核産業(核兵器と原子力)を覆うIAEAとWHOの密約/パレスチナ連帯・札幌 松元保昭

2011-06-28 08:33:06 | 世界
劣化ウラン問題で活躍されている嘉指信雄(ICBUWヒロシマ・オフィス)さん  
 http://icbuw-hiroshima.org/ 
から紹介されたガーディアン紙記事を童子丸開さんが翻訳してくれましたので、転載いたします。
(英文対照は下記サイトでお確かめください。万一文字化けの際にも。)
http://doujibar.ganriki.net/fukushima/how_nuclear_apologists_mislead_the%20world_over_radiation.html

この記事には、二つの大きな問題が指摘されています。ひとつは、「外部被曝と内部被曝の違いが分からないモンビオット氏」について、いまひとつは、1956年には「原子力産業と放射線源の拡大によって将来の世代の健康が脅威に曝されていると断言する」と警告していたWHOが、「1959年以後、WHOはもう二度と健康と放射能について語らなくなった。これはなぜか。」と指摘していることです。

日本には、原発推進行政に取り込まれた多くの「モンビオット氏」がさかんに「安心教」を振り撒いています。そして低線量被曝・内部被曝を争点とする闘いは、劣化ウラン兵器をふくむ核兵器と原子力(核)産業の推進、管理、規制、維持を掌握している米欧日核同盟との闘いを余儀なくされるでしょう。カルディコット博士の分かり易い指摘は、私たちを励ましてくれます。

ちなみにイスラエルの核兵器保有を事実上容認しているIAEAは、ことさらにイランや北朝鮮の核開発を俎上に載せて、人種差別と戦争犯罪国家のイスラエルを擁護する米欧核同盟戦略の出先機関の役割も遺憾なく発揮しています。日本国と現代世界を襲っている不正と不公正の淵源の「二重基準」がここにも顔を出しています。(以上松元)

=======以下転載========
《WHOを縛り付けるIAEAとの合意》
(ガーディアン記事和訳)

 これは2011年4月11日付の英国紙ガーディアンに掲載された記事の和訳です。記事作者のヘレン・カルディコット医学博士はオーストラリア生まれで、放射線による健康障害への警告を国際的な規模で38年間にわたって続けている人です。
ホームページはこちら。 http://www.helencaldicott.com/

 この記事はジャーナリストのジョージ・モンビオット氏がガーディアン紙に寄せた文章に対する反撃となっていますが、話の後半で非常に興味深い事実が語られています。それはWHO(世界保健機構)とIAEA(国際原子力機関)との関係で、WHOがどうしてIAEAにとって都合の悪い調査や研究ができないのかという理由です。IAEAが実質的に世界の原子力関連企業の利害を代表する組織として動いていることは、もう周知の事実となっているでしょうが、世界の健康と医療の状況を把握し監視する役目を帯びているはずのWHOもまた、原子力関連企業に縛り付けられているわけです。

 これに関しては下記の「ざまあみやがれい!」様の記事をぜひご覧ください。
    http://blog.livedoor.jp/amenohimoharenohimo/archives/65740041.html
    IAEAとWHOが談合して、チェルノブイリ被害を隠蔽している根拠【動画】
 このページから次の動画サイトにリンクします。
    http://www.universalsubtitles.org/en/videos/zzyKyq4iiV3r/
    Chernobyl: A Million Casualities

 こちらに動画に付けられた日本語字幕も紹介されていますが、この動画をご紹介の「ざまあみやがれい」様のページでは画像といっしょにその一つ一つが紹介されています。
 IAEAの実態については、この「フクシマからの警告」に収められている「チェルノブイリの失敗が何も学ばれていない(スペイン紙記事からの翻訳)」もご参照ください。

 今から日本でも、今まで以上に組織的で膨大・悪質な実態隠しが行われる可能性が高いでしょう。福島の15歳未満の子供と妊婦に公費で配られた線量系「ガラスバッジ」は本人が数値を確認できないのですが、いったい誰がそれを集めどこでどのようにデータ化するのでしょうか。そこから何がしかの情報が公表されるのでしょうが、いままで十分に明らかになっている虚報の恒常化の中で、それらをどのように評価できるのでしょうか。全てが不透明です。

