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失敗の言い訳の効用

2007-04-26 | Weblog
06/9・5海保 9月20日締切
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30文字133行で4000文字  この書式で23行で6p
「リスクマネジメント TODAY]11月号特集「言い訳のすすめ;
失敗学再入門」
「失敗の言い訳の効用」 東京成徳大学人文学部 海保博之
● はじめに
失敗には言い訳はつきもの。しかし、一般には、言い訳はいけないこととされ、非難、叱責される。本稿では、言い訳にも理も利もあることを述べてみたいのだが、すべての言い訳に理と利があるわけではない。どんな言い訳なら理と利があるのか、それを組織としていかに活かすかを考えてみたい。
● 失敗即罰はだめ
 失敗に厳しいのは、とりわけ安全、信頼が第一の現場では、当然のことである。だからといって、その厳しさが「即、罰」となってしまうのは、好ましい対応ではない。罰は、失敗隠しをさせるし、
仕事を萎縮させるし、失敗の結果だけに関心を向けさせてしまいがちだらからである。
では失敗したらどうするか。敏速な事後対策に一致協力して取り組むことが先決であるが、それが一段落ついたところで、失敗にかかわる人々の「言い訳会議」をおこなって、なぜそんなことが起こってしまったのかを分析してみる。うまくいけば、それは、失敗の原因追及ムム責任追及ではない!!−−の会議、さらには、失敗の未然防止対策の会議にもなることが期待できる。
●失敗の言い訳の3つのパターン
話をすすめる前に、失敗すると、我々はなぜ言い訳をするのかについて考えておく。
1つは、自己保身のための言い訳である。
失敗は自分の弱さがはからずもあらわれてしまった行為である。その弱さを周辺に対して、時には自分自身に対して繕うために、言い訳をするのである。「あの時は、あーする以外になかった」「やるだけのことはやったのだが」となる。
2つは、自分自身の納得のための言い訳である。
我々は、失敗に限らないが、何か際立った事が起こると、その原因を推測して自分なりに納得したい心性が強くある。あいまいなままほっておくことは不安でならないのである。それが言い訳として出てくる。「その失敗(結果)は、自分の怠け心(原因)のために起こった」「課題が難しかったから、失敗した」挙げ句の果ては「運が悪かっから、失敗した」といった類の言い訳が、それである。
3つは、使命観から出る言い訳である。
何かの仕事をする際には、組織あるいは自分の中にその仕事をする使命観(意義)が陰に陽にある。その使命観に従ってやったために失敗してしまったという言い訳である。「あの場ではそうせざるをえなかった」「自分以外に誰がやったか」という、いささか大げさな言い訳となるのが、常である。
 この3つのタイプの言い訳のうち、自己保身のための言い訳は、本人が早く失敗から立ち直るためには必要であるが、組織にとっては、あまり有効ではないので、以下の話からは除外する。
●言い訳会議の意義
会議の名称はともかくとして、この類の集まりを持てるかどうかが、組織の一つの失敗文化になる。失敗した時に、その当事者だけの問題にあえて限定して片をつけてしまって(罰っしてしまって)一件落着が、失敗の定番処理になっている組織は危ない。末尾に付けた、「失敗・言い訳許容度テスト」で、あなたの職場をチェックしてみてほしい。
言い訳会議の意義は、4つある。
一つは、失敗隠しを防ぐことである。失敗、あるいは失敗しそうになった体験をオープンにできる雰囲気は、当事者にとって癒しになるだけではなく、組織にとっても学ぶべきことがたくさんあることの共通認識を生み出す。
2つは、原因分析である。ここで、前述した、「自分を納得させる言い訳」と「使命観から出る言い訳」が役立つ。当事者のこうした言い訳には、どうしても自己保身の色合いがでてしまいがちであるが、それをどれくらい押さえられるかは、その会議(組織)が、どれくらい真剣に原因分析をしようとしているかにもかかっている。
3つは、情報の共有である。「こんな失敗がありました。気をつけましょう」の広報感覚の情報提供だけでは、「自分はそんな馬鹿はしない」で終わってしまう。自分の身に引きつけて失敗情報を理解し、自分の知識の糧にするには、当事者と一緒になってあれこれ考えることは効果がある。
