雀宮駅発行 東京電環ゆき片道乗車券

1974(昭和49)年12月に東北本線雀宮(すずめのみや)駅で発行された、東京電環(現・東京山手線内)ゆきの片道乗車券です。


   

青色こくてつ地紋のA型一般式大人・小児用券で、東京印刷場で調製されたものです。
この券は発駅名および運賃を記載する箇所が空欄になっており、欠札等の非常時用として設備されていたと思われる駅名記入式の券になります。

   

裏面です。券番の他、「東京電環内下車前途無効」の文言が印刷されています。

現在のように乗車券を発行都度端末機や券売機で印刷するのと違い、硬券は予め印刷場で印刷されたものを駅に在庫して発売しておりましたため、印刷発注を忘れたり、予想以上に発売してしまったなどで在庫切れを起こしてしまった際、「間に合わせ」的な非常時用としてこのような券が使用されたりしていたようです。
このような在庫切れの状態は「欠札(けっさつ)」と言われ、一般的にはあまりない「非常事態」ですので、コレクター的にはなかなか巡り合えることではありません。

御紹介の券は、左上の発駅名欄および一番下の発行駅名が同一の「雀宮」というゴム印で捺され、運賃はボールペンによる手書きで記載されています。東京印刷場の駅名記入式券は発行駅名欄が無く、いちいち記載しなくても良さそうではありますが、敢えてゴム印が捺されているものが多く残っているようです。

非常用として駅名記入式の券が各駅に設備されていたのか、それとも、主要駅に設備されていたのか、はたまた鉄道管理局の審査課あたりに請求して取り寄せたのか定かではありませんが、請求する駅の立場としては、在庫管理ができなかったがための請求であり、恥ずかしくて請求しづらいものであったのかも知れませんね。
ただし、運賃の570円はこの券が発行された2か月前の1974(昭和49)年10月に改定された時のものになりますので、運賃改定による新券の印刷で印刷場が繁忙期になり、請求しても印刷されて納品される時間が掛かりすぎ、その間に欠札になってしまったというのが実際であったのではないかと推測することもできます。


ところで、御紹介の券は着駅が東京電環(東京電車環状線)となっておりますが、東京電環という名称はこの券が発行された2年以上前の1972(昭和47)年9月に東京山手線内に替わっていますので、本来であれば「東京山手線内ゆき」というのが正しいということになります。
全く気付かれなかったのでしょうか、それとも駅名記入式の新券が出ていなかったのでしょうか、改称後2年以上に亘って「東京電環ゆき」のまま残り続けていたことになります。

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