 また、このガーディアン記事で紹介されているジョージ・モンビオットのような論客による、被爆に警鐘を鳴らす人々に対する脅迫的な非難と妨害が、今からさらにそして急激に多くなっていくでしょう。彼らのような存在こそ最も気をつけなければならないものです。彼らは原子力安全神話の憲兵たちなのです。そこには著名なジャーナリストや有力なマスコミ、有名大学教授などが大勢参入することでしょう。それが誰なのか、私たちはその一人ひとりに注意を向ける必要があります。

 そしてまた、過去の不正に気づいた意識ある人々による測定と記録の努力、それをまとめて分かりやすくデータ化して公表する良心ある科学者やメディア、それを現実の行政につなげる努力を惜しまない国を愛する政治家や行政官の働き、そして何よりも、事実を求め自ら考えて行動しようとする大勢の一般国民によって、彼らの悪影響を最小にすることができるでしょうし、またそうしなければなりません。

 なお、原文の「nuclear」がエネルギー関連で使用されている場合には、本当はすべて「核」と訳したいところですが、日本の習慣に従って基本的に「原子力」と訳しています。

 翻訳はあくまでも私(童子丸開)による暫定訳であり、英文原文のコピーと並べての対訳としています。訳文中にある[1],[2]は作者による脚注の番号を現します。【注1】【注2】等は訳者によるもので段落ごとに注釈を施したものです。また、原文に施されたリンクは訳文にもその箇所に相当する部分にリンクを施しています(下線部)。

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  
http://www.guardian.co.uk/environment/2011/apr/11/nuclear-apologists-radiation

《原子力の擁護者たちは放射能についてどのように世界をミスリードしたのか》
How nuclear apologists mislead the world over radiation

ジョージ・モンビオットたちは、原子力エネルギーの危険性の根拠について、良く言って誤報、悪く言えば捻じ曲げを行っている
guardian.co.uk,
ガーディアン 20011年4月11日(月曜日) 英国標準時12時10分

(写真:Urlのみを示す)
http://static.guim.co.uk/sys-images/Guardian/Pix/pictures/2011/3/31/1301559246706/A-Japanese-girl-is-screen-007.jpg
(写真の説明:福島原発から40kmほど離れた飯館で放射線検査を受ける少女。そこでは高濃度の放射能が測定されている。)

先月起きた福島原発事故のすぐ後で、私は、この規模の事故と破局的な可能性が極めて広い地域で医学的な問題を表に現すかもしれないと公に述べた。低レベル放射線の健康への影響は「最小限である」という原子力産業のキャンペーンにもかかわらず、私の観測が正しいことは明らかになってきている。批判者に対する原子力産業からの攻撃を見れば、福島の事故が「原子力ルネサンス」を減速させれば彼らの何十億ドルというお金が危うくなることがはっきりする。解決不能で拡大しつつある福島の原子炉群の災厄と対面しているにもかかわらず。

ジョージ・モンビオット【注1】は、ダマスコへの道の神秘的な回心【注2】を経験してビナイン・イフェクツ【注3】と思われる方向に向かった者だが、彼を含む原子力の推奨者たちは、この事故で起こりうる深刻な医学的影響への注意を呼びかける私やその他の人々に対して、破壊された核燃料と貯蔵プールから出る放射能の健康に対する影響をデータの「えり好み」をして大げさに言っていると非難する。しかしながらモンビオットや他の者たちは、放射能汚染などたいして悪いものではないと人々を安心させることによって、放射線被爆の有害な効果の科学的な根拠について、良く言って誤報を、悪く言えば虚報あるいは捻じ曲げを行っている。そして彼らはその過程で先の見え透いたシュート・ザ・メッセンジャー・ゲーム【注4】を行うのだ。

