三流読書人

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ドングリ小屋住人 

公務員の賃金

2005年05月27日 06時49分50秒 | 教育 
 人事院が今夏の給与勧告に盛りこむことを目指している国家公務員の「給与構造改革」の「措置案」の概要が23日明らかになった。基本給を全体として5%程度引き下げ、年功的給与を見直すとして、30代半ば以降の職員については削減率を拡大し、最大7%程度とすることなどを打ち出した。措置案では、基本給の削減率について、各府省の局長や審議官なども7%とすることを示唆。逆に新卒者は引き下げを行わない方向で、若年層の職員についても5%未満にする方針を示した。またそれに伴い、民間給与が高い地域には、「地域手当」を新設、地域手当は、3%~18%の6段階の調整幅を設定するとしている。地域手当の支給地域については、民間賃金を基礎資料とし、人口5万人以上の市を単位として指定することを明示した。
 要するに公務員の賃金を引き下げると言っている。
 人事院は国家公務員の給与について、民間の給与を調査し、今年の国家公務員の給与はこれぐらいがよかろうということを国に勧告する。国はそれを受けてほぼそのとおり実施するのが通例となっている。都道府県や地方自治体には人事委員会が置かれ、地方公務員の賃金について勧告する。
 公務員の給与が労使交渉ではなく、こうした仕組みで賃金を決めていくのは公務員は労働基本権を剥奪されているからである。
 憲法第28条は「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」と規定している。が、保障されていない。団結権だけは認めている。
 そのかわり、第三者的機関として人事院、人事委員会がおかれ、民間との整合性を意識しながら、使用者側に給与についての勧告を行う。しかし、人事院、人事委員会ともに、使用者側つまり国や地方自治体の都合の良い人間をおいておけば思い通りになる。労働者たる公務員は賃金を直接使用者と交渉して要求を主張する場がない。団体交渉という形をとって交渉はしても、あくまでも話し合いでしかない。また、使用者側も、勧告を無視して賃金を上げることはできない。国との賃金格差を表すラスパイレス指数が突出していればたたかれる。
 大阪市をはじめ地方都市で職員の厚遇問題が取り上げられ、公務員バッシングのような状況がつくり出されたが、こうしたしくみのもとで、実質的な賃金引き上げのための苦肉の策であったとも言える。公務員賃金を明朗にするためには労働基本権を保障することである。先進国の一部には警察官のストライキを認めている国もある。
 高級官僚や、一部悪徳役人の腐敗は徹底して追求しなければならないが、憲法に保障された労働基本権を剥奪された一般の公務員の賃金の問題については別に考えるべきである。
 民間の企業の労働者の賃金はコストとして計上された予算の中から支払われるのだろう。公務員は税金の一部を賃金として受け取る。しかし、労働力を提供した代償として受け取ることには変わりはない。
 公務員バッシングで溜飲を下げているだけでは、民間の労働者にとっても「明日は我が身」である。
 労働者同士団結し、支え合って、命と暮らしを守り、幸福を追求するということは、時代が変わろうとも根元的な課題である。