業務日誌

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あいつの名はケアマネージャー

リリーさん、家出する

2006年12月31日 | 業務日誌
このブログを見ている皆さんにお願いです。
どうかこの年末年始の新聞記事に、高齢者国際カップルの痴情のもつれ、という刃傷沙汰がないかどうか注意して見ていて下さいませんか。



「ハリケンさん、あの女狐が出て行くと言うんじゃい!またヘルパーさんを寄越してほしいんじゃい!!」

年が明けたら入籍するはずだったトシオさんから電話をもらったのは、12月21日のことでした。

ナマホのトシオさんは糖尿病性網膜症でほとんど視力がありません。
韓国人でオーバーステイのリリーさんと恋に落ち、来年早々入籍をひかえた身で、その幸せな同居生活での暴飲暴食がたたってか、透析しなくてはならない身体になって入院してしまいました。
しかし、ナマホは1ヶ月以上の入院でホゴ費が減額になる。
そのためトシオさんは、チッ、おとなしく30日入院していてくれれば加算が取れたものを20数日でムリヤリ退院してきてしまったのです。
私は慌てて病院から看護サマリーを取り寄せ、管理栄養士さんから栄養指導書をもらい、韓国語を読み書きできる方にお願いしてその指導書を訳してもらいました。
そうしてその栄養指導書ハングルバージョンをお渡ししたのが12月19日。
その内容の細かい部分について、リリーさんから電話で問い合わせがあったのが12月20日。
そして2人が破局(?)したのが12月21日
一体どんな不幸がトシオさんとリリーさんを襲ったのか.............

トシオさんはまるでヤ○ザのように、私に怒鳴る。

ハリケンさん、あんたは、せっかくワシが隠していたことをよくもペラペラとしゃべってくれたな!おかげでリリーは、ワシに『騙された』と言って荷物をまとめよるんじゃい!」

…ワケがわかりません。

「私が?トシオさんの隠し事をリリーさんにペラペラですって?どういうことなのかわかりません。トシオさんがただの胃炎といってごまかしていたのが、実は透析しなきゃならないほどの糖尿病ってことを私が説明したのは入院前のことですよね?他に何か隠していたことがあったんですか?」

するとトシオさんは、目いっぱいドスの利いた声で私を威嚇。

あんたはワシがナマホだということをリリーにバラしたんじゃい!
それでリリーが出て行くと言うんじゃい!



はァ?

「…ちょっと待って下さいよトシオさん。じゃ、リリーさんはトシオさんがナマカツホゴの受給者だということを知らなかったんですか?」
トシオ「そうじゃい!あんたがバラすまではな!」
「トシオさん、入院する直前の住宅改修の相談のとき、浴室にシャワーをつけたいと言われて、私はさんざん介護保険制度やら障害者福祉制度やらを検討して、結局どっちでもダメだったということがありましたよね?」
トシオ「だからなんなんじゃい!」
「それで結局、ホゴ課の相談員さんに相談したら、『ナマホではシャワーは自費で対応してもらうしかないと決められています』と言われて、そのことは私も説明しましたよね?」
トシオ「ああそうじゃい!」
「そもそもあのときのシャワーの件は、韓国人のリリーさんが、お国の入浴習慣との違い(※韓国では浴槽を使うことは少なく、朝夕シャワー浴をする)のために不自由しておられるということで、トシオさんが私に『なんとかしてほしい』と言われたことが発端でしたよね?」
トシオ「そうじゃい!ワシの親切心じゃい!」
「…私は介護保険の相談を仕事としている者ですが、障害者の支援制度もコーディネートしてその依頼に対応しようとしました。そして最後には、ホゴ課にも相談に行きました。結局どの制度も利用できなかったので、リリーさんに申し訳ない、トシオさんにもすまないと思って、『なんとかホゴ費をやりくりして改修費用を貯めて、シャワーをつけられるようにしましょうね』とおふたりにお話ししましたよね?これまでは言い出せなかったとしても、せめてそのときにトシオさんは、リリーさんにご自分の状況を説明しなきゃいけなくないですかね?」
トシオ「…」
「リリーさんはトシオさんの奥様になる方ですよね?当然食費や生活費、貯金をするなら貯金のことも含めて、トシオさんの生活全般のことを相談しなくてはならない立場の方ですよね?」
トシオ「…」
「しかもすでに生活を共にしておられ、同居家族ができたということでヘルパーの利用もとめましたよね?ホゴ課の相談員さんとは、ホゴ費の増額の相談もしましたよね?私ももう何度も相談に乗りましたよね?」
トシオ「…」
なのにリリーさんが、トシオさんがナマホだということをまだ知らなかった、トシオさんが隠していたということはどういうことですか?私が通訳の方にお願いして、ナマホの生活費の中で、いかにしてトシオさんの食事を管理していくかについて、奥様であるリリーさんに説明したり相談したりしたことについて、私がトシオさんにこうして電話ですごまれなくてはならない理由が一体どこにあるんですか!
トシオ「…」
「とにかく今からすぐに行きます。リリーさんはいま荷物を作っておられる最中なんですね?まだそのお宅におられるんですね?10分でそこに行きますから待ってて下さい!


「私は騙されていた、この人(トシオさん)は私にウソばかりついていた」
涙目でそう訴えるリリーさんは、トシオさんから

・自分は大学を出て大きな企業に勤めていたので年金は月に25万円ある
⇒ほぼ無年金。ホゴ費は月額13万円。
・ある不幸な出来事がもとで両眼の視力を失った
⇒糖尿病性網膜症。
・日本国籍が欲しいのなら、自分が力になってあげられるので結婚しよう、何にもしなくていいから週に3回ほどワシの自宅に通ってくればいい
⇒料理洗濯掃除をすべてやらされている。

こと料理に関しては、リリーさんの作るものが口に合わないらしく、毎日厭味を言われてもう我慢できないのです、とリリーさん。
ケアマネさんのせいじゃない。
生活保護だからという理由だけで別れる訳じゃない。
この人が私と結婚するために、こんなにウソばかりついていたことがやっとわかって、それでもうやっていけないと思ったんです。

私はケアマネですから、おふたりの約束ごとや結婚についてとやかく言う権利はないし、そのつもりもまったくございません。
ですがトシオさん、あなたのやってることは立派な結婚詐欺ですよ。
そう言うとトシオさんは
「そんなことはない!男と女のことなんだから、こんなものはウソも方便というヤツじゃい!
などとホザくのです。

あ、そ。
わかりました。

とにかくもーこの年末に、ヘルパーさんなんか組めませんので、利用は来年からにして下さい。それまではなんとか、このリリーさんにおすがりしてもうしばらく滞在してもらうなり何なりして下さい。
(どうせ私が退出したあとで、女々しく泣き落とすとかどうとかするのはわかってますから)
あ、もとの事業所はもうヘルパーは出せないそうですので、また新しい事業所を探さなくてはなりませんが、トシオさんはこれまでもう5,6軒事業所を断ってこられたので、気に入るヘルパーさんが来るかどうかはわかりません。その点どうかご承知おき下さいね。

それと、今回のことはホゴ課の相談員さんに報告しておきます。
リリーさんから詐欺で訴えられないように、せいぜいご機嫌でも取っとくんですね。
それじゃトシオさん
良いお年をお迎え下さい。