法律の周辺

核心ではなく, あくまでも物事の周辺を気楽に散策するブログです。

監査の「質」を外部から点検する仕組みについて

2006-01-25 18:10:03 | Weblog
asahi.com 日本版「エンロン事件」の様相 問われる監査体制

 商法等の監査制度に係る主要な改正は,以下のとおり。

昭和25年改正 取締役会制度導入 → 監査役の権限縮小
昭和49年改正 監査役の権限強化,会計監査人制度の導入,商法特例法の制定
昭和56年改正 大会社の監査制度強化
平成5年改正  監査役の任期伸長,大会社の社外監査役制度・監査役会制度の導入
平成13年改正 監査役の任期伸長,大会社の社外監査役の資格要件・人数の強化等
平成14年改正 大会社の委員会等設置会社制度の導入

 近藤光男教授が,著書『最新 株式会社法』の監査役に関する項目の冒頭,「監査役制度の変遷は,一言で言えば,監査役制度に対する期待と失望の繰り返しであった。」と書かれていたのを思い出す。今回の事件で,失望の数がまた1つ増えた。
一方の会計監査人は,昭和49年導入の制度。しかし,粉飾決算は後を絶たず,カネボウの粉飾決算事件では担当会計士が粉飾指南をしていたことが発覚する有様。会計監査人は,過去の粉飾決算事件を直接の契機に導入された制度だけに,失望も大きい。

「監査の『質』を外部から定期的に点検する仕組みを設けるなど新たな手だてが必要」には,思わず,吹き出しそうになったが,八田教授,もちろん,真面目に言っておられるのであろう。それにしても,会計監査人の監査業務を監査する仕組みが必要とは (-_-;) 。


「株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律」の関連条文

(会計監査人の監査)
第二条  大会社(清算中のものを除く。)は,この節に定めるところにより,商法第二百八十一条第一項 に掲げるもの(同項第三号 に掲げるもの及びその附属明細書については,会計に関する部分に限る。)について,監査役の監査のほか,会計監査人の監査を受けなければならない。
2  資本の額が一億円を超える株式会社(第一条の二第一項各号のいずれにも該当しないものに限り,清算中のものを除く。)は,定款をもつて,この節に規定する特例の適用を受ける旨を定めることができる。この場合においては,当該株式会社を大会社とみなして,前項及び次条から第十九条まで(第四条第二項第二号並びに第七条第三項及び第五項中連結子会社に関する部分並びに第十八条第四項を除く。)の規定を適用する。

(会計監査人の権限等)
第七条  会計監査人は,いつでも,次に掲げる閲覧又は謄写をし,又は取締役及び支配人その他の使用人に対して会計に関する報告を求めることができる。
一  大会社の会計の帳簿及び資料が書面で作られているときは,その書面の閲覧又は謄写
二  大会社の会計の帳簿及び資料が電磁的記録で作られているときは,その電磁的記録に記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したものの大会社の本店における閲覧又は謄写
2  会計監査人は,その職務を行うため必要があるときは,大会社の業務及び財産の状況を調査することができる。
3  会計監査人は,その職務(連結子会社については,第十九条の二第一項に規定する連結計算書類に関するものに限る。)を行うため必要があるときは,子会社若しくは連結子会社に対して会計に関する報告を求め,又は子会社若しくは連結子会社の業務及び財産の状況を調査することができる。
4  商法第二百七十四条ノ三第二項 の規定は,前項の場合について準用する。
5  会計監査人は,その職務を行うに当たつて第四条第二項第一号から第三号までに該当する公認会計士,大会社又はその子会社若しくは連結子会社の取締役,執行役,監査役又は使用人である者及び大会社又はその子会社若しくは連結子会社から公認会計士又は監査法人の業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者を使用してはならない。

(会計監査人の損害賠償責任)
第九条  会計監査人がその任務を怠つたことにより大会社に損害を生じさせたときは,その会計監査人は,大会社に対し連帯して損害賠償の責めに任ずる。

第十条  会計監査人が重要な事項について第十三条第一項の監査報告書に虚偽の記載をしたことにより第三者に損害を生じさせたときは,その会計監査人は,その第三者に対し連帯して損害賠償の責めに任ずる。ただし,その職務を行うについて注意を怠らなかつたことを証明したときは,この限りでない。