4つは、次の失敗を未然に防ぐ対策が出てくることである。ここまでやらないと、あるいはできないと、会議の意義が半減してしまうことになる。
●言い訳会議をより実効性のあるものにするための4つのコツ
コツ1「明るい雰囲気でやる」
 それでなくとも、失敗は当事者以外の周辺の人々も巻き込んで暗いネガティブな雰囲気を醸し出す。こうした雰囲気では、会議は生産的にならない。へたをすると、責任追及の会議になってしまう。そうならないためには、失敗の事後対策が済んで職場に日常が戻ってきたあたりで、できるだけ明るい雰囲気でやるのが良い。かといって、あまり時間をおくと、事実関係が忘却されたり、妙な編集がおこなわれてしまったりすることもあるので、1週間後あたりがめどであろう。
コツ2「自己保身的な言い訳は、できるだけ排除する」
 言い訳会議は反省会ではない。失敗して反省すること自体はそれなりに有効ではあるが、この会議では、当事者一人が恐縮してみずからを責めてかばりでは、実効性のあるものにならない。そんな時には、当事者に失敗をさせて外部の要因にできるだけ目を向けるようにさせる。
コツ3「後付け推論の罠に気をつける」
失敗の言い訳は、失敗が起こってしまった後から、時間をさかのぼって、あの時どうだった、あの時のあれが原因ではないか、という推論をすることになる。これを後付け推論という。
後付け推論には、次のようなかなり強いバイアスが働くことが知られている。
?自分が納得できる推論しかしない。
?したがって、独りよがりの思い込み推論にもなりやすい。
?他の原因である可能性に思いがいかない。
?真偽の確認がとれないことが多い。
さらに、失敗の当事者の言い訳には、もうひとつ、自己保身への誘惑もある。こうしたバイアスや誘惑に惑わされない周囲の冷静かつ的確な判断が求められる。場合によっては、現場での検証もしてみるくらいくらいのことがあってもよい。
コツ4「使命にかかわる言い訳を引き出す」
仕事の使命にかかわる言い訳は無視できないものがある。組織が無理難題を仕事の達成にあたり設定して押しつけてしまっている可能性があるからである。しかも、やや面倒なことに、仕事熱心な人ほど(使命観に燃えている人ほど)、使命にかかわる言い訳はしない傾向にある。ごく当たり前のこととして潜在化してしまい、それを取り立てて失敗の原因として意識しないからである。時間決め配達を使命として掲げている会社で、それを懸命に守ろうとして事故、というケースを考えてみてほしい。
人、状況、そして、使命の三位一体を意識しながらの言い訳会議になれば申し分ない。
コツ5「会議の結論も過程が大事」
言い訳会議をして、そこから確定的な答え(原因)が出れば申し分ないが、当時者も含めて組織のメンバーが集まってわいわいがやがやすることの中で、書くメンバーが自分なりのものをつかんでくれることも大事である。その趣旨を徹底しないと、自分は関係ない、から欠席、あるいはお義理出席となってしまう。

●おわりに
 ここで述べた言い訳は、ソクラテスの弁明ほどではないが、自己保身の色合いを消した弁明というほうがふさわしい。失敗して頭を昂然とあげて生きられる人はまずいないが、組織として失敗から学ぶことが共通の認識になっていれば、また違ったより生産的な方向に当事者を向かわせることができる。その一つとして、言い訳会議を提案してみた。
 
コラム「あなたの職場の失敗・言い訳許容度は?」*******
それぞれの項目について、○、△、×を入れてみてください。
○が多いほど、許容度が高いことになる。

・失敗には厳しいが、失敗を意識してびくびくして仕事をするようなことはない( )
・失敗してもいざという時はフォローしてもらえる安心感がある( )
・失敗した時、言い訳をじっくりと聞いてくれる( )
・失敗しても頭ごなしに叱責されることはあまりない( )
・失敗した時、なぜ失敗したかの言い訳に耳を傾けてくれる( )
・失敗から学ぶ態勢が組織の中にある( )
・言い訳を言える雰囲気がある( )
・失敗の記録が公開されている( )


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