窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

【WBN】Making of the GRITS(アイスホッケーチーム横浜GRITSの歩み)

2023年06月04日 | WBN情報


 6月1日、WBN(早稲田ビジネスネット横浜稲門会)の分科会に参加してきました。コロナの影響により実に久しぶりの開催であり、僕自身2019年以来4年ぶりの参加になります。



 今回は、プロアイスホッケーチーム「横浜GRITS」共同代表の御子柴高視様より、「横浜GRITSの軌跡とこれから」と題してお話しいただきました。

 また、初代キャプテンの菊池秀治様をはじめ、以下の現役選手にもお越しいただきました。

小野航平選手
鈴木ロイ選手
杉本華唯選手
務台慎太郎選手



 西武鉄道、コクド、王子製紙、古川電工、雪印等々、アイスホッケーを全く知らない僕でも名前だけは聞いたことがある日本アイスホッケーリーグの衰退に伴い、現在アイスホッケーは2004年から始まった、アジアリーグという形で、日本、韓国、ロシアのプロクラブチームによるリーグ戦で行われているそうです。一時は中国のチームが参加していたこともありましたが、昨シーズンはコロナやウクライナ戦争の影響もあり、日本5チーム、韓国1チームで行われました。

 横浜GRITSはアジアリーグへの参画を目指し、2017年に準備が始まり、2019年に発足しました。「夢と活力に満ちた社会を作る」を理念に掲げ、その大きな特徴は、選手全員がプロ選手と一般社会人としての仕事の二つを両立させる「デュアルキャリア」と呼ばれるシステムにあります。これはチームの母体企業の社員としてプレーする実業団や、別に仕事を持ちながらアマチュアとしてプレーする形とも異なります。アイスホッケーに限らず、日本における多くのスポーツがプロ選手としての収入だけでは生活できない中、多くのアスリートが生活のため競技を諦めざるを得ない現状があります。また、プロ一本でやれていた場合でも、引退後のセカンドキャリアは大きな問題となっています。そこでGRITSは、当初から二つの仕事を両立させる「デュアルキャリア」を土台としてスタートしたのです。これはアイスホッケー以外の競技でもロールモデルとなり得る画期的な試みだと思います。そんなチームのクレド(信条)は、「やり抜く力を以て、常に新しいことに挑戦し続ける」、チーム名GRITSは、「やり抜く力」を意味するGRITから来ています。



 アイスホッケーをプレーするためのリンクは、競技が盛んな北海道には21、東北で14あります。しかし、合計で2,300万人もの人口を擁する東京には9つ、神奈川には3つしかありません。しかし、それでも横浜にチームを作ることを選んだのは、既に北海道に2チーム、岩手に1チーム、栃木に1チームあるということもさることながら、実は東京都はアイスホッケー連盟に所属している大学だけでも38校あり、それなりに競技人口を持った地域であること、さらに横浜は土地柄、巨大な東京より地域密着を打ち出しやすいといったことがあったようです。

 「氷上の格闘技」とも呼ばれるアイスホッケーをしながら仕事も両立させるというのは、惰眠を貪っている僕からすればどれだけ大変なことかと思いますが、さらに驚いたのは練習が週3回、仕事前の早朝に行われるということです。これは仕事後では疲労や残業などで一緒に集まるのが難しいということもありますが、タダでさえ練習できるリンクが少ない上にメインの時間帯はより人気のあるフィギュアスケートなどに抑えられてしまっているということが大きいようです。さらに驚いたのは、そんな事情ですから大学生などは深夜2時などの練習が当たり前なのだとか。加えてシーズンに入れば北海道、東北のみならず韓国への遠征もあるでしょう。その他にもスクール開催などの地域活動もあります。デュアルキャリアは、我々は想像する以上に過酷だと思いますが、それでも競技、仕事どちらにも手を抜かない、文字通り「やり抜く」を信条とされている選手の皆さんのお話を窺うと、それだけで込み上げてくるものがあります。

 さて、アジアリーグ参入前の創成期。母体企業があるわけではないので、何より資金集めに奔走。運営スタッフもボランティアだったそうです。そしてとにかく試合をしなければ、ということで大学チームや招待された香港のチームと練習試合を行いました。

 本格始動した2019年~20年シーズン。アジアリーグ参入を目指して、20年3月、王子イーグルス(現レッドイーグルス北海道)、ひがし北海道クレインズとチャレンジマッチを行います。ところが、これからという時にコロナが本格化し、その後の試合が中止。そんな中で御子柴さんは「選手に鼓舞された」とおっしゃっていました。

 2020年~21年シーズン。アジアリーグ参入が認められ、いよいよ最初のシーズン。新型コロナウィルスの蔓延により、海外の招待チーム参戦が見送られ、国内5チームのみで争うシーズンとなりました。結果は16戦全敗に終わりましたが、開幕第二戦の12vs0という惨敗から、シーズン終盤は善戦に持ち込めるようになりました。



 2021年~22年シーズン。前年同様、新型コロナウィルスの蔓延により、国内5チームのみのシーズンとなりました。2021年11月21日、対H.C.栃木日光アイスバックス戦で、3vs4と念願の初勝利を挙げます。さらに12月26日、対東北フリーブレイズ戦で1vs3と2勝目。2勝26敗でシーズンを終えました。

 2022年~23年シーズン。前横浜DeNAベイスターズ監督のアレックス・ラミレス氏がGRITSの共同代表になりました。大型新人や外国人も加わり、開幕2戦目で東北フリーブレイズから6vs3で初勝利を挙げると、最終戦のひがし北海道クレインズ戦では3vs0の初完封勝利。この試合ではKose新横浜スケートセンター(収容人数2,500人)の観衆が1,300人を超えたそうです。11勝29敗の躍進で初の最下位脱出(この年は、優勝した韓国のHLアニャンが復帰し6チームで行われ、5位)となりました。プロチームらしくなってきた実感を得たシーズンだったそうです。



 2023年~24年シーズンの初戦は9月16日だそうです。デュアルキャリアでやり抜く姿は、チームを強くしていくばかりでなく、アイスホッケーやその他多くのアスリートたちに勇気を与え、地域をそして日本を活気づけていくことでしょう。そしてここにも、「人生は自分のものであるのに、それを何と粗末に扱ってきたことか」と臍を噛む50歳にならんとする男がいます。

 9月にはぜひ生観戦を!

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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