鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

一方でアリスは連想が得意、他方で日常的現実を不思議の国と混同(WONDERLAND1‐8)

2013-07-16 12:12:54 | Weblog
 兎の穴を落ちていきながら、アリスが独り言を言う。「こんな風に、どんどん落ちていく経験をした後では、階段から転げ落ちたって、全然気にしない!すると私のことを『なんて勇敢なんでしょう』と、家でみんなが思うわ!それに、たとえ家のてっぺんから落ちたとしても、私は何も気にしないわ!」(こうした考え方が、この時アリスには、非常に真実らしく思えた。)

 ◎アリスの考え方・感じ方(2):アリスのこの独り言から、彼女は、連想が得意だと分かる。ここでは、「落ちる」の連想。“兎の穴をどんどん落ちていく”、“階段から転げ落ちる”、“家のてっぺんから落ちる”と続く。
 そもそも、アリスは、兎の穴をどんどん落ちることに、何の恐怖も感じない。これはなぜか?不思議の国では、日常的現実と異なり、どんどん落ちるにしても、「ゆっくり」落ちるから。アリスはすでに、不思議の国の現実を受け入れている。
 主観的にみると、アリスは、「落ちる」ことに関して、不思議の国と日常的現実を混同する。日常的現実では、“階段から転げ落ちる”ことも、“家のてっぺんから落ちる”ことも、大事件で、ひどく痛いし、大けがをしたり死んだりする。
 かくて、アリスの独り言の内容は、①不思議の国と日常的現実との混同、②彼女は連想が得意であること、これら2点の帰結である。
 なお、独り言の内容が、「この時アリスには、非常に真実らしく思えた」理由は、もっぱら彼女が両現実を混同したことによる(①)。彼女は、日常的現実においても、不思議の国と同じに、階段や家のてっぺんから、「ゆっくり」落下できると、思ったのである。