岩田健太郎『予防接種は「効く」のか? ワクチン嫌いを考える』/市民社会フォーラムML から

2011-01-16 00:06:18 | 社会
岩田健太郎『予防接種は「効く」のか? ワクチン嫌いを考える』
http://www.amazon.co.jp/%E4%BA%88%E9%98%B2%E6%8E%A5%E7%A8%AE%E3%81%AF%E3%80%8C%E5%8A%B9%E3%81%8F%E3%80%8D%E3%81%AE%E3%81%8B%EF%BC%9F-%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3%E5%AB%8C%E3%81%84%E3%82%92%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%8B-%E5%85%89%E6%96%87%E7%A4%BE%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E5%B2%A9%E7%94%B0%E5%81%A5%
E5%A4%AA%E9%83%8E/dp/4334035981
を読みました。

 「反知識(カウンターナレッジ)」=ガセネタとして、ネット上では定番のワクチン陰謀説に騙されず、基本的
な医学的科学的知識を学ぶ上で、とても勉強になります。

 この本の問題設定はこう。
   ↓
< 世の中にはワクチンを忌み嫌う人たちがたくさんいます。
・・・・・・・・・
曰くワクチンは人間の免疫機構を弱めている。
曰く、ワクチンを打つと自閉症や喘息になる。
曰く、ワクチンを打つと牛になる。
とにかくワクチンなんて接種しない方が良いのだ。
 このような「ワクチン嫌い」な人たちがいるということ、そのことを、本書では考えてみたいと思います。 
日本の医療は、世界的に見て優れているところも劣っているところもありますが、こと予防接種に関する限り、
先進国の中ではかなり遅れています。
そのため、本来ならもう「かからなくてもよい病気」にかかって苦しんでいる人たちが、あとを絶ちません。
このことは非常に重大な問題です。>(3~4ページ)

 中でも、ワクチンにまつわる陰謀説3つについてのコメントは、とてもわかりやすかったので、引用します。

■ワクチンで自閉症になる?について
 不活性化ワクチンにには、細菌に汚染されないための防腐剤として「チロメサール」という成分が入っていて
、半世紀以上の使用実績があります。
ところが、1999年にアメリカ小児学会と公衆衛生サービスは、チロメサールをワクチンから除去するよう要求し
大きな議論になりました。
 これについては、
< チロメサールはエチル水銀です。
確かに水銀中毒は脳のような中枢神経に障害を起こすことが知られていますが、これは量の問題があります。ご
く少量の水銀でしたら何の問題もありません。
ワクチンに含まれているチロメサール程度で水銀中毒になったり、また自閉症になるという生物学的な妥当性は
ないのです。
・・・・・・・・・
 自閉症の患者は増えています。
これは自閉症という病気の理解や知識が深まり、より診断がされやすくなったためとも考えられています。
 予防接種をうったたとで自閉症を発症すると、ついつい「予防接種のせいで」自閉症になったと考えがちです

MMRにしても、チロメサールにしてもそうでした。
これはよくある「前後関係」と「因果関係」の取り違えです。 
 前後関係と因果関係を区別するためには、比較するしかありません。
予防接種を打っていない場合と比較すればよいのです。
日本では無菌性髄膜炎という副作用の問題で、MMRが1993年から中止されましたが、その後も自閉症の患
者は増え続けました。
MMRが自閉症を増やしているわけではなかったのです。>
(164~165ページ)

■ホメオパスによる陰謀論
 これもお約束事のように定番ですが、
 油井寅子『それでもあなたは新型インフルエンザワクチンを打ちますか?』(ホメオパシー出版、2009年)
での、
==============
 インフルエンザワクチンは予防効果がありません。
だからインフルエンザの予防接種をすればするほど、そのぶん免疫が低下するので、よりいっそうインフルエン
ザにかかりやすくなるというわけです。
(中略)私も多くのクライアントさんから、インフルエンザの予防接種をしたらインフルエンザにかかったと聞き
ました。
(中略)だから、一度きちんと統計をとってみたらいいと思うのですよ。
インフルエンザの予防接種をした人の方が、インフルエンザやかぜにかかる確率がかなり高くなるはずです。
(65ページ)
==============
という主張について次のように述べています。

< 僕がびっくりしたのは、著者が「統計をとってみたらいいと思う」と言っている。
つまり、統計的にインフルエンザワクチンでインフルエンザが増えるというデータを見ているわけではないとい
うことです。
見ていないのに、「よりいっそうインフルエンザにかかりやすくなる」と断じている。
・・・・・・・・・
 すでに紹介したように、インフルエンザワクチンはインフルエンザを予防する効果があります。
また、インフルエンザの予防接種により、周囲の人もインフルエンザにかかりにくくなる。
つまり「群れの免疫」ができることもすでに示しました。
 このような基本的な「統計」を読みもしないで、想像だけでワクチンを否定してかかる、というのは非常に危
険な態度だと僕は思います。>(194ページ)

■子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)で不妊になる?
< 子宮頸がんの原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン。
最近日本でも承認されたばかりのワクチンですが、このワクチンを打つと不妊になる、と主張する人がいます。
そしてこれは日本人を根絶やしにしようとするアメリカ人の陰謀である、という説すらあります。
「HPVワクチン」「不妊」とかでググるとたくさんの陰謀説が見つかります。
 HPVワクチンを接種してもきちんと妊娠しますし、また早産のリスクも特に増さないという研究も発表され
ています。・・・・・・・・
 きちんとデータを見ず、憶測や思いつきでものを言うことは絶対に避けなければいけません。
そして、僕たちプロは、「デマ」「思いつき」を無視することなく、一つ一つしらみつぶしに否定していかなけ
ればならないのです。
本当にすごい暴論も多いので、まさに「シラミ」をつぶすような作業ですが。>
(201ページ)


 どうして、「ワクチン嫌い」がこんなに広まっているのか?
<「好悪の問題」を「正邪の問題」にすり替える>ことがあるのではということです。
 前者の問題は<個人的な主観>ですが、後者は<客観的な事実関係>を扱っている(ように見える)のであって

< この「好悪と正邪のすり替え」は、よく観察していると多くの大人が日常的にやっています。
僕らはよくよく注意して、自分のステートメントが自分の好き嫌いから生じているのか、それとも事実から浮き
出てきた結論なのか、考えてみなければなりません。
多くの場合は、前者なのです。
 「ワクチン嫌い」の言説は、好き嫌いから生じていると僕は思います。
最初は好き嫌いに始まり、そして「後付けで」そのことに都合の良いデータをくっつけ、科学的言説であるかの
ように粉飾します。
都合の悪いデータは罵倒するか、黙殺します。>
(203~204ページ)

 個人の主観と客観的な事実関係、あるいは個人の体験と客観性・普遍性を区別することが危うくなり、
個人の経験という主観的な側面が、客観性に取って代わるということになるので、それが現代社会の病理的現象
と思えることの共通点・類似点になっているのでしょうか?


 人の命にもかかわるようなことをよくも、と思う事例は挙げればきりがありません。
http://kikuchiyumi.blogspot.com/2010/06/blog-post_26.html
http://kikuchiyumi.blogspot.com/2010/02/blog-post_16.html
http://kikuchiyumi.blogspot.com/2010/11/msg.html
http://blog.goo.ne.jp/nakanisi-sakai/e/0f97e46d243d27875d8f3fc709d5e867


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