【注1】ジョージ・モンビオットは英国の作家、ジャーナリスト。(参照)
【注2】聖パウロが、キリストの使途たちを逮捕するためにダマスコ(ダマスカス)に向かう途中イエス・キリストの幻影を見てキリスト教徒に改宗したという新約聖書の記述を借りた表現で、福島原発事故を知ったモンビオットが急に原発擁護者として現れたことを意味していると思われる。
【注3】このbenign effectsはどうやらコンピューター・プログラミングの用語のようであり、適当な日本語訳が見当たらないのでそのまま音訳した。benignは「優しい、温和な、良性の」というような意味なので「温和化効果」あるいは「無害化効果」とでもいえるかもしれない。
【注4】ビデオゲームの一種だが、これについてはこちらのカルディコットの文章「Nuclear apologists play shoot-the-messenger on
radiation」を参照のこと。

すなわち:
1)モンビオット氏は科学者ではなくジャーナリストだが、外部被爆と内部被爆の違いが分からないようだ。
教えてあげよう。

外部被爆は1945年に広島と長崎の上空で原子爆弾が炸裂したときに人々がさらされたもので、その深刻で現在でも続く医学的な影響は十分に報告されている。[1]

その一方で、内部被爆の方は、呼吸や食べ物や皮膚からの吸収によって体の中に入った放射性の物質によって現れるものである。ヨウ素131、セシウム137やその他の同位元素のような有害な放射性核種が、いま福島周辺の海や空気の中に放出されつつあり、様々な食物連鎖(たとえば海藻、甲殻類、小さな魚、大きな魚、そして人間へと続く;または土壌、草、牛肉や牛乳、そして人間へと続く)の一つ一つの過程で濃縮される[2]。体内に入ってからそれらの物質は-体内放出体と呼ばれるが-甲状腺、肝臓、骨、そして脳といった特定の器官に移動し、そこで小量の細胞を大量のアルファ線やベータ線、そして(または)ガンマ線を長期間にわたって照射し続け、コントロールの効かない細胞増殖、つまり癌を発生させる。さらには、多くの核種が何世代にもわたって環境中で放射性を保ち、時を越えて癌や奇形などを増やす原因となり続けるだろう。

この内部被爆の深刻な影響が福島での最も深刻な関心事である。内部被爆を評価に入れると「許容可能な外部被爆のレベル」という用語を使うことは不正確であり誤誘導をもたらす。モンビオットはそうしているのだが、それは不正確さを世間に広め、(他のジャーナリストたちはもちろん)放射線障害の真実を求めている世界中の人々を誤誘導することなのだ。

2)原子力産業の提唱者たちはしばしば、少量の(たとえば100ミリシーベルトの)放射線は病気の原因とならずしたがって安全であると主張する。しかし米国科学アカデミーのBEIRⅦ報告書は、放射線の量に安全などは無く、自然放射能を含むいかなる少量の放射線による被爆であっても、蓄積されて個々人に癌を成長させる危険性を付け加えると結論付けている。

3)チェルノブイリを振り返ってみよう。定評あるように見える様々な集団が、1984年の破局的な放射能災害からの罹患率と死亡率について、様々に異なった報告書を出している。世界保健機構(WHO)は2005年に、チェルノブイリ事故と直接につながる死亡者数はわずかに43人であるとし、それに加えて癌による死亡者が4000人であると推測する報告を行った。一方で、ニューヨーク科学アカデミーによって作られた「Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People
and the Environment(チェルノブイリ:人々と環境に対する破滅的事故の影響)」は非常に異なった結論に達している。アレクセイ・V.ヤブロコフ、ヴァッシリ・B.ネステレンコ、そしてアレクセイ・V.ネステレンコという3人の学者が、過去20年間にわたってスラブ語の出版物に現れてきたチェルノブイリ事故の影響に関する何百という科学記事を、翻訳し総合的に編集して提示してくれる。彼らはチェルノブイリ・メルトダウンが原因の死亡者数を、およそ980000人と推定する。