(会計監査人,取締役及び監査役の連帯責任)
第十一条  会計監査人が大会社又は第三者に対して損害賠償の責めに任ずべき場合において,取締役又は監査役もその責めに任ずべきときは,その会計監査人,取締役及び監査役は,連帯債務者とする。

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誤発注に係る東証に対する損害賠償請求について

2006-01-25 08:23:58 | Weblog
東証に賠償請求へ,株誤発注問題で・前田みずほFG社長 NIKKEI NET

 現段階では,「損害賠償を求める可能性を示唆した」ということのよう。損害(約400億円)は,みずほ証券側が,東証に対して,適式に取り消しを求めた時点以降の損害,ということであろう。因果関係を考えれば,そうなる。
システムの欠陥に起因するものである以上,富士通も無関係ではないように思われる

民法の関連条文

(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条  債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは,債権者は,これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも,同様とする。

(損害賠償の範囲)
第四百十六条  債務の不履行に対する損害賠償の請求は,これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2  特別の事情によって生じた損害であっても,当事者がその事情を予見し,又は予見することができたときは,債権者は,その賠償を請求することができる。

(損害賠償の方法)
第四百十七条  損害賠償は,別段の意思表示がないときは,金銭をもってその額を定める。

(過失相殺)
第四百十八条  債務の不履行に関して債権者に過失があったときは,裁判所は,これを考慮して,損害賠償の責任及びその額を定める。

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定足数を欠く取締役会での代表取締役選任について

2006-01-25 08:17:24 | Weblog
マーケティング社,過半数出席せず取締役会で決議か YOMIURI ONLINE

 事実だとすれば,決議無効ということになりそう(商法第260条ノ2第1項参照)。「取締役の欠員」とも異なるから,裁判所による仮取締役の選任というわけにもいかないのではないか(同第258条第2項参照)。
臨時株主総会を開催しての取締役増員には時間がかかる。逮捕された取締役の辞任→取締役会の招集&開催,という手続を踏むべきだったか。拙速に過ぎた感も。


商法の関連条文

第二百五十八条  法律又ハ定款ニ定メタル取締役ノ員数ヲ欠クニ至リタル場合ニ於テハ任期ノ満了又ハ辞任ニ因リテ退任シタル取締役ハ新ニ選任セラレタル取締役ノ就職スル迄仍取締役ノ権利義務ヲ有ス
2 前項ノ場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ裁判所ハ利害関係人ノ請求ニ依リ一時取締役ノ職務ヲ行フベキ者ヲ選任スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ本店及支店ノ所在地ニ於テ其ノ登記ヲ為スコトヲ要ス

第二百六十条ノ二  取締役会ノ決議ハ取締役ノ過半数出席シ其ノ取締役ノ過半数ヲ以テ之ヲ為ス但シ定款ヲ以テ此ノ要件ヲ加重スルコトヲ妨ゲズ
2 前項ノ決議ニ付特別ノ利害関係ヲ有スル取締役ハ決議ニ参加スルコトヲ得ズ
3 前項ノ規定ニ依リテ決議ニ参加スルコトヲ得ザル取締役ノ数ハ第一項ノ取締役ノ数ニ之ヲ算入セズ

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東証の黄金株の条件付き容認について

2006-01-25 08:08:19 | Weblog
東証,黄金株の条件付き容認を発表 NIKKEI NET

 記事によれば,「「取締役の過半数の選任や解任」など重要決議への拒否権に限って禁止」とのこと。分かりにくい ^^; 。内容によっては,容認が原則なのか,例外なのか,評価が分かれそう。この「条件付き容認」,羊頭狗肉ということはないか?
与謝野大臣の認可は,これからだと思うが・・・。

