都議選で、小池知事の都民ファーストの会が圧勝し、自民党が歴
史的な大敗を喫しました。
しかし、自民党以上にひどかったのが、民進党です。
民進党は、たったの5議席しか取れませんでした。
仮にも国会で、自民党につぐ議席数を持つ野党第一党です。それ
が、東京都議会で、たった5議席とは、ほとんど、ミニ政党みたい
なものです。
いまの日本にとって、野党第一党である民進党がこんな体たらく
であることは、大問題です。
今回、都議選で自民党が大敗して、安倍首相の独走に、とりあえ
ず、待ったをかけたということになっています。
しかし、誰が待ったをかけたのでしょうか。
東京都民です。
都議選ですから、投票するのは、都民だけです。
神奈川県民や大阪府民、北海道民は、まったく関係がありません
でした。
もし安倍首相の独走が良くないとすれば、では、誰が待ったをか
けるべきだったのでしょうか。
都議選ですから、大阪府民や神奈川県民が待ったをかけようと思
っても、それは不可能でした。
では、誰が?
それこそ、野党第一党の民進党が、待ったをかける立場だったの
です。
私の立場を先に書いておくと、安倍首相の政治姿勢や考え方には、
賛成するところもあれば、反対する部分もあります。しかし、安倍
首相が自分の政策を実現するための手法には、首をひねらざるをえ
ません。
反テロ法案を、国会の小委員会の採決を経ず、本会議で可決・成
立させてしまったことは、安倍首相の手法として、ひとつの典型で
しょう。小委員会を経ずに本会議で採決する方法があるとは、私も
知りませんでした。そんなことが可能なのであれば、これからも、
小委員会など、開く必要がなくなってしまいます。これはもう、国
会軽視というほかないでしょう。
国会で、野党議員から、憲法改正に対する考え方を聞かれたとき、
「詳しくは読売新聞を読んでいただければと思います」と答えたの
も、いくらなんでも、やりすぎでしょう。ちょうどその日、読売新
聞に安倍首相のインタビューが載っていたので、安倍首相はそう答
えたわけですが、もし、そんな言い方が通用するなら、国会の論戦
は必要がなくなってしまいます。国会で野党議員に答えるより先に、
新聞や雑誌、テレビのインタビューに出て、「詳しくはそちらを見
てください」と答えて済まそうというのですから。
安倍首相のこうした手法、姿勢には、自民党支持者でも、首をひ
ねってしまうのではないでしょうか。
ところが、本来、そこをちゃんと詰めるべき民進党が、何もでき
ない。
いまの民進党のありようを象徴するのは、蓮舫代表です。
蓮舫氏は、専ら、森友学園と加計学園で、安倍首相を攻めます。
反テロ法や憲法改正問題は、理念をめぐる論戦、抽象的な論戦に
なります。
それに対し、森友学園や加計学園は、籠池夫妻や加計氏、安倍首
相の昭恵夫人、萩生田氏と、キャラクターのはっきりした生身の人
間が登場するので、具体的で分かりやすい展開になります。
だから、安倍首相を攻めるには、反テロ法や憲法問題より、森友
学園や加計学園を取り上げたほうが、攻めやすいのです。
それに、理念をめぐる論戦は、どちらも自分の考えがあるので、
議論をしても勝負はつきません。しかし、森友学園や加計学園の問
題は、安倍首相の弱点を攻めるわけですから、民進党が攻撃、安倍
首相が守勢と、攻守がはっきりしています。はっきりいって、森友、
加計の問題は、安倍首相のミス、オウンゴールです。
だから、蓮舫氏も、森友学園、加計学園を集中的に攻撃するので
す。
しかし、民進党が、森友、加計問題で、いくら安倍首相を攻撃し
ても、民進党の支持率は上がりません。
そこのところを、蓮舫氏は、どうにも、分かっていないようです。
どうして、分からないのかと思います。
日本的な風土では、相手のミスを攻めたてて、それで支持が集ま
るということは、まず、ありえません。
だれかのミスをあげつらい、批判しても、日本では、「そうだ、
よくやった」とは、なかなか、ほめてもらえません。
それがいいかどうかということではなく、日本の風土には、そう
いうところがあるということです。
蓮舫氏が、森友、加計問題で、声高に、安倍首相を攻撃すればす
るほど、普通の国民は、「森友は、もういいよ」「また加計か」と
思ってしまいます。
蓮舫氏は、どうして、それが分からないのかと思います。
森友、加計だけではありません。
都議選の最中には、稲田防衛相が「自衛隊としても(自民党支持
を)お願いする」と発言しました。自民党の下村都連会長には、
加計学園の関係者からの寄付があったことも報じられました。
蓮舫氏は、その都度、声を極めて、安倍首相と自民党を批判して
いました。
しかし、悲しいかな、蓮舫氏が声高に批判すればするほど、有権
者は、民進党から離れていった感じがあります。
なぜか。
それらはすべて、安倍首相、安倍内閣のミスであり、オウンゴー
ルだからです。
蓮舫氏が、取り上げて批判するのは、すべて、相手のミスなので
す。
相手のミスを批判しても、たいした得点にはならないのです。
なぜ、安倍首相のミスばかり取り上げるのか。
それは、裏を返せば、民進党に、自ら訴えるべき政策や提案がな
いからです。
安倍首相のミスは、なるほど、分かった。それはその通りだ。じ
ゃあ、民進党の政策なり提案を聞かせてくれよーー国民が、民進党
から、蓮舫氏から聞きたいのは、民進党の政策であり、提案なので
す。
それなのに、いつまでたっても、相手のミスばかり、取り上げて
いる。
それでは、民進党は支持されません。
民主主義にとって、健全な野党第一党は、なくてはならぬ存在で
す。
その野党第一党がこんな体たらくなのは、日本の民主主義にとっ
て、大いなる悲劇です。