三流読書人

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ドングリ小屋住人 

「こうのとりのゆりかご」

2007年04月13日 09時28分45秒 | くらし
  子供が生まれる。子供を産む。成長して、長生きをしてやがて死ぬ。中には障害を持って生まれる者もいる。
 良い生育環境に産まれた者は、幸せに、良い老後の生活環境を手に入れた者はより幸せに生涯を送る。
 しかし、国はそれらはすべて自助努力でまかなえといっている。
 国民を幸せにするために国家は存立するのではないか。それなりの努力と与えられた労働を果たせば、国の制度として、幸せに暮らす権利が得られるのではないか。憲法第25条はそのことを保障している。
 子供が生まれて、どう生涯を過ごすかは自助努力にかかっている、といまさら言われる筋合いはない。
 少し違うかも知れないが、生まれ出た生命を誰が、どう育てるのか、という意味で次のコラムを。
 
 『毎日新聞』4月11日付 コラム「発信箱」より 元村有希子氏
「ゆりかごは問う」
 《   育てられなくなった赤ちゃんを匿名で受け入れる「こうのとりのゆりかご」が始まる。閣僚たちは口々に不快感を表したが、人ごとのような言い方はどうかと思う。
 賛否はあるだろう。しかしわが子を手放す人にも切羽詰まった事情があるのだ。望まない出産の場合、置き去りや虐待などの可能性がある。そんな命を「ゆりかご」は救うかも知れない。
 73年4月、宮城県石巻市で産婦人科医院を開業していた菊田昇医師(故人)が地元紙に小さな広告を載せた「生まれたばかりの男の赤ちゃんをわが子として育てる方を求む」。菊田医師は臨月近くになって「お腹の子を殺して」と来院する女性を多く診た。殺せなかった。女性を説得して出産させ、「実の子」として出生届けを出してくれる養親に預ける。こうした違法行為を公表し、制度と命の重さの相克を社会に問うた。
 この事件が呼び水となって87年、子どもが戸籍上も養親の実子扱いとなる「特別養子制度」ができた。
 女性の「産む性」をめぐる状況は、今もさほど変わらない。未婚なら世間の偏見、生活苦も加わる。「育児放棄」と責める前に、女性の孤独や苦しみを軽くする戸籍制度や育児支援など政治にできることは多い。
 菊田医師は公表当時、自著「私には殺せない」につづった。「最も恐れるのは、現実に迫っている赤ちゃんの生命の危機の問題、暗い過去を背負って歩まねばならない母親の問題を抽象論にすり替えてしまうことだ。」
 今度はどうだ。小さなゆりかごが問いかけている。目をそらさず向き合いたい
               (環境科学部)   》

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