東日本巨大地震は、状況が、大津波と福島原発のふ
たつの側面に分かれてしまいました。
私は神戸生まれで、1995年の阪神大震災で実家
が直撃されました。ですから、大津波で被災した方は、
どんなにか大変だろうと思います。
しかし、今回は、福島原発のことを書きます。大津
波のことは、阪神大震災と対比しながら、別途、書
きたいと思います。
世界の関心は、当初、津波に向いていましたが、い
まや完全に、福島原発に移りました。
地震が起きたのは11日の金曜日の午後2時46分
です。
そして、福島第一原発は、一号機がその日のうちに
コントロールを失います。12日には、緊急事態と
して海水を注入して冷やそうとしましたが、うまく
いかず、12日の午後に水素爆発を起こしてしまい
ました。
この水素爆発の映像は、衝撃的でした。
なにしろ、原発で爆発が起き、煙を吹き上げるなど、
日本の原発事故では考えられない事態です。これま
では、冷却水がちょっと漏れたといっては大騒ぎし
ていたのです。爆発が起きてみると、これまでちょ
っとした水もれで騒いでいたのは、いったいなんだ
ったんだろうという思いです。
それでもまた、12日の土曜日、13日の日曜日は、
関心は、大津波にありました。大津波の映像が次々
にテレビに映り、それもまた衝撃的だったからです。
海外の友人、とくにタイにいるF君と話をしていて、
海外の関心が津波から原発に移ってきたのは、いつごろ
からだろうということになりました。
意見が一致したのは、14日の月曜日、3号機で水素
爆発があり、建屋の天井部分を吹き飛ばしたときが大きな
転機になったのではないか、というものです。
12日の1号機の水素爆発は一瞬、煙を上げただけ
でしたが、14日の3号機の爆発は、建屋の天井部
分を破壊したため、映像でも、壊れた部分がばらば
らと飛び散るのが見えました。しかも、煙がかなり
大きく上がりました。
F君によると、タイでも、テレビでこの映像が流
され、新聞でもこの写真が大きく掲載されたそうで
す。
そして、何も知らないでこの映像と写真を見ると、
爆発の煙がきのこ雲に見え、ほとんど核爆発だと
思われた、というのです。
日本では、そのあと、会見で、水素爆発であるこ
とがたびたび説明されましたが、海外のメディア向
けにはそこまで詳しく説明するのは難しいでしょう。
だから、海外のメディアは、14日の月曜日、3
号機の爆発をもって、福島原発は核爆発に近い爆発
を起こしたのではないかーーとの疑いを持って、報
道し始めたのです。
それだけにはとどまりません。
14日の月曜日の夜には、2号機の燃料棒が全部
露出します。これは前回のブログで書いたことです。
そして、2号機は結局、翌朝の15日の水曜日には、
同じように水素爆発をし、今度は建屋ではなく、燃
料棒の格納構造体の一部である圧力抑制室(サプレ
ッションプール)を損傷してしまいます。
さらにまた、15日には、点検で停止していた4
号機まで爆発します。
4号機は夜には鎮火しますが、16日には、同じ
4号機が再度、出火します。
なんのことはない。
朝起きると、必ずなにか新しい事故が起きている
のです。
毎朝、起きてみたら、福島原発は、またなにか悪
いことが起きている。
日本に対する海外の目が厳しくなるのは当然でし
ょう。
16日の水曜日には、東京のフランス大使館が日
本にいるフランス人に出国を促しました。
来日していたイタリアオペラは、日本にはいられ
ないというわけで、帰国しました。
ドイツのメルケル首相は、日本は原発事故の情報
を開示しないと、不満をもらしました。
この地震で、被災者をはじめとする日本人の取っ
た行動が、日本人の冷静さ、礼儀正しさ、我慢強さ
を示すものとして、海外で称賛されました。
とくに、この事態に至って、商店の略奪がまった
くないというのは驚きの目で受け止めれており、C
NNは、東北に入ったアメリカ人記者がワシントン
のキャスターから「略奪はどうですか?」と聞かれ、
「それがないのです」と答えました。キャスターは
意味が分からなかったようで、再度聞いたのですが、
現地のアメリカ人記者は「略奪というものはまった
くありません」とはっきり答えました。
ニューヨークに住む私の友人も、タクシーのドラ
イバーから、やはりそのことを称賛されたのだそうです。
しかし、そうした称賛も、15日、16日には、
原発事故に対する不手際への不満にとってかわられ
てきたようです。
福島原発の事故への対応は、国際社会における日
本の信用が試されることになりました。
ここで対応を誤ると、日本の信用は、地に落ちま
す。
日本は信用されなくなるでしょう。
津波のときは「がんばれ日本」といってエールを
送ってくれていた国際社会が、いま、原発への対応
をめぐり、「日本は何をやっているんだ」という不信
感を持ち始めています。
いまこそ、日本が踏ん張るときです。
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