北朝鮮非難決議報道―乱れ飛んだ国策報道、NHKはもはや国営放送なのか?/JCJふらっしゅ

2006-07-17 07:38:13 | 北朝鮮
日本が、基地攻撃能力の保持などの強硬路線を突き進めば、問題解決策は自ずと「排除」へと絞り込まれていく。その論理は、人命よりも国家を優先する弱肉強食の論理であり、それは力と力が競い合う人類自滅の論理を拡散させることを意味する。当然それは、人心を内部から蝕み、絶望へと誘うに十分な破壊力を発揮する。その意味でも公共放送NHKのあり方も含め、メディアがいま果たすべき役割について、早急に議論を深める必要があるのではないだろうか。

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□■北朝鮮非難決議報道―乱れ飛んだ国策報道、NHKはもはや国営放送なのか?

 15日、国連安全保障理事会は北朝鮮の弾道ミサイル開発計画の即時停止と同国と
のミサイル関連物資・技術などの取引の停止を盛り込んだ非難決議案を全会一致で採
択した。北朝鮮に対する武力行使を可能にする国連憲章第7章へのアプローチは排除
された。

 北朝鮮に対する強硬姿勢を押し通そうとした日本政府の姿勢は、最初米国に中国の
動きを待つようにたしなめられ、その後、中国の働きかけに北朝鮮が応じようとしな
いことが明らかになるなかで、米国はヒル国務次官補からボルトン国連大使にバトン
タッチ、強硬路線のボルトン大使の放つ文言に日本の姿勢はサイド強硬に傾いたが、
安保理全体は仏英の修正提案に引き寄せられるかたちで、全会一致の非難決議案へと
到達した。

 サンクトペテルブルクでのサミットを目前に控えるなか、米国のバックアップをあ
てにしての日本政府の突出した強硬策は通らなかった。日本のメディアには、中ロの
「拒否権」発動の壁にさえぎられたために、日本は当初からの強硬姿勢を求める姿勢
を矯めて、妥協したように報じたところが多いが、それは「日本勢=米日」からの視
点に傾斜している。そのような古い視点、冷静とはいえない視点からの報道で、これ
からの東北アジアのありようをさぐる正常な議論を喚起することはできない。

 強硬に提案した制裁議案に中ロ以外は賛成しており、中ロが拒否権発動をほのめか
して対抗しており、それを突き崩すのが「日本」の役割であるかのように、政府に引
きずられた報道が目立ったのはとても残念なことである。

 なぜ日本政府は、安保理という国際的な舞台で、真に各国の賛同を得、全会一致を
取り付けていくというリーダーシップの場を与えられずに終わったのか。そうしたセ
ンスを持てず、なぜ、まるでパニックに陥ったような強硬姿勢をさらけだして、相変
わらずの「遅れた島国根性」をさらけ出すだけでおわったのか。

 それを上塗りするように、日本国内向けに「中ロの壁」を強調してつたえ、日本は
それによって「譲歩を余儀なくされた」ような報道が平然と垂れ流される。英仏のリ
ードで全会一致が実現したことなどをきちんと伝えようともしない。それはなぜなの
か。まるで国策報道のような記事やニュースが乱れ飛んだ。公共放送のNHKは、ま
るで自ら国営放送に成り下がったかのような浅薄な報道姿勢が目立った。私はそう感
じている。

「すわミサイル」と初期報道で感情を煽り、武力行使も可能とする制裁案が採択され
るかどうかにずっと焦点を当てた報道は、実に危険であるように思えてならなかった。
市民が冷静な判断を下すための材料を提供せず、あたかも最初から「戦争の判断を下
すのは政府であり、メディアである」と宣言するような報道になっていなかっただろ
うか。市民の厳しい目でのチェックと、メディア人の企業横断的な相互検証とが必要
になっているように思う。

■弱肉強食の論理は、人心を内部から蝕み、絶望へと誘う

 15日の決議案採択をうけて、北朝鮮の朴吉淵国連大使は直ちに、「我々は完全に
決議を拒否する」(AFP=時事)と述べ、北朝鮮軍は将来も、軍事的抑止力の強化
努力の一環として、ミサイル発射訓練を続けると強調して会議の席を後にした。

 韓国・聯合ニュースによると、北朝鮮は週明けにも大使ら在外公館トップを平壌に
招集して緊急会議を開くという。韓国政府によると、北朝鮮は海外52カ国・地域に
大使館、領事館、代表部を置いている(2003年現在)。北朝鮮が同様の会議を開
くのは5年ぶりのことで、金正日総書記が執権を始めた1994年から2001年ま
での間に、経済難などに対応するため大使らを緊急招集したことが3回あるが、それ
以降は確認されていないという。

 北朝鮮の「決議の拘束はうけない」とする姿勢をうけて、政府は、同決議に「拘束
力がある」との見解を示した(時事通信)。外務省は、(1)同日未明の麻生太郎外
相とライス米国務長官の電話会談で決議が拘束力を持つとの認識で一致した、(2)
決議に盛り込まれた北朝鮮へのミサイル関連部品の移転阻止などの措置は「国連加盟
各国に実施を義務付けたものと理解するのが適切だ」とする姿勢を示しているという
(同)。

 こうしたやりとりに、韓国政府は朝鮮半島での軍事的緊張が高まる可能性もあると
して警戒している。韓国・聯合ニュースによると、北朝鮮金正日政権は、「わが民族
同士」は「核先制攻撃は米国にのみ選択権があるのではなく、核も米国の独占物では
ない」と主張。韓国に対しても「(北朝鮮の軍事優先の)『先軍』が育てた強力な軍
事力がなかったら朝鮮半島は既に(米軍が攻撃した)イラクやアフガニスタンと同じ
運命になっていた」と指摘したという(→西日本新聞)。

 西日本新聞は、北朝鮮は13日に決裂した南北閣僚級会談で「先軍が韓国の安全を
保障している」との主張を初めて展開し、米韓合同軍事演習の中止を要求。今回再び
この主張と核脅威を持ち出すことで、ミサイル発射や6カ国協議への対応で韓国を取
り込み、国際的孤立化を防ぐ狙いがあるとみられる、と分析している。

 引き裂かれた同胞と同一民族という思考の枠を、どのように地球市民の共存と平和
の地平へと誘うのか。テロ対策と人道支援を名目に戦争を正当化する米ネオコンの思
想と、それに対抗して撹乱戦術をとる東北アジアの一国。

 日本が、基地攻撃能力の保持などの強硬路線を突き進めば、問題解決策は自ずと「
排除」へと絞り込まれていく。その論理は、人命よりも国家を優先する弱肉強食の論
理であり、それは力と力が競い合う人類自滅の論理を拡散させることを意味する。当
然それは、人心を内部から蝕み、絶望へと誘うに十分な破壊力を発揮する。その意味
でも公共放送NHKのあり方も含め、メディアがいま果たすべき役割について、早急
に議論を深める必要があるのではないだろうか。

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