いまジャーナリストとして

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アップル登場の5年前・・・日本の企業がインテルに世界初の製品を発注し、製品化されます。それは・・・。

2011年10月09日 03時10分16秒 | 日記

 1970年代に、日本では電卓戦争というものがありました。
 電卓が普及期を迎え、安売り競争が始まったのです。
 この電卓戦争をしかけたのが、電卓専業メーカーのビジコムでし
た。一時は、電卓といえばビジコムというぐらい、大きなシェアを
取りました。しかし、電卓戦争は結局のところ、企業の体力勝負に
なり、キヤノンやシャープといった大手電機メーカーに破れ、倒産
してしまいます。

 電卓戦争に際し、ビジコムは、電卓用の半導体チップを作ること
を決め、その開発を、シリコンバレーの小さな会社に依頼します。
 この会社こそ、いまをときめくインテルでした。

 ビジコムの発注を受け、インテルは、製品名4004という半導
体チップを開発しました。
 これが、世界初のマイクロプロセッサーでした。

 パソコンの心臓部は、マイクロプロセッサーと呼ばれる半導体チ
ップです。CPUとも呼びます。
 CPUは、セントラル・プロセッシング・ユニットの略で、日本
語では、中央演算装置 などと訳します。
 
 いま、パソコンを買うと、どこかに必ず、「intel インサ
イド」というシールがはってあります。テレビのCMでは、「イン
テル入ってる」というコピーが一時有名になりました。
 これは、そのパソコンは、インテルのマイクロプロセッサーを使
ってますーーという印なのです。
 いま、ほとんどのパソコンが、インテルのマイクロプロセッサー
を使っています。

 このマイクロプロセッサーの第一号こそ、日本のビジコムが発注
したものなのです。

 製品名は、先ほど記したように、4004 と名付けられました。
製品化されたのは、1971年のことで、ビジコムは、実際に、
4004を搭載した電卓を作ります。

 これが、インテルの4004を搭載したビジコムの電卓です。 
 現在の電卓と比べて、まだまだ大きいですね。
 
 ところが、ビジコムは、せっかく4004を搭載した革命的な
電卓を作りながら、自ら仕掛けた電卓戦争に敗れ、倒産してしまい
ます。
 そのため、4004は、宙に浮いてしまいます。

 繰り返しますが、これは、世界初のマイクロプロセッサーです。

 インテルは、この4004を放棄することなく、改良を重ね、1
980年代には、製品番号 8086 というマイクロプロセッサ
ーを仕上げます。
 8086は、4004の改良型です。
 
 スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウオズニアックの二人のス
ティーブが、世界初のパーソナル・コンピュータAPPLEⅡを製
品化したのは1976年です。
 ビジコムの発注によってインテルが4004を開発したのが19
71年ですから、わずか5年の差です。

 APPLEⅡによって、世界の電機メーカーは強烈な刺激を受け、
一斉にパソコンの開発に乗り出します。
 当然、半導体メーカーも、パソコンの心臓部になるマイクロプロ
セッサーの開発に着手します。
 初期のころ、多くのパソコンに使われたのは、
 ザイログ社の Z80 
 というマイクロプロセッサーでした。
 対抗馬は、
 モトローラ社の 6809
 というマイクロプロセッサーでした。

 しかし、最終的には
 インテルの8086
 が勝利を収めるのです。

 8086は、世界の多くのパソコンに搭載されます。
 ちなみに、アップルだけは、誕生のときから長い間、インテルを
使わず、独自のマイクロプロセッサーにこだわっていました。ただ
し、最近はインテルを使っています。

 8086の成功を受け、インテルは、8086をさらに改良しま
す。
 8086の初めの改良型は、
 80286 と名付けられました。
 8086の2番目の型ということで、「2」を入れたのです。

 3番目の改良型が、80386 です。
このあたりから、世界のパソコンのマイクロプロセッサーは、イ
ンテルの独壇場になります。

 4番目の改良型が、80486 です。

 そして、5番目が、80586 となります。
 しかし、インテルは、ここで呼び名を変えます。
 「5」は、英語で penta ペンタ です。
 8086から数えて5番目、ペンタのマイクロプロセッサーとい
うことで、インテルは、80856を、
 「ペンティアム」
 と名付けるのです。

 そうです。
 これが、私たちがよく聞く
 「インテルのペンティアム」
 なのです。

 いまは、世界のパソコンは、ほとんどが、このインテルのペンテ
ィアムを使っています。
 インテルは、パソコンの死命を制する圧倒的な大企業となりまし
た。
 
 ところが、いま、こうやって見てきたように、インテルのペンテ
ィアム 80586 は、世界初のマイクロプロセッサー4004
の子孫であり、4004は、日本の電卓会社ビジコムが発注したも
のなのです。

 4004はインテルが作ったわけですが、発注したのはビジコム
ですから、権利はビジコムにありました。
 
 ということは、ビジコムが倒産せずに、そのまま存続していたら、
いまのインテルのペンティアムは、実は、日本企業であるビジコム
のペンティアムだったかもしれないのです。
 その可能性は、おおいにあったと思います。

 日本でパソコンを作っている富士通もNECもソニーも東芝も、
アメリカでパソコンを作っているHP(ヒューレット・パッカー
ド)もDELLも、世界のパソコンメーカーはどこもインテルのペ
ンティアムを使います。インテルに対し、いちいち、お金を払わな
ければなりません。それはもう、ものすごい金額です。なにしろ、
インテルのマイクロプロセッサーがなければ、パソコンを作れない
のですから。

 しかし、もし、ビジコムが倒産しなかったら、いま、インテルの
地位にあるのは、ビジコムだったということになります。
 
 これは歴史のIFですが、日本の企業は、というより、日本は、
ものすごく惜しいことをしました。
 本当に惜しかった。
 惜しいなんてものじゃないですよ。
 ああ、残念!

 みなさんも、会社や家庭で、電卓を触るたびに、ビジコムの名前
とともに、この話をちょっと思い出してください。ああ、残念だっ
たなあと。




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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
あの件に触れないのは、いまだにNG? (匿名希望)
2014-11-11 03:34:47
部品供給停止による、製造??不可の件ですが、、、
通??業省****は、かたれないのですね。
結局所有していた、4004の特許を
フェアチャイルドの??に売る事になってしまった。
その??が独立して、イ**ルをおこした、
件ですよね。
返信する
CPUってインテルだけじゃない! (AMDは神)
2019-01-15 14:09:57
pentiumが発売されているときにはもうAMDという企業があったと思いますが...というかインテルのCPUを作っていたのはAMDだったんですよ!
返信する

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