原作は福永武彦による同名小説です。詩情豊かなこの町を舞台に、複雑で入り組んだ男女の愛が描かれます。
「廃市」というのは朽ち死んでしまった退屈な町のことで、九州の柳川市がモデル。映像で何度も出てくる、掘割に浮かび、人を運ぶ小舟が美しく印象的です。
それは10年も前のこと。主人公はこの町が火事でほとんど焼けてしまったという新聞記事を見て、当時のことを思い出します。監督はこのあたりのナレーションをしています。
この街に卒業論文を書くためにやってきた大学生・江口(山下規介)。彼は叔父の紹介で、掘割の多いこの町の旧家、貝原家へ一夏の予定でやって来たのです。
家には祖母の志乃(入江たか子)、20歳前後の安子(小林聡美)、若夫婦の直之(峰岸徹)と郁代(根岸季衣)がいるはずでしたが、ふたりとも家にいません。
ある日、母の墓参りに行くという安子についていった江口は、その寺の一室で郁代と安子が対面しているのを目撃します。二人は江口に、直之に秀(入江若葉)という女が他にいて、郁代はこの寺へ引きこもっている、と告げます。
町で催された水神様の祭り。江口は舞台で歌舞伎を演じた直之に出会います。直之は江口に、郁代は自分が彼女を愛していることを信じようとせず家を出てしまった、やり切れなくなった自分は秀と一緒にいるようになった、と説明します。
その直之と秀とが・・・。
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