犯罪被害者基本計画を決定,刑事裁判関与はなお検討 YOMIURI ONLINE
重点課題は次の5つとのこと。
1 損害回復・経済的支援
2 精神的・身体的被害の回復・防止
3 刑事手続きへの関与拡充
4 支援のための体制整備
5 国民の理解の増進と配慮・協力の確保
上記1のうち「損害回復」については,このブログでも,付帯私訴に少し触れたことがあった。付帯私訴については,被害者の訴訟負担の軽減等から復活を望む声がある一方,刑事訴訟制度と民事訴訟制度の目的の相違,立証の程度の相違,訴訟の長期化などを理由に,反対する立場も依然有力である。
なお,刑事被告事件の被告人と被害者等の間で,民事上の争いに関する合意が成立した場合は,当該合意の公判調書への記載を求めることが可能。この記載は,裁判上の和解と同一の効力を有し,債務名義(民執法第22条第7号)となる。
やはり,一番の注目は,3の「刑事手続きへの関与拡充」。私人(被害者)訴追までいくことはまず考えられないが,起訴便宜主義における被害感情への配慮・尊重といったことではなく,制度的により明確な形で,被害者意思が刑事手続きに取り込まれることは十分あり得る。
犯罪被害者等基本法の関連条文
安全で安心して暮らせる社会を実現することは,国民すべての願いであるとともに,国の重要な責務であり,我が国においては,犯罪等を抑止するためのたゆみない努力が重ねられてきた。
しかしながら,近年,様々な犯罪等が跡を絶たず,それらに巻き込まれた犯罪被害者等の多くは,これまでその権利が尊重されてきたとは言い難いばかりか,十分な支援を受けられず,社会において孤立することを余儀なくされてきた。さらに,犯罪等による直接的な被害にとどまらず,その後も副次的な被害に苦しめられることも少なくなかった。
もとより,犯罪等による被害について第一義的責任を負うのは,加害者である。しかしながら,犯罪等を抑止し,安全で安心して暮らせる社会の実現を図る責務を有する我々もまた,犯罪被害者等の声に耳を傾けなければならない。国民の誰もが犯罪被害者等となる可能性が高まっている今こそ,犯罪被害者等の視点に立った施策を講じ,その権利利益の保護が図られる社会の実現に向けた新たな一歩を踏み出さなければならない。
ここに,犯罪被害者等のための施策の基本理念を明らかにしてその方向を示し,国,地方公共団体及びその他の関係機関並びに民間の団体等の連携の下,犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進するため,この法律を制定する。
(目的)
第一条 この法律は,犯罪被害者等のための施策に関し,基本理念を定め,並びに国,地方公共団体及び国民の責務を明らかにするとともに,犯罪被害者等のための施策の基本となる事項を定めること等により,犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進し,もって犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「犯罪等」とは,犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為をいう。
2 この法律において「犯罪被害者等」とは,犯罪等により害を被った者及びその家族又は遺族をいう。
3 この法律において「犯罪被害者等のための施策」とは,犯罪被害者等が,その受けた被害を回復し,又は軽減し,再び平穏な生活を営むことができるよう支援し,及び犯罪被害者等がその被害に係る刑事に関する手続に適切に関与することができるようにするための施策をいう。
(基本理念)
第三条 すべて犯罪被害者等は,個人の尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。
2 犯罪被害者等のための施策は,被害の状況及び原因,犯罪被害者等が置かれている状況その他の事情に応じて適切に講ぜられるものとする。
3 犯罪被害者等のための施策は,犯罪被害者等が,被害を受けたときから再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間,必要な支援等を途切れることなく受けることができるよう,講ぜられるものとする。
(国の責務)
第四条 国は,前条の基本理念(次条において「基本理念」という。)にのっとり,犯罪被害者等のための施策を総合的に策定し,及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第五条 地方公共団体は,基本理念にのっとり,犯罪被害者等の支援等に関し,国との適切な役割分担を踏まえて,その地方公共団体の地域の状況に応じた施策を策定し,及び実施する責務を有する。
(国民の責務)
第六条 国民は,犯罪被害者等の名誉又は生活の平穏を害することのないよう十分配慮するとともに,国及び地方公共団体が実施する犯罪被害者等のための施策に協力するよう努めなければならない。
(連携協力)
