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株式会社 ハウスショップ 東京都町田市

罠・・・・21

2020年02月11日 | 不動産業界

山川の葬儀は終りましたが
会社はその余韻にいつまでも浸る訳ではありません。
欠けた人員の補充に動き出します。
すぐに本社から山田常務がやってきて
山本が呼ばれました
そして会議室に入り
用件を口にしました
それは
店長になれ
って言葉でした。
まだ肩書きは主任ですから
役職を飛び越える事になります
しかし
山本は店では古く
しかも過去の成績は一番安定していましたので
適任と判断された訳です。
それと
山田常務には他から店長を連れて来たくない理由がありました
その事を山本は後になって知る事になります。

店長への昇進
本当は有難く受けとこですが
山本には迷いがありました
それは
最近まだ明美の様子が少しおかしいのです。
夜家に帰っても
流しには食器が汚れたまま積んである
そんな事が多くなりました
また祐太が言っていましたが
外で遊んで少し暗くなってから返ってくると
家の中で電気も点けずに
お母さんがボーットしてる
そんな事が何度かあったそうです。
それでも普段は普通に過ごす事の方が多いのですが
山本は明美の異変を感じて
それがいつも心の中に影を落としていました。
ですから
ここで中途半端に店長になれば
会社に迷惑をかける
そう思った山本は
山田常務に
その事を話して
今回の昇進は見送って欲しい
そう懇願しました。
山田は想像してなかった言葉が山本の口から出たために
少し驚きましたが
すぐに分かった
また連絡する
と言って戻って行きました。
その山田常務から山本に電話があったのは翌日の事です
新しい店長が決まったから明日早速連れて
って話しでした。
そしてその通り翌朝
山田常務が新しい店長を連れて来ました。
驚いた事に
新宿店の宮本です。
山田常務が言うには
この宮本が山川の仕事を理解してるので
山本が店長を引き受けられないのであれば
この宮本に店長になってもらう
そう言っていました。
まぁ山本は断わった訳ですから
誰が店長になろうと
文句を言う筋合いはありません。
ただ宜しくお願いします
とだけ伝えました。

宮本が店長として異動して来たのは1週間後です。
まず山川の仕事を確認して
それを引き継ぐ
その作業に数日費やしていました。
ただ
その様子を見ていて
山本は少し違和感を感じていました
それは
山川と同じで
何か表情が暗いのです
それが何かは分かりませんが
明らかに怯えてる
そう感じました。
まぁしかし
それは山本には関係ありません
不動産の仕事は元来自己完結の仕事です
店長が誰であろうが
営業は自分で顧客を見つけ
見込み客を作り
契約にこぎつける
この繰り返しです。
ですから
山本も日々自分の仕事をこなす
これだけで時間は過ぎて行き
宮本店長の事もそれほど気にする事も無くなりました。
ところがそれから1ヶ月後
山本は思いもかけずに
亡くなった山川店長と
新しく着任した宮本店長
この二人が怯えていた理由を知る事になります。

それは
宮本店長が他の社員が全員返った後
山本に話しかけて来た事から始まりました
いきなり山本に聞いてきたのです
山川店長からお金を預かってませんか?

宮本からすれば山本は部下になりますが
なぜかいつも敬語でした。
それを言われて山本はすっかり忘れてた事を思い出しました
数年前に鎌田と付き合ってた頃の裏金
これがまだ300万円
机の奥に紙袋で眠ってるのです
ですから
はっきり答えました
数年前から預かってる300万円があります。
と答えると
宮本は
それ私に下さい
とストレートに言って来ました。
私に下さいと言われても
この金は確かに裏金ですが
宮本には何の関係も無いお金です。
ですから
そうですか
と簡単に渡す訳にも行きません。
ですから
山本は
私が納得出来る様に説明して下さい
と言いました。
すると宮本は
この店舗に来る事になった時から
山本にはすべて打ち明けて協力してもらう
そう決めてたようで
分かりましたと言って
誰も居ない会議室に移るように言って
そこで語り始めました。
なぜ山川が怯えてたのか
また宮本もなぜ暗い顔をしてるのか
更に
山田常務が宮本をこの店舗の店長にした理由も分かりました。
最初に宮本が
紀州開発は分かりますよね
と聞いて来ましたので
それが神奈川県の業者で
山本が親しく付き合ってる事
そして山川店長とからんで物件を抱かせてる事
この程度の事は分かってると言いました。
すると
宮本は
明洞のお金もそこから作ってるのは知ってますよね
とためらう事無く聞いてきました。
裏金作りは
山本の方が先輩
自分はそれを真似ただけ
そう言わんばかりでした。
山本は
はっきりは分からなかったけど多分そうだと思ってた
って答えました。
すると山本は
その紀州開発と大きなトラブルになってる
って事を語り出しました。
それは
紀州開発が不良在庫を抱えて苦しくなってる事
そして
その結果
それまで円満な関係だった
宮本と山川に噛みついて来た事
そんな話しをしました。
具体的には
宮本と山川に言われるがまま物件を買っていたら
こんな結果になってしまったので
その責任をとって欲しいと言って来たのです。
そして
その責任とは
これまで支払った仲介料7000万円全額の返還と
山川と山本に貸したお金全額
合計1億を返せ
って言って来たのです。
いくら宮本が勧めたからと言っても
プロである不動産屋が
自分の判断で購入した訳であり
今更仲介料を返せ
って話しは通らないし
突っぱねるべきです。
実際に山本もそれは断わったそうです
ただ
問題は貸したと言う3000万円です。
これは実際には裏金として貰った訳ですが
山川と宮本は借りたと言う認識はありません。
貰ったのです。
しかし紀州開発の経営が苦しくなると
貸したって話しになって来た訳です。
これも突っぱねる事もできますが
それが出来ない理由があります。
そのお金の一部は
山田常務に渡っていて
紀州開発の社長は
それを知ってるのです
ですから
最近になって言ってる事は
返さないと言う事であれば
山田常務も含めて話しがしたい
そう主張して来たのです。
そして
山川と相談した結果
仲介料は諦めてもらい
その代わり3000万については
山川と山本で負担して返す
そう話しをつけたのです。
山本は自宅を担保に1500万を借り入れてそれに充てる予定でしたが
山川店長は急死したために
残りの1500万も宮本が負担せねばならず
その足しにするために
山本が預かってる300万も使わせて欲しい
と言う話しでした。
山本は
その話しを聞いて納得しました。
すぐに
机から300万円を持って来て
宮本に渡すと
宮本は深々と頭を下げて礼を言いました。
ただ
山本は思いました。
山田常務も負担するべきでは?
なんせ山川店長には
さんざん明洞ではお世話になったはずです。
しかし
それは山本が関知する事ではありませんし
山川店長からお金が流れたと言うのは
確証は無く単なる想像ですから
これ以上それに触れるだけの材料も無い訳です。

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