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マーケティング研究 他社事例 その241 「1125兆通りを一瞬で計算」 ~本気を出してきたIBM~

2018-10-11 17:23:02 | ビジネス
マーケティング研究 他社事例 その241 「1125兆通りを一瞬で計算」 ~本気を出してきたIBM~


机上の空論とされてきた「量子ゲート方式」が実用化し、コンピューターの常識が一変しようとしています。

IBMが昨年11月に量子コンピューターの試作機を発表したのを皆さんご存知でしょうか?

エネルギー問題の解決にもつながる技術として注目されており、各国の競争が熱を帯びています。

世界で初めて「50量子ビット」を搭載した量子コンピューターの試作機を発表したのは2017年11月です。

IBMが開発したのは、1983年から提唱されていた「量子ゲート方式」の量子コンピューターです。

大規模計算が可能になる為、本命視されていましたが、装置開発が難しく、2010年ごろまでは机上の空論と考える専門家がほとんどでした。

ところが、IBMの発表により、空論が現実に変わったのです。

そのカギは「50」という数字にあります。

量子コンピューターとは、ミクロの世界の物理法則である「量子力学」を使って計算する機械のことです。

「0」と「1」の両方が同時に存在する「量子ビット」を活用し、50量子ビットなら約1125兆(2の50乗・・・なんだかすごい数字ですね)通りの計算が一瞬で完了するのです。

計算能力は指数関数的に増強できます。

※指数関数的にというのは、乗じて増えていくの意味です。

従来のコンピューターはデータを「0」と「1」に置き換えて、1通りずつ処理する。

そのため速度を高めるには限界があります。

専門家の間では諸説ありますが、従来の方式のスーパーコンピューターがどれだけ進化しても、約50量子ビットに相当する速度が限界だとされてきました。

IBMの試作機は、スパコンの理論上の限界を上回った可能性があります。

量子コンピューターがスパコンでは、実現できない計算性能を持つ事を「量子の超越性」と呼び、当初は2050年代まで実現しないと見られていました。

そのスケジュールが一気に30年以上も前倒しされた格好です。

量子コンピューターに注目が集まったきっかけは2011年カナダのベンチャー企業Dウエーブシステムズが商用化した事です。

東京工業大学の西森教授が提唱した「量子アニーリング方式」を用い、1台10億円程度で装置を発売しました。

NASAやデンソーなどが相次いで導入しました。

フォルクスワーゲンは北京のタクシーの巡回ルートを最適化し、交通渋滞を緩和する取り組みにDウエーブの量子コンピューターを利用しています。

巡回先が一か所増えるごとにルートの組み合わせは指数関数的に増え、17か所を訪問して元に戻る場合の候補は10兆通りを超えます。

グーグルは、こうした「組み合わせ最適化」問題については従来型のコンピューターの1億倍高速に計算できると発表しています。

ところがDウエーブの量子アニーリング方式には限界があります。

高速に解けるのは組み合わせ最適化問題に限られ、計算能力を高めると間違った答えを出しやすくなるのです。

「特化型量子コンピューター」と呼ばれるのはそのためです。

NTTなどが昨年11月20日に発表した「レーザーネットワーク方式」も同様の特徴を持つ特化型です。

特化型に対してIBMが開発する量子ゲート方式は「汎用型」と呼ばれています。

対応するプログラムさえ開発できれば、どんな問題も瞬時に解く潜在力を持っているからです。

汎用型はこれまで、搭載する量子ビットを増やすのに難航し、特化型の選考を許していました。

1999年に世界で初めて量子ビットを作った東京大学の中村教授は、50の壁をクリア出来れば「理論上はどこまでも量子ビットを増やせるようになります。」と説明しています。

汎用型は近い将来、確実に特化型を追い抜きます。

IBMが取り組む量子ゲート方式が本命視されている理由はここにあるのです。

(続く)


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