最近はすっかり聞かれなくなりましたが
私が若い頃の不動産業界では
クロージング
って言葉を良く使っていました。
本来の意味は別にお客様の自宅は関係ありませんが
不動産業界では
自宅にお邪魔して
最後の決断の詰めをしてくる
って意味で使っていました。
実際に私自身も機が熟したと思えば
そうした物です。
別に無理やり買わせる訳ではありません。
不動産は大きな買い物ですから
お客様の不安
この解消が大きく成否を分けますから
お客様の空間にあえて訪ねて
リラックスした状態で判断してもらう訳ですから
別に悪い話でもありません。
それと
自宅に招いた段階で
もうお客様の腹は決まってる訳ですからね。
特に説得する必要も無いのです。
ただ
私の場合は招かれて行った訳ですが
他社の営業マンたちは
クロージングに行く
って言う時には
招かれても無いのに押しかけて行く
って感じで使っていましたね。
当時は強引に不動産を買わせる
こんな手法がまかり通っていて
そんな会社が大きくなって行きました。
まぁ私には合いませんので
横目で見ていましたが・・・・
しかし
招かれるのと招かれない
その違いはありますが
いずれにしても
その最後の勝負所はお客様の自宅
これが昔は多かったのです。
昔は今より飲酒運転の基準は緩かったので
話がまとまれば
奥さんが手料理とビールを持って来て
お祝いの乾杯
そんな事も良くありました。
が
あれから数十年
不動産業界もすっかり変わりました。
自宅を売る場合は
相変わらずお邪魔しますが
買い希望のおお客様の自宅に訪問
なんて事はすっかり無くなりました。
ですから
商談はすべて会社の事務所で行います。
まぁ今の若い人はこれに何も違和感は無いのかも知れませんが
私は時代が大きく変わった
それを感じてます。
ただ
この自宅
不動産屋だけが行かなくなった訳ではありませんよね。
昔は上司のご自宅にお邪魔するとか
あるいは同僚の家に泊めてもらうとか
普通にやってましたが
いつの間にかそれをやらなくなりましたね。
そしてその理由を考えると
面白い事に
住宅が広くなったから他人を招かなくなったのです。
理由は
住宅が狭い内は
住人より部屋の数が少ない訳ですから
家族で部屋を共有する事になります
ですから
自宅であっても個人の空間は確保できないのです。
部屋を共有していれば
お客様が自宅に来る
これにも抵抗がありませんから
昔はお互いに行き来していたのです。
ところが
家が大きくなり
家族が自分の個室を持つようになると
自分の縄張りが出来て
そこに他人が入り込む事が苦痛になります。
子供部屋にお母さんが勝手に入って
大ゲンカ
どこの家でも頻発するようになった筈です。
自宅に家族それぞれの縄張りが出来ると
家そのものが縄張りの集合体になりますから
家族以外の人たちは
歓迎されない
そんな空間になったのです。
まぁ皮肉な話ですよね。
たくさんの人が来ても困らないように
大きな家を作ったのに
その広さ故に
排他意識が強まり
人が来なくなった
これが日本の住宅の変化です。
住宅が広ければ
人間は排他的になる
住宅難から住宅が有り余る時代まで不動産の仕事をして分かった事です。
そして
その排他性は
人間の精神状態にも大きく影響する
これも周りを見てつくづく感じています。
兄弟でも一旦家を出れば
もうお互いに連絡をとらない
そんな人たちが増えましたね。
これでは孤独になるのは必然です。
そして
その孤独な人たちをたくさん相手にしますから
その中には
情報不足故に視野が狭まり
その狭まった視野ゆえに猜疑心が強まり
猜疑心が強まった結果
恐怖と不安に襲われる
これが今の時代に生きる人達にたくさん見られます。
具体的に書きたい所ですが
なんせたくさんいる訳ですからね。
お叱りを受ける事になりますから
あえて深くは触れませんが
いずれにしても
住宅事情が良くなれば
その代償も大きいって話です。
一番の皮肉は少子化ですね。
大きな家でたくさんの子供を育てる・・・
筈が
大きな家故に排他的になり
カップルができないのです。
本当にやっかいです。
史上最高の住宅環境を手に入れて
大きな問題が発生した
ってのが私の感覚です.