第七条 国,地方公共団体,日本司法支援センター(総合法律支援法 (平成十六年法律第七十四号)第十三条 に規定する日本司法支援センターをいう。)その他の関係機関,犯罪被害者等の援助を行う民間の団体その他の関係する者は,犯罪被害者等のための施策が円滑に実施されるよう,相互に連携を図りながら協力しなければならない。
(犯罪被害者等基本計画)
第八条 政府は,犯罪被害者等のための施策の総合的かつ計画的な推進を図るため,犯罪被害者等のための施策に関する基本的な計画(以下「犯罪被害者等基本計画」という。)を定めなければならない。
2 犯罪被害者等基本計画は,次に掲げる事項について定めるものとする。
一 総合的かつ長期的に講ずべき犯罪被害者等のための施策の大綱
二 前号に掲げるもののほか,犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 内閣総理大臣は,犯罪被害者等基本計画の案につき閣議の決定を求めなければならない。
4 内閣総理大臣は,前項の規定による閣議の決定があったときは,遅滞なく,犯罪被害者等基本計画を公表しなければならない。
5 前二項の規定は,犯罪被害者等基本計画の変更について準用する。
「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」の関連条文
(民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解)
第四条 刑事被告事件の被告人と被害者等は,両者の間における民事上の争い(当該被告事件に係る被害についての争いを含む場合に限る。)について合意が成立した場合には,当該被告事件の係属する第一審裁判所又は控訴裁判所に対し,共同して当該合意の公判調書への記載を求める申立てをすることができる。
2 前項の合意が被告人の被害者等に対する金銭の支払を内容とする場合において,被告人以外の者が被害者等に対し当該債務について保証する旨又は連帯して責任を負う旨を約したときは,その者も,同項の申立てとともに,被告人及び被害者等と共同してその旨の公判調書への記載を求める申立てをすることができる。
3 前二項の規定による申立ては,弁論の終結までに,公判期日に出頭し,当該申立てに係る合意及びその合意がされた民事上の争いの目的である権利を特定するに足りる事実を記載した書面を提出してしなければならない。
4 第一項又は第二項の規定による申立てに係る合意を公判調書に記載したときは,その記載は,裁判上の和解と同一の効力を有する。
重点課題は次の5つとのこと。
1 損害回復・経済的支援
2 精神的・身体的被害の回復・防止
3 刑事手続きへの関与拡充
4 支援のための体制整備
5 国民の理解の増進と配慮・協力の確保
上記1のうち「損害回復」については,このブログでも,付帯私訴に少し触れたことがあった。付帯私訴については,被害者の訴訟負担の軽減等から復活を望む声がある一方,刑事訴訟制度と民事訴訟制度の目的の相違,立証の程度の相違,訴訟の長期化などを理由に,反対する立場も依然有力である。
なお,刑事被告事件の被告人と被害者等の間で,民事上の争いに関する合意が成立した場合は,当該合意の公判調書への記載を求めることが可能。この記載は,裁判上の和解と同一の効力を有し,債務名義(民執法第22条第7号)となる。
やはり,一番の注目は,3の「刑事手続きへの関与拡充」。私人(被害者)訴追までいくことはまず考えられないが,起訴便宜主義における被害感情への配慮・尊重といったことではなく,制度的により明確な形で,被害者意思が刑事手続きに取り込まれることは十分あり得る。
犯罪被害者等基本法の関連条文
安全で安心して暮らせる社会を実現することは,国民すべての願いであるとともに,国の重要な責務であり,我が国においては,犯罪等を抑止するためのたゆみない努力が重ねられてきた。
しかしながら,近年,様々な犯罪等が跡を絶たず,それらに巻き込まれた犯罪被害者等の多くは,これまでその権利が尊重されてきたとは言い難いばかりか,十分な支援を受けられず,社会において孤立することを余儀なくされてきた。さらに,犯罪等による直接的な被害にとどまらず,その後も副次的な被害に苦しめられることも少なくなかった。
もとより,犯罪等による被害について第一義的責任を負うのは,加害者である。しかしながら,犯罪等を抑止し,安全で安心して暮らせる社会の実現を図る責務を有する我々もまた,犯罪被害者等の声に耳を傾けなければならない。国民の誰もが犯罪被害者等となる可能性が高まっている今こそ,犯罪被害者等の視点に立った施策を講じ,その権利利益の保護が図られる社会の実現に向けた新たな一歩を踏み出さなければならない。
ここに,犯罪被害者等のための施策の基本理念を明らかにしてその方向を示し,国,地方公共団体及びその他の関係機関並びに民間の団体等の連携の下,犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進するため,この法律を制定する。
