法律の周辺

核心ではなく, あくまでも物事の周辺を気楽に散策するブログです。

契約無効を理由とする誤発注に係る利益返上について

2005-12-18 18:19:21 | Weblog
asahi.com UBS「契約無効」で返上打診 誤発注巡る巨額利益

asahi.com 誤発注,利益140億円返上へ UBS・日興・リーマン

FujiSankei Business i. 誤発注の利益返上 業界内で賛否両論 「合法でも返還を」「基準不明確」

 朝日の「無効が成立するためには,売った方に重大な過失がないことが条件になる」はその通りだが(民法第95条参照),訴訟になった場合,立証責任は無効を主張される相手方が負担する。
仮に,UBSが無効を主張・立証せずに利益を返上した場合,取締役は,どう考えても,任務懈怠責任を免れない。
しかし,UBSが誤発注と認識しながら株を取得した場合は,話しはまた別。通説に拠るなら,但書の適用はない。15日の説明を読む限り,リーマンなどは,誤発注と認識しながら取得したように思われる。新規上場のジェイコム株が「1円で61万株売り」なら,誰の目にも誤発注とうつったのではないだろうか。証券会社については,とりわけ,悪意の蓋然性が高い。

 悪意を認めたうえで,社会的非難はこの際甘受し,みずほの請求を受け,利益返還,はどうだろう。いずれにしても,最終的にはUBS自らが判断すべき事柄。内心の事情(取得に係る社内的事情)はUBSにしか分からない。


民法の関連条文

(錯誤)
第九十五条  意思表示は,法律行為の要素に錯誤があったときは,無効とする。ただし,表意者に重大な過失があったときは,表意者は,自らその無効を主張することができない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

信託に係るTBS株の議決権行使凍結の延長について

2005-12-18 13:47:50 | Weblog
4月以降も議決権凍結へ/みずほに信託のTBS株 SHIKOKU NEWS

 4月以降も,提携協議を継続する限り,双方が業務提携などで一定の合意に達するまでは,a 楽天側は議決権の復活を求めない,b 楽天側はTBS株の敵対的な買い増しをしない,で合意した模様。正式契約は週明け。
記事からは,楽天とTBSがTBS株の議決権行使の凍結契約を結ぶ→楽天が議決権行使の凍結されたTBS株をみずほ信託銀行に信託,のように読める。楽天がみずほ信託銀行にTBS株を信託→TBSとみずほ信託銀行が信託に係るTBS株の議決権行使の凍結契約を結ぶ,ではなさそう。紛争の当事者が楽天とTBSであることを考えれば,当然といえば当然か。

なお,楽天がみずほ信託銀行にTBS株を信託→楽天とTBSが信託に係るTBS株の議決権行使の凍結契約を結ぶ,はちょっと考えにくい。信託後の信託財産の管理処分権は受託者に移るからである。仮に,このケースで,信託後,楽天・TBS間でなにがしかの約束が交わされたとしても,議決権行使について言えば,それは紳士協定のようなものにとどまる。法的に重要なものとは思えない。


信託法の関連条文

第一条  本法ニ於テ信託ト称スルハ財産権ノ移転其ノ他ノ処分ヲ為シ他人ヲシテ一定ノ目的ニ従ヒ財産ノ管理又ハ処分ヲ為サシムルヲ謂フ

第四条  受託者ハ信託行為ノ定ムル所ニ従ヒ信託財産ノ管理又ハ処分ヲ為スコトヲ要ス

第七条  信託行為ニ依リ受益者トシテ指定セラレタル者ハ当然信託ノ利益ヲ享受ス但シ信託行為ニ別段ノ定アルトキハ其ノ定ニ従フ

第二十条  受託者ハ信託ノ本旨ニ従ヒ善良ナル管理者ノ注意ヲ以テ信託事務ヲ処理スルコトヲ要ス

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする