根無し草のつれづれ

日々の雑感をひたすら書き綴ったエッセイ・コラム。また引用部分を除き、無断掲載の一切を禁ず。

季節の始まりは雨で

2006-09-01 17:23:16 | エッセイ、コラム
九月の始まりは雨だった。
冷たい雨で白い息が立つ。
この所の雨は蒸し暑いものだったので、冷た
い雨はありがたい。
冷たい雨で始まる初秋は、らしくて良い。
庭のコスモスは葉に付いた雨粒の重さでお辞
儀をしていた。
もしかしたら、彼女らの季節ともいえる秋の到
来をようこそと歓待しているのかもしれない…。


そろそろ、八百屋の店先に梨の豊水が並び始
める。
酒香すら漂う豊水は秋の果実の王様といって
よいだろう。
皮を剥くと滴り落ちる果汁、高い香り、梨とは
思えない甘さ、どれもが素晴らしい。

豊水が果実の王様とするならば女王には葡萄
の甲州を挙げたい。
味自体は大した事はないのだが、その見た目
の美しさが何とも良い。
透明感のある乳白色の薄紫に白い粉が吹いた
感じは至極上品である。
DNAを調べた所その起源は中央アジアにある
という甲州葡萄。
どこかミステリアスな雰囲気を漂わせているの
はそのせいかもしれない。
遠い昔にシルクロードを通って日本に辿り着い
た高貴な娘という感じだろうか。

実際は紙で保護されていてそんなものは見れ
ないと思うが、九月の雨が甲州葡萄の実をつ
たい先端から水滴が滴り落ちる様を勝沼あた
りで見てみたい、と思う二百十日の午後であ
る。