野山の錦
***
君から届いた手紙の文字は
鳶の翼のつややかな色
何気ない言葉を綴る
便箋に
楓の葉を一枚
挟んで
そっちは今年も
紅葉なんだね
その優しさも
変わっていないね
・・・
***
野山の錦
秋も半ばを過ぎると
木々の葉の色が
緑から燃えるような赤や黄色に変わってきます
秋の紅葉は昔から
春の桜と同じくらい
待ちわびる存在でした
したがって
紅葉(もみじ)をさす言葉も多く
「野山の錦」もそうですが
うっすらと色づいて来たのは
「薄紅葉」
夕方のもやの中にかすむのは
「夕紅葉」
照り映えているのは
「照葉(てりは)」
銀杏などが黄色くなるのを
「黄葉(もみじ)」
ほかにも「山紅葉」「谷紅葉」「庭紅葉」
樹木の名を入れて
「柿紅葉」「桜紅葉」「蔦紅葉」などなど
山が紅葉に彩られることを
「山粧う(やまよそう)」といいます
秋の一時期
燃えるような赤や黄色の錦の衣を
まとった山を見ると
まるで山が自分を
美しく粧っているかのようだという意味で
宋代の画人郭熈(かくき)の「山水訓」にある
「秋山明浄にして粧ふがごとし」から来た言葉です