法律の周辺

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「会社法施行後の会社の目的における具体性の審査の在り方」に関する意見募集について

2006-01-06 08:44:12 | Weblog
法務省HP 「会社法施行後の会社の目的における具体性の審査の在り方」に関する意見募集

 法務省が,「会社法施行後の会社の目的における具体性の審査の在り方」に関する意見募集をおこなっている。曰わく,

会社法において類似商号規制が廃止されたことに伴い,商業登記申請における会社の目的の審査の在り方に関し,別紙のとおり,従来,目的の記載において必要とされていた「具体性」の要件(会社の事業の範囲を客観的に正確に確定できる程度に具体的に記載すること)について,これを要しないとすることを検討していますので,広く皆様の御意見をお寄せください。

と。意見募集期間は,平成18年2月3日(金)まで。

 現在,会社を設立する場合は,簡易な方法としてはハローページで,確実なところを知るためには法務局の調査簿等で,候補の商号と類似の商号を使用している会社等がないか,調査するのが通常だと思われる。存在する場合は,さらに,当該会社等の事業目的をチェックする。類似商号にあたるかは,商号+事業目的で判断されるからである。

 さて,事業目的を決める場合,その適格性は,一般的に,適法性,営利性,明確性,具体性の各観点から判断される。
プラクティカルに考えるなら,類字商号規制がなくなるのであれば,何も苦労して,具体性などを絞り込み,これを違える努力などする必要はない,ということになろう。
しかし,例えば,定款の目的には,a 内部規範性,b 取引範囲の公示性,c 事業の異同判別上の基準性,といった機能があると指摘されている。これらの機能に照らせば,「具体性」は会社の目的審査にあたり要件としない→目的は抽象的でよい,が単純に過ぎることは明らかである。「具体性」は会社の目的審査にあたり要件としない→具体性を含めた目的の適格性判断の主体が,真に,登記官から企業等の当事者に移ることになる,と考えた方が良さそうである。

 なお,定款所定の目的を,代表機関の権限を制限するもの,あるいは,会社機関の行動範囲についての義務(忠実義務)の内容となるもの,と考える立場からすれば,「抽象的で問題なし」という発想は簡単には出てこない。特に,ガバナンス,コンプライアンスを重視する会社法の基本的なスタンス,昨今の企業をめぐる不祥事,などの事情を加味すれば,尚更である。


商法の関連条文

第十九条  他人ガ登記シタル商号ハ同市町村内ニ於テ同一ノ営業ノ為ニ之ヲ登記スルコトヲ得ズ

第二十条  商号ノ登記ヲ為シタル者ハ不正ノ競争ノ目的ヲ以テ同一又ハ類似ノ商号ヲ使用スル者ニ対シテ其ノ使用ヲ止ムベキコトヲ請求スルコトヲ得但シ損害賠償ノ請求ヲ妨ゲズ
2 同市町村内ニ於テ同一ノ営業ノ為ニ他人ノ登記シタル商号ヲ使用スル者ハ不正ノ競争ノ目的ヲ以テ之ヲ使用スルモノト推定ス

第二十一条  何人ト雖モ不正ノ目的ヲ以テ他人ノ営業ナリト誤認セシムベキ商号ヲ使用スルコトヲ得ズ
2 前項ノ規定ニ違反シテ商号ヲ使用スル者アルトキハ之ニ因リテ利益ヲ害セラルル虞アル者ハ其ノ使用ヲ止ムベキコトヲ請求スルコトヲ得但シ損害賠償ノ請求ヲ妨ゲズ

会社法の関連条文

第八条 何人も,不正の目的をもって,他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。
2 前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され,又は侵害されるおそれがある会社は,その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができる。

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