モンビオットはこの報告を無価値だとして投げ捨てる。しかしそのように、人間の身体と環境に対する膨大で明らかな悪影響の証拠を提供する何百もの研究を、その文体の全てをひとまとめに無視し中傷することは、傲慢であり無責任である。科学者たちはそれらの事柄について、たとえば個々の評価(評価の信頼性を示す)をめぐる信頼区間【注1】として、議論できるしまた議論すべきである。しかし、その報告全体を隠喩のゴミ箱に放り投げるのは恥ずべきことだ。
【注1】「信頼区間」は統計用語で、母数がどのような数値の範囲にあるのかを確率的に示す方法

さらに、ウクライナ国立科学アカデミーのディミトロ・ゴジンスキー博士がその報告書のイントロダクションで述べているように、「このような説得力あるデータの背景に対して、原子力エネルギー擁護者たちの一部は、それを見かけだけのものだとみなして人々に対する放射線の明白な悪影響を否定する。実際に彼らは、医学的・生物学的な研究への資金提供をほぼ完璧に拒否するといった反応もする。『チェルノブイリ事故』に携わった政府機関を解体することまでやるのだ。原子力ロビーの圧力を受けて、役人たちも同様に、チェルノブイリによって起こされた問題の研究から科学研究者を遠ざけている。

4)モンビオットは、WHOのような国連に属する機関が原子力産業の影響下にあり原子力についての報告にバイアスがかかっていることに驚いてみせる。しかしながら、そのことがまさに問題なのだ。

原子力の初期の時代には、WHOは、1956年に行った次の警告のように、放射線の危険性について率直に報告を行った。「人類にとって遺伝的な継承が最も重要な財産である。それは、我々の子孫の生活を、未来の世代の健康と調和ある発展を決定する。専門家として我々は、原子力産業と放射線源の拡大によって将来の世代の健康が脅威に曝されていると断言する…。我々はまた、人類に現れる新たな突然変異が人々とその子孫に対して有害であると確信する。」

1959年以後、WHOはもう二度と健康と放射能について語らなくなった。何が起こったのか? 1959年5月28日、第12回世界保健会議で、WHOは国際原子力機関(IAEA)との合意文書を作成したのだが、その合意書の一節12.40に次のように書かれている。「この二つの機関(WHO、IAEA)のどちらか一方が、他方の機関が多くの関心を持つあるいは持つかもしれないテーマについての計画や行動の開始を提案するときには、いつでも、前者は後者と相談のうえお互いの合意によってそのことを調整しなければならない。」言い換えると、WHOは自らが引き受け報告するかもしれないあらゆる調査について、事前の合意を求める権利をIAEAに授けるというのだ。ジャーナリストを含む多くの人々がIAEAを中立な監視機関だと思っているだろうが、実際には原子力産業の弁護者である。その設立趣意書は次のように述べる。「この機関は、世界中の平和と健康と繁栄に対する原子力エネルギーの貢献を加速し拡大しようと努めなければならない。」

モンビオットはWHOのIAEAへの服従について無知であるように思えるのだが、このことは放射線科学のコミュニティーの中では広く知られている。彼が放射線と放射能の膨大な科学的情報の実態について一夜漬けの勉強しかしていないことは明らかだが、彼の無知がこの点一つではないことは明白である。我々が見てきたように、彼や他の原子力産業の擁護者たちは放射線の危険性に関して、これは私の見方だが、何十年か前に喫煙の危険について煙草産業がやったのと同じような方法で、混乱を植えつけている。彼らの主張にもかかわらず、「人間の健康に対する放射線の悪影響について世界を誤誘導している」のは、「反原子力運動」ではなく彼らのほうなのだ。

●ヘレン・カルディコットは、「核の無い地球を求めるヘレン・カルディコット基金」の総裁であり「Nuclear Power is Not the Answer(原子力は解
答ではない)」の著者である。

【脚注:英文のまま掲げる】(省略しましたので、サイトで確認してください。松元)

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パレスチナ連帯・札幌 代表 松元保昭
E-Mail : y_matsu29@ybb.ne.jp
振込み口座:郵便振替 02700-8-75538 
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