いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

円高と外国為替市場・・・外為には取引所はありません。テレビが誤解を生みます。

2011年08月22日 14時02分24秒 | 日記

しばらく東京を離れておりました。戻って来ましたので、
また、どうぞ、よろしくお願いします。

さて、円高です。
連日の円高で、テレビのニュースでも、毎日大きく取り
上げられています。その映像で、非常にミスリーディング
というか、視聴者を間違わせやすいものが使われます。
今回は、円高の本筋の話ではなく、円高のニュースの映
像の話を書きます。

知っている人にとってはあまりに当たり前すぎて、気に
もしないけれど、知らない人は何にも知らずに大変な誤解を
しているという話があります。
通貨を取り引きする外国為替市場がその例です。

 ある記者が香港に行き、外国為替市場を取材して、原
稿を書きました。
 それを読んだ関係者が「君は、香港に行ったけれど、外
国為替市場を取材しなかっただろう」と怒るのです。
 原稿を書いた記者は、外国為替市場の原稿を出したわけ
ですから、いったい何を怒られているのか分からず、「え?
どうしてですか。その原稿は外為市場を取材して書いた原
稿ですが」と答えました。
 すると関係者は「だけど君、君の原稿には、香港の外為
市場の様子が全然出てこないじゃないか。香港のどんな場
所にあるとか、大きいビルだとか、どんな人が働いている
とか、そんな話が全然書いてないじゃないか」と言うので
す。
 ここで、記者は、はっと気がつきました。
 「あの・・・、外為市場というのは、取引所とか、取り
引きする建物はありません。なにか、勘違いされていませ
んでしょうか?」
 すると関係者は、びっくり仰天して「え、君は何を言っ
ているんだ。テレビのニュースで、いつも、テーブルを囲
んで取り引きをする様子が出ているじゃないか。あれは取
引所じゃないのか?」と言いました。

 そうなんです。大きなテーブルを囲んで何人かの人間が
座り、何かを書きつけたメモをテーブルの上で投げて滑ら
せ、忙しそうにやりとりしている映像が、テレビの円高の
映像で必ず流れます。
 この関係者は、それが外為の取引所だと思っていたんで
すね。
 実は、よく見るこの映像は、外国為替を専門に扱う取引
業者の社内を映したものです。
 あくまでも、取引業者の社内の様子であって、外国為替
の取引所なんかではありません。

 これは、私が実際に見た実話です。
 でも、同じような笑い話は、多いのです 

 外国為替の取引所というものは、本当に存在しないので
す。日本にも、ニューヨークにも、ロンドンにも、香港にも、
どこにも、そんなものはありません。

では、どうやって取り引きするのでしょう。

取り引きをする人(ディーラーなりトレーダーなりと言
います)同士が電話で取り引きするのです。正確にいえば、
かつては電話も使っていましたが、いまは、パソコンとネ
ットです。
ディーラーが、自分の席にあるパソコンとネットを使い、
世界各国のディーラーとやりとりをするのです。
 ディーラーのパソコンの画面を見ていると、
 取り引きを申し込んできた相手方から、
 「HI, PAL    HOW ARE YOU DOING?」
  というようなメールが画面に出ます。
  「やあ、どうしてる?」
 というような意味です。
 これを見て、ドルを76円60銭で買いたいんだけれど、
どう?というような返事を出し、取り引きが始まるわけで
す。
 当然、相手の顔なんか、なにも見えません。

 テレビによっては、円高のニュースをやるときに、そう
いうパソコンがずらっと並んでいる大手銀行の部屋(ディ
ーリング・ルーム)の映像を流すときもあります。実態と
しては、むしろ、こちらのほうが、外為市場の実際に近い
と思います。
大手銀行の外為扱い高は圧倒的に多いのです。いまのテ
レビの映像でよく見る外為専門業者の扱い高とは、ケタが
三つも四つも違うのではないでしょうか。

ただ、大きなテーブルを囲んでやりとりする外為専門業
者の様子のほうが、いかにも、「外為市場」というイメー
ジがあるのです。
大手銀行のディーリング・ルームは、数多くのパソコン
が並んでいて、その前に大勢の人がいるという映像になる
ので、ふつうの大手企業というようなイメージになってしま
うのですね。
だから、テレビ局は、テーブルを囲んでやりとりする専
門業者の映像を流したがるのです。

 銀行のディーリング・ルームの映像を映しても、それだけ
ではなんのことかわかりません。
 そこで、テーブルを囲む専門業者の映像をつい流したく
なるのですが、しかし、その映像は、外国為替市場に、取引
所があるかのような誤解を与えてしまうのです。

 株には東京証券取引所やニューヨーク証券取引所のよ
うな取引所があります。
 しかし、外国為替は、そういう取引所がないのです。
 外国為替市場というのは、パソコンとネット上で存在す
る市場です。





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