで凛々しさすら感じる。
たたずみ、鉢植えの紫草をいくら眺めても、宮廷人たちが盛装して遊猟したであろう華やかな光景が目に浮かんでこない。ロマンスに慕うことができないのは、歌があまりにも技巧的なのか・・・ きっと鉢植えのせいだと思う。
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