(目的)
第一条 この法律は,犯罪被害者等のための施策に関し,基本理念を定め,並びに国,地方公共団体及び国民の責務を明らかにするとともに,犯罪被害者等のための施策の基本となる事項を定めること等により,犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進し,もって犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「犯罪等」とは,犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為をいう。
2 この法律において「犯罪被害者等」とは,犯罪等により害を被った者及びその家族又は遺族をいう。
3 この法律において「犯罪被害者等のための施策」とは,犯罪被害者等が,その受けた被害を回復し,又は軽減し,再び平穏な生活を営むことができるよう支援し,及び犯罪被害者等がその被害に係る刑事に関する手続に適切に関与することができるようにするための施策をいう。
(基本理念)
第三条 すべて犯罪被害者等は,個人の尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。
2 犯罪被害者等のための施策は,被害の状況及び原因,犯罪被害者等が置かれている状況その他の事情に応じて適切に講ぜられるものとする。
3 犯罪被害者等のための施策は,犯罪被害者等が,被害を受けたときから再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間,必要な支援等を途切れることなく受けることができるよう,講ぜられるものとする。
(国の責務)
第四条 国は,前条の基本理念(次条において「基本理念」という。)にのっとり,犯罪被害者等のための施策を総合的に策定し,及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第五条 地方公共団体は,基本理念にのっとり,犯罪被害者等の支援等に関し,国との適切な役割分担を踏まえて,その地方公共団体の地域の状況に応じた施策を策定し,及び実施する責務を有する。
(国民の責務)
第六条 国民は,犯罪被害者等の名誉又は生活の平穏を害することのないよう十分配慮するとともに,国及び地方公共団体が実施する犯罪被害者等のための施策に協力するよう努めなければならない。
(連携協力)
第七条 国,地方公共団体,日本司法支援センター(総合法律支援法 (平成十六年法律第七十四号)第十三条 に規定する日本司法支援センターをいう。)その他の関係機関,犯罪被害者等の援助を行う民間の団体その他の関係する者は,犯罪被害者等のための施策が円滑に実施されるよう,相互に連携を図りながら協力しなければならない。
(犯罪被害者等基本計画)
第八条 政府は,犯罪被害者等のための施策の総合的かつ計画的な推進を図るため,犯罪被害者等のための施策に関する基本的な計画(以下「犯罪被害者等基本計画」という。)を定めなければならない。
2 犯罪被害者等基本計画は,次に掲げる事項について定めるものとする。
一 総合的かつ長期的に講ずべき犯罪被害者等のための施策の大綱
二 前号に掲げるもののほか,犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 内閣総理大臣は,犯罪被害者等基本計画の案につき閣議の決定を求めなければならない。
4 内閣総理大臣は,前項の規定による閣議の決定があったときは,遅滞なく,犯罪被害者等基本計画を公表しなければならない。
5 前二項の規定は,犯罪被害者等基本計画の変更について準用する。
「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」の関連条文
(民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解)
第四条 刑事被告事件の被告人と被害者等は,両者の間における民事上の争い(当該被告事件に係る被害についての争いを含む場合に限る。)について合意が成立した場合には,当該被告事件の係属する第一審裁判所又は控訴裁判所に対し,共同して当該合意の公判調書への記載を求める申立てをすることができる。
2 前項の合意が被告人の被害者等に対する金銭の支払を内容とする場合において,被告人以外の者が被害者等に対し当該債務について保証する旨又は連帯して責任を負う旨を約したときは,その者も,同項の申立てとともに,被告人及び被害者等と共同してその旨の公判調書への記載を求める申立てをすることができる。
3 前二項の規定による申立ては,弁論の終結までに,公判期日に出頭し,当該申立てに係る合意及びその合意がされた民事上の争いの目的である権利を特定するに足りる事実を記載した書面を提出してしなければならない。
4 第一項又は第二項の規定による申立てに係る合意を公判調書に記載したときは,その記載は,裁判上の和解と同一の効力を有する。