いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

朝日の「素粒子」の質が落ちました・・・荒っぽくなり、これではツイッターの捨て台詞です。

2015年02月10日 21時40分02秒 | 日記

少し体調を崩し、引きこもっておりました。
 その間、新聞は読んでいました。読んでいて、朝日の夕刊のコラム
「素粒子」が、荒っぽくなったなあということを、つくづく感じました。

「素粒子」というのは、朝日の夕刊の題字下にある小さなコラムです。朝日
といえば、朝刊の天声人語が有名ですが、夕刊の素粒子も同じような伝統の
コラムです。
 素粒子は、1つのテーマを4行で書きます。それを3つ並べます。
 これを毎日続けるのは、大変です。
 テーマを毎日3つ選び、しかも、1つのテーマをわずか4行で書くのです。
筆者にかかるプレッシャーは相当なものだと思います。

私は、中学生のころ、「素粒子」があることに気が付きました。
非常に短い文章で、 日々のニュースに鋭く切り込むので、感心して読んで
いました。
 短いけれど、その文章が素晴らしかった。
 毎日、このコラムを楽しみにしていました。

 ところが、最近、そのコラムの調子がおかしい。
 おかしいというより、無茶苦茶だと思います。

例をあげましょう。
2月9日の月曜日の夕刊です。もちろん2015年です。
「自衛隊は出したい。写真家は出したくない。それが自己責任であっても。
国に任せて余計なことはするなの思想」
新潟のカメラマンが、シリアに入ろうとして、外務省に止められ、それで
もなお行こうとして、パスポートの返還を求められた一件を取り上げたも
のです。
この一件は、案の定、朝日が一番大きく取り上げ、「表現の自由、報道の自
由」を制限するのかという視点で記事を書いていました。あるいはまた、
朝日は、「憲法には移動の自由が定めてある」という書き方もしていまし
た。

記者であれば、だれしも、この一件は、考えさせられます。
表現の自由、移動の自由というものは、制限されないのがいいに決まって
います。

しかし、いまシリアに入ると、「イスラム国」につかまって、また、身代金
や捕虜との交換など、交渉の材料にされる可能性が高いことは、もう、間
違いありません。

記者であれば、同じ立場に置かれたら、だれだって、悩んでしまうでしょ
う。
簡単に答えの出る話ではないと思います。

それを、「素粒子」は、
「自衛隊は出したい。写真家は出したくない」
と、一方的に決めつけて書いてしまう。
しかも、あろうことか、自衛隊を絡めている。

 後藤健二さんが犠牲になった後、国会での質疑で、野党から、自衛隊を出すこ
とはあるのかという質問が出ました。これに対し、安倍首相は、イスラム
国を攻撃するために自衛隊を出すことはありませんと明言しています。ま
た、邦人警護という意味でも、否定的な言い方をしています。イスラム国
との関係で、さすがの安倍首相も、自衛隊の派遣には、どんな形にせよ、
今回は一貫して否定的な言い方を維持していました。
 それなのに、「素粒子」は「自衛隊は出したい」と書いてしまう。
 これはいくらなんでも、やりすぎだろうと思います。
 安倍首相は、集団的防衛権の絡みで、邦人を保護するためには自衛隊を海外
に出したいとは言っています。
 しかし、それは、今回のイスラム国の話ではありません。
 それなのに、「素粒子」は、イスラム国の話題とひっかけて、「自衛隊は出し
たい」と書いてしまう。
 これは、「ためにする論議」です。

 そうやって、
 「自衛隊は出したい。写真家は出したくない」
 と、無理やり重ねて書いてしまう。

 これは、反対のための反対としか、言いようがありません。

 しかも、それに続けて、
 「それが自己責任であっても。国に任せて余計なことはするなの思想」
 とは、これも、書きすぎでしょう。
 シリアには行かないでと3回にわたって警告し、それでも行こうとしたフリ
ーの写真家に、最後の最後、パスポートを返還させる。たしかに、ではどうす
るべきか、正解の出にくい話です。でも、ここに「国に任せて余計なことはす
るな」という「思想」を感じますか?

 素粒子は、乱暴になりました。
 素粒子ではなく、粒子が荒れてしまっています。
 この素粒子を読んでいて、デジャブ、既視感を感じるのです。
 あ、そうかと、思い当たることがあります。
 ツイッターです。
 ツイッターは、短い文章で思うことを発信するため、非常に攻撃的な文章に
なり、言いっぱなし、あるいは、捨て台詞のような内容になってしまう傾向が
強いのです。
 一時の橋下徹・大阪市長のツイッターがそうでした。
 相手に喧嘩を売っているような文章になる。
 素粒子は、まさしく、それです。
 いまの素粒子は、ただのツイッターです。
 ただただ、荒っぽい言葉で政府を攻撃すればいいというものではないでしょ
う。
 中学生のころ、感心した素粒子とは、もう、比較すべきもありません。
 朝日新聞の質の低下は、こういうところにも、出ているように思います。



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2 コメント

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Unknown ()
2015-05-14 10:49:59
今の「素粒子」がツイッターだというのは間違いでしょう。あれは中学生の日記です。
この世はままならぬものである事、自他や公私の区別という面倒なものがある事に初めて気付き、困惑している少年の日記です。
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なるほど。 (Unknown)
2015-05-15 08:38:00
なるほど。
うまいこと、いいますね。
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