NHKニュースで報道された帰国者(蓮池・地村さん)の証言について/荒木和博

2005-12-30 23:52:46 | 北朝鮮
[特定失踪者問題調査会NEWS 321](17.12.30)に荒木和博が以下の記事を掲載した。救う会の混乱や焦りが、かいま見える興味深い内容ではある。

■NHKニュースで報道された帰国者の証言について

                     荒木和博

 先程NHKニュースで蓮池さん、地村さんからの情報として、彼らの拉致に辛光洙や西新井事件に登場する朴などの工作員が関わっていたとの報道がなされました。

 彼らがいつ、どう話したのかはぼかしてありましたので、詳しくは分かりませんが、一寸気になったので感じたことを書いておきたいと思います。本来なら本人たちに確認すべきところですが、私が聞いても話してはくれないと思いますので、以下は乏しい情報をもとにした私の直感に過ぎないことを予め申しあげておきます。

 ニュースを見て感じたのは、辛光洙と朴では、あまりにも役者が揃い過ぎているのではないかということです。だからといって証言を否定する材料にはならないのですが、それなら何で今ごろ話が出てきたのかということが気になります。

 私は、少なくとも地村さん夫妻については、拉致された現場は小浜公園の展望台ではないと思っています。蓮池さん夫妻にしても、分かっていることは柏崎の図書館に自転車置場に自転車があったことだけです。彼らはすべてを政府に話したと言っていますが、本人達の認識はどうであれ、限られた時間ですべてを話したなどということはあり得ません。

 かつて韓国の安企部は1人の脱北者に対して何カ月もかけて聞き取りをしていました。どこの道がどうなっているということまで、精密に聞取りをし、それを持っている情報と突き合せて嘘や過ちがないかを確認していきました。それでも半年ぐらいしてから「そういえばこんなことがあった」という話が出てくると聞いたことがあります。彼らの場合は拉致被害者なのですから、持っている情報は1級のものであり、1日や2日ですべての情報が出てくるなどということはありえません。今の程度で警察が「全部聞いた」と言うのなら、警察には情報機関としての能力がほとんどないということを証明しているようなものです。

 また、彼ら5人が帰国した当初、出てきた話は横田めぐみさんの話ばかりでした。それは明らかに横田滋・早紀江夫妻を平壌に呼ぶため(そして、それで拉致問題を終わりにするため)の情報でした。彼らの本心がどうであるかは別として、流されている情報は、誰かの意図によるものであることは間違いないと思います。

 一昨年の末に平沢勝栄議員らが中国で北朝鮮の担当者と会い、その後山崎拓氏も行って、5月の第二次訪朝とつながった流れは、明らかに北朝鮮と日本側で拉致問題についての「落し所」(当時は帰国者5人の家族の帰国)が定められ、そこに向って色々なものが動いたものでした。バックには経済制裁実施をめぐって北朝鮮が危機感を持っていたことがありました。そして、山本美保さんのDNA事件が起きたのは昨年3月です。

 今回もそういう意味では非常に似たものを感じます。拉致と国交問題を分離して日朝交渉を行う方式が決ったこと、西村議員が逮捕され、保釈直後にこの情報が出たこと、さらに古川さんの認定訴訟での政府側の時間稼ぎなど、色々なことをつなぎあわせてみると、犯人を今名前の出ている人間だけに限定し、何らかの落し所を設定して、一気に国交正常化への道筋を付けてしまうというシナリオが日朝両国の間でできているのではないでしょうか。年末年始は急な事態には対応がしにくく、気がついたらすべてお膳立てができていたということになる可能性もないとは言えません。

 これまでの流れに照らして考えれば、おそらく北朝鮮は北朝鮮で、表面上の強がりと逆に、かなり深刻な体制危機に陥っているのではないでしょうか。それと今回のことはリンクしているはずです。したがって、これが大きなヤマであることは間違いなく、ピンチでもありますが、逆に使えば金正日体制を倒せる千載一遇のチャンスかも知れません。各位におかれては今後の動きに十分注意されるようお願い致します。


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