いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

安倍首相が賃上げを要請しました・・・画期的なことです。時代も変わりました。

2013年02月19日 18時14分30秒 | 日記

 先週のことですが、安部首相が、経団連の米倉会長ら財
界トップに会い、サラリーマンの給与の引き上げを要請し
ました。

 自民党の首相が、賃上げを求めたわけで、これは、少し
前なら、ありえないことです。
 非常にいいことで、素晴らしいと思いますが、しかし、
時代は変わったものです。

 日本では、戦後長い間、経済学はマルクス経済学の強い
影響下にありました。
 有力な国立大学の経済学部は、大内兵衛氏、大内力氏ら、
マルクス経済学の教授が力を持っていました。

 マルクス経済学のポイントは、次のようなものです。
 サラリーマンという名の労働者は、1日に8時間なり
9時間なり働きます。マルクス経済学では、労働者は、
労働力という商品を企業に売るーーととらえます。
働いた時間だけ、労働者は、モノを生産します。企業は
、そうしたモノを販売します。
企業にとっては、販売価格と、生産コストの差額が利
益(利潤)となります。
さて、そこで、企業は、労働者が働いた分だけを、ち
ゃんと給与として還元しているのかーーというのが
ポイントです。
労働者が働いた分をすべて給与として還元すればい
いのですが、そうはいかない。企業は、働いて作った
モノを販売し、その代金の何割かを、次の投資にあて、
あるいは、将来必要なときに備えて準備金として積み
立てます。
労働者にとっては、働いた分のすべてが給与として戻
ってくるのではなく、戻ってくるのは、働いた分の何
割かにしかすぎません。残りは、企業が、投資に使っ
たり、準備金として積み立てたりするわけです。
マルクス経済学は、企業が労働者に還元せずに、企業
の中に積み立てた資金を、「搾取」とするのです。
これが、マルクス経済学における「搾取」の概念です。

この「搾取」の部分は本来、労働者のものだから、搾
取したものは労働者に返せーーというのが、労働運動の
原動力です。

 戦後の日本で、社会党は、はっきりそういう考えを持っ
ていましたし、労働組合も、そういう考えに立って、毎年、
春闘をして、賃上げを要求してきたのです。
 春闘というのは、そういうことでした。

 もちろん、企業は、違う論理を組み立てます。
 働いた分をすべて労働者に還元すれば、投資をはじめと
する次の企業行動は成り立ちません。企業の手元にも余裕
資金が必要です。
 それを搾取というから、話がおかしくなる。
 そもそも、生産されたモノの価値には、労働者の働いた
分以外にも、経営手腕とか投資計画とか、経営者の努力や
能力も含まれている。
 とまあ、そういう理論です。
 それは、いわゆる近代経済学の理論です。
 政治的にいえば、自民党です。

 ところが、今回は、自民党の総裁である安倍首相が、企
業経営者に対し、準備金を働く人に還元して、所得を上げ
てほしいと要請したのです。
 そうやって、所得が増えてこそ、個人消費が活発になり、
日本経済が元気になるからです。

 しかし、本来なら、これは、かつての社会党の流れを引
く民主党の野田首相が言うべきことだったのです。
 それを、自民党の安倍首相が言うというのは、驚くべき
ことでした。
 
           (続く)



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