その日その時 写真で見る歳時記

気ままに写した写真に気ままな言葉たちの集まり

浮寝鳥(うきねどり)

2007年11月22日 | Weblog

 

浮寝鳥(うきねどり)

 

***

 

金色の夕陽が落ちる湖で

 

まどろみかけた水鳥が

 

ふと首を上げて

 

一声鳴いた

 

しんと静まる湖面の水は

 

何も答えてくれないけれど

 

大丈夫

 

世界はまだそこにある

 

薄墨に広がる夜が

 

何もかも隠してくれる

 

きみを包んで

 

そこにあるから

 

***

 

あてどなくさまよう想い

冬の湖などで

雁や鴨が水面に浮かんだまま

眠っている姿をご覧になってことあると思います

水上で長い首を翼の間に入れて

丸くなる水鳥たち

ずいぶん器用な格好でねむるものです

水鳥のこうした習性を

「浮寝鳥(うきねどり)」と呼ぶのですが

彼らは水上で「浮き寝」をする様子は

のんびりしているようでいて

不安定なものにも見えてしまいます

昔の人々は

心配事を抱えて

安らかに眠れない夜の自分自身を

しばし「浮寝鳥」にたとえたものでした

和泉式部が

「水のうへにうきねをしてぞ思ひやる」

と歌ったのも

恋ゆえの心配から

まんじりとも出来ずにいた夜のことです

また 光源氏と

一夜限りの関係を持ってしまった

人妻の空蝉は

その逢瀬を「浮き寝」にたとえています

平安時代の人々にとっても

不倫の恋は

不安定なものであったのでしょう