鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

形容詞は主語に何もさせないが、動詞は主語に何かをさせる(GLASS6-20)

2009-04-18 14:30:09 | Weblog
言葉に対し任意に自分が選んだ意味を与えることができるとハンプティ・ダンプティは言う。しかしアリスは日常世界の住人だから言葉は歴史的に形成された意味だけをもつ。彼女はこんがらがってしまい言葉がない。しばらくしてハンプティ・ダンプティが話し始める。「言葉には気性 temper がある。ある言葉どもは、なによりも動詞は、気位が高い( the proudest )。形容詞はくみしやすいが、動詞はどうにもならない。だが私にかかれば言葉すべてを思いのままにできる」と。

PS:ハンプティ・ダンプティが私にかかれば言葉すべてを思いのままにできると言うのは彼の立場からして当然だろう。だがここでわからないのは言葉に気性があるとはどういうことかである。そしてなぜ動詞は気位が高いのか、またなぜ形容詞はくみしやすいかである。動詞も形容詞も主語に規定を与える。ただし形容詞は主語の属性を示すだけであり主語に何かをさせることはできない。例えばその花が赤い、その犬が大きいと言うとき、花・犬は何かをさせられるわけではない。これに対し動詞は主語に何かをさせる。例えば“その花が咲く”、“その犬が走る”など(自動詞)。また例えば“その花が人を和ませる”、“その犬が肉を食べる”など(他動詞)。このように形容詞は主語に何もさせないが、動詞は主語に何かをさせる。だから動詞は気性が頑固で激しく、そのかぎりで気位が高いといえるだろう。