福島原発で、不思議に思うのは、使用済み核燃料の
保存プールのことです。いま稼働している原発の同じ建
屋に、どうして、使用済み燃料が保存されているのでし
ょうか。使用済み燃料って、どこかで最終処分されるの
ではないのでしょうか。
今回の事故で、使用済み燃料が最初に問題になった
のは4号機です。4号機は、もともと点検のため停止
中だったのに、使用済み燃料を保存してあるプールが
高温になり、水が蒸発して危険な状態になりました。
そこで放水をして、プールに水を入れたわけです。
そうしたら、3号機でも、使用済み燃料を保存して
あるプールが危険な状態になりました。
聞いたら、1号機にも2号機にも、同じように、使
用済み燃料を保存するプールがあって、実際に、使用済
み燃料が水の底に置いてあるということです。
でも、不思議でしょう?
なんで、わざわざ、稼働している原発の同じ建屋に、
使用済み燃料が置いてあるのでしょう。
どうして、そんな危険なことをしているのでしょう。
それが、今回の事故の初めから不思議でした。
そこで、ある電力会社で、原発を担当していた友人
に、話を聞きました。東電の人ではありません。
彼は、それが日本の原発の最大の問題点だといいま
す。使用済み燃料を、どこで、どう最終処理をするか、
国は、まったく決めてこなかった。そこで、やむなく、
電力各社は、使用済みとなった燃料を、同じ原発の建屋
に、プールを作って保存するしかないのだそうです。
え?
そんなことをしていたら、使用済み燃料が、どんど
ん貯まっていく一方ではないでしょうか?
本当?
彼の説明はこうです。
「その通りです。いまの日本の原発は、言ってみれ
ば、トイレのない家を作っているようなものです」。
使用済み燃料をどうするかは、二つのオプションが
あります。
ひとつは、再処理をして、もう一度使えるようにす
ること。こちらは再処理です。
もうひとつが、燃料をガラスコーティングしてしっ
かりと固め、地中深く埋めてしまうこと。こちらは
最終処理です。
再処理は、六ヶ所村でやっています。しかし、六ヶ
所村は猛烈な反対運動があり、すったもんだの末、よう
やく動き始めたものです。
日本中の原発の使用済み燃料を再処理するほどのキ
ャパシティはありません。
使用済み燃料は、ですから、どうしても、どこかに
埋めて、最終処理をする必要があります。
北海道などが候補地になったことがあるのですが、
どこでも、強い反対運動が起き、どこも、それを受け入
れようとはしません。いまも、その状態が続いています。
それを、彼は
「トイレがない状態」
というわけです。
原発が実用化された40数年前から、使用済み燃料
をどうするかというのは、重要な課題とされてきました。
初めから分かったいたことです。
原発の核燃料は、2、3年に一度は点検します。そ
のときに、新しい核燃料と取り替えます。
だから、核燃料は、2、3年で、使用済みとなりま
す。かなりのピッチです。
ところが、国は、その一番初めに、使用済み燃料の
受け入れを、国ではなく、地方自治体の決定にゆだねる
ことにしてしまったのです。
彼はそれを
「国は、最終処理という面倒なことから逃げて、そ
れを県に押し付けた」
と怒ります。
原子力発電は、国策として始めたのに、大事な最終
処理は面倒だから県に押し付けたーーというわけです。
県に押し付けたら、もう、国の事業じゃなくなるだ
ろうーーということになります。
県にしてみると、使用済み燃料などというやっかい
なものを、押し付けられても困る。
だから、どの県も、その受け入れを断ってきた。
そんなもの、県が断るのは当たり前でしょう。
国が、最後まで責任を持って、場所を決め、最終処
理をするのが本当です。
しかし、国は逃げた。
逃げて、県に押し付けた。
県も、そんなもの、拒否するしかない。
そういう経緯で、どの原発も、炉と同じ建屋に、使
用済み燃料を保存するプールを作り、実際に、保存して
いると、まあ、そういうわけです。
日本と同じように、原発が多いのは、アメリカとフ
ランスですが、両国とも、最初からしっかり最終処理の
場所を決め、地中深く埋めているそうです。
日本だけがおかしなことになっている。
日本は、すべての原発で、同じように、使用済み燃
料を抱え込んている。このままだと、いずれ、使用済み
燃料があふれてしまって、保存できないときがくる。
国の原発政策は、肝心なところで、初めから破たん
していることになります。
今回の事故が起きるまでは、私たちの多くは、まさ
か同じ建屋に、使用済み燃料が保存されたままになって
いるとは知りませんでした。
しかし、専門家の間では、非常に重要な問題として
認識されていたそうです。しかも、非常に重要だけれど、
解決方法がまったくない問題であることも認識されてい
たそうです。
国の責任は、大きいですね。
彼は「今回の事故は、ものすごく不幸な事故です。
しかし、使用済み燃料が原発に保存されていて、最終処
理の問題がまったく何も解決していないことが、広く知
られるきっかけになったとすれば、せめてものことです」
と話しています。
(止)
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