なお,禁止事項に該当する過剰防衛策を導入した場合でも,いきなり上場廃止ではなく,6カ月の猶予期間を設けるよう。

東証HP 有価証券上場規程


会社法の関連条文

(異なる種類の株式)
第百八条 株式会社は,次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。ただし,委員会設置会社及び公開会社は,第九号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。
一 剰余金の配当
二 残余財産の分配
三 株主総会において議決権を行使することができる事項
四 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。
五 当該種類の株式について,株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること。
六 当該種類の株式について,当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。
七 当該種類の株式について,当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること。
八 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会,清算人会設置会社(第四百七十八条第六項に規定する清算人会設置会社をいう。以下この条において同じ。)にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち,当該決議のほか,当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの
九 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること。
2 株式会社は,次の各号に掲げる事項について内容の異なる二以上の種類の株式を発行する場合には,当該各号に定める事項及び発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない。
一 剰余金の配当 当該種類の株主に交付する配当財産の価額の決定の方法,剰余金の配当をする条件その他剰余金の配当に関する取扱いの内容
二 残余財産の分配 当該種類の株主に交付する残余財産の価額の決定の方法,当該残余財産の種類その他残余財産の分配に関する取扱いの内容
三 株主総会において議決権を行使することができる事項 次に掲げる事項
イ 株主総会において議決権を行使することができる事項
ロ 当該種類の株式につき議決権の行使の条件を定めるときは,その条件
四 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること 当該種類の株式についての前条第二項第一号に定める事項
五 当該種類の株式について,株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること 次に掲げる事項
イ 当該種類の株式についての前条第二項第二号に定める事項
ロ 当該種類の株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の他の株式を交付するときは,当該他の株式の種類及び種類ごとの数又はその算定方法
六 当該種類の株式について,当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること 次に掲げる事項
イ 当該種類の株式についての前条第二項第三号に定める事項
ロ 当該種類の株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の他の株式を交付するときは,当該他の株式の種類及び種類ごとの数又はその算定方法
七 当該種類の株式について,当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること 次に掲げる事項
イ 第百七十一条第一項第一号に規定する取得対価の価額の決定の方法
ロ 当該株主総会の決議をすることができるか否かについての条件を定めるときは,その条件
八 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会,清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち,当該決議のほか,当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの 次に掲げる事項
イ 当該種類株主総会の決議があることを必要とする事項
ロ 当該種類株主総会の決議を必要とする条件を定めるときは,その条件
九 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること 次に掲げる事項
イ 当該種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること及び選任する取締役又は監査役の数
ロ イの定めにより選任することができる取締役又は監査役の全部又は一部を他の種類株主と共同して選任することとするときは,当該他の種類株主の有する株式の種類及び共同して選任する取締役又は監査役の数
ハ イ又はロに掲げる事項を変更する条件があるときは,その条件及びその条件が成就した場合における変更後のイ又はロに掲げる事項
ニ イからハまでに掲げるもののほか,法務省令で定める事項
3 前項の規定にかかわらず,同項各号に定める事項(剰余金の配当について内容の異なる種類の種類株主が配当を受けることができる額その他法務省令で定める事項に限る。)の全部又は一部については,当該種類の株式を初めて発行する時までに,株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会,清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)の決議によって定める旨を定款で定めることができる。この場合においては,その内容の要綱を定款で定めなければならない。

証券取引法の関連条文

第百四十九条  証券取引所は,定款,業務規程又は受託契約準則を変更しようとするときは,内閣総理大臣の認可を受けなければならない。
2  証券取引所は,第八十二条第一項第二号又は第三号に掲げる事項について変更があつたときは,遅滞なく,その旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。証券取引所の規則(定款,業務規程,受託契約準則及び第百五十六条の十九の承認を受けて行う有価証券債務引受業に係る業務方法書を除く。)の作成,変更又は廃止があつたときも,同様とする。

「証券取引所及び証券取引所持株会社に関する内閣府令」の関連条文

(認可を要する業務規程に係る事項)
第十三条  法第百八条 各号に掲げる事項については,その細則を業務規程以外の規則に委ねる場合においても,当該規則について法第百四十九条第一項 に規定する金融庁長官の認可を受けなければならない。
2  次に掲げる事項については,業務規程又はその細則を委ねた規則において定めなければならない。
一  法第百五十六条の二十四第一項 の規定による信用取引及び証券取引所の会員等が当該証券取引所の有価証券市場における有価証券の売買の決済のために証券金融会社(法第二条第三十二項 に規定する証券金融会社をいう。)から当該証券取引所の決済機構を利用して金銭又は有価証券の貸付けを受ける取引に関する事項
二  有価証券の上場に関する事項
三  上場有価証券の発行者の適時開示等に関する事項
四  上場廃止に関する事項
五  清算基金(売買の決済の履行を担保するために,会員等が証券取引所に預託する基金をいう。)に関